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異世界にてHENSIN  作者: 井上欣久


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24 努力と友情の先

 俺と女の子たちのスリープラトン必殺技がジーオルーンに痛打を与えた。

 ドルモンの身体をはった頑張りが敵になった勇者たちを味方に引き戻した。

 モード(ビー)にチェンジしたら新たな力をゲットできた。

 なに、この順調さ。不憫なオチが一つも入ってないぞ。いや、(ビー)少女戦士化はできれば避けたかったけどさ。





 俺は足元に乱戦を残して飛んだ。

 まだ空中を滑空しているドルモンにかるく手を振る。対空砲火がいくつか上がってくるのに気づいて飛ぶ軌道を左右にブレさせる。


 戦巫女の力をプラスしたこの(ビー)少女戦士モード、ただのモード(ビー)より機動性が上がっている。攻撃能力がほとんど無いのがモード(ビー)の弱点だったが、今なら戦巫女の力で攻撃も出来そうだ。


 とはいえ、マイナス面がない訳ではない。


 どうやら勇者の力と戦巫女の力は反発するようだ。同時使用が難しい。さっき撃った蜘蛛式螺旋砲も螺旋撃の中空部分を破城銃で撃ちぬいていただけで二つの攻撃は連携はしていても『合体』はしていない。

 多分、純粋に戦巫女の力だけを抜き出して勘定したなら俺は『最弱の戦巫女』だ。


 飛翔してジーオルーンの上をとる。

 あれだけ苦労して撤退した距離がこの姿ならほんの一またぎする感覚で踏破できる。

 巨大魔族は魔力の壁を消して俺を見上げた。傷ついた肺はかなり修復されている様だ。


「汝は勇者なのか? 戦巫女なのか?」

「俺は規格外(イレギュラー)、異世界勇者ムサシだ。短い時間だが、ちゃんと覚えておけ」


 女性化の影響で声が高くなっている。迫力のある声が出せないのが残念だ。


 俺は空中を滑りおりる。ジーオルーンの背後にまわる。

 ヤツは見た目より遥かに機敏な動作で振り返るが、こちらはそれが狙いだ。魔族の股下を抜けて飛び、ふたたびバックをとる。


「ぬぅぅぅっっ」


 今度は振り向きながらの裏拳がとんできた。

 その風圧に流されるようにふわりと避ける。

 こちらの基本戦略は『相手をなるべく動かす』だ。スタミナ切れを誘うつもりなのだから避けているだけでも意味はある。しかし、そろそろ反撃の手段もほしいところだ。


 戦巫女の力で攻撃を、と思った。すると自動的に俺の口から祝詞が流れ出す。


「わが力、それは光。この地に降りた魔をはらう清浄なる光をここへ」


 よかった。俺の属性は光だったか。黄色系だとカレーとかレモンとかネタな属性じゃないかと心配していたんだ。

 自動的にとった可憐なポーズからまばゆい光を放つ。ジーオルーンはその巨大な眼球を背けた。


 それだけだ。

 清浄なる光とか言っていたのに魔族にダメージが入っている様子はない。

 これは俺のせいかな?

 下手に破邪の光などはなったら俺の中の三つの魔力炉まで浄化されかねない。


「目くらましなど、小賢しい!」


 俺の胴体の三倍ぐらいの太さがある腕がめくらめっぽう振るわれる。狙いがでたらめなのでかえって避けずらい。

 光の攻撃は失敗だったか、と思う。

 が、この攻撃はカスタマイズできる気がした。放つ光の色を変えられる?


 それって、放射する電磁波の波長を変えられるって事だよな。


 俺は放つ光の波長を思いっきり長くした。


 可視光線の範囲を外れさせる。赤外線、遠赤外線。もっと長くしてマイクロ波までもっていく。そして、出力を最大に。必殺の電子レンジアタックだ。

 この攻撃で神(?)から授かった力を全部使いきっても一向にかまわない。


 俺はマイクロ波を照射しながらジーオルーンの周囲をまとわりつくように飛んだ。

 巨大な肘や拳や頭突きまで襲ってきたが、そのすべてをかわす。

 そうしている間に巨大魔族の動きが鈍くなってくる。大きさ以外人間そっくりの身体が赤く染まっている。


「な、何だ。汝、我に何をした?」

「身体が巨大な分、放熱が悪くなった。熱がこもれば体調を崩す。どんな生き物でもそれは同じだ」

「それは知っている。だが、こんなに早いはずがない」

「さあな、肥満して自分で思っているよりもっと放熱が悪くなったんじゃないのか?」


 せっかく目に見えない攻撃をしているんだ。教えてやるつもりはない。


 ジーオルーンの巨体が揺れる。

 その肌のあちこちにスリットが開く。そこから蒸気が噴出した。


 目くらまし、と一瞬思ったが蒸気がしょぼい。これは一種の汗だと判断する。緊急の放熱手段だ。

 これで体温は下がるかもしれないが、今度は体内の水分のバランスが崩れるぞ。あの蒸気に塩分も含まれているなら、そちらも不足することが期待できる。


 さて、そろそろ決めにかかるかな。ゾイタークたちが戻ってきたら厄介な事になる。それに、マイクロ波を照射し続けた戦巫女の力もそろそろ枯渇気味だ。


 ジーオルーンは膝をつき、満足に動けない。熱中症の症状からすると、吐き気や頭痛と戦っているのだろう。


「ううぅぅ。サクラムよ、近くにいるであろう。我を助けよ」

「おやおや、魔族の将ともあろうお方が俺のような裏切者に助けを求めるのかい?」


 まだ一人居やがった。

 やる気の無さそうな動きで堕ちた蛇の勇者が姿を見せる。鉄鞭を肩にのせて、首をコキコキと動かしている。


「裏切者は信用できないからって手元に置いといたのに自分が危なくなると助けを求めるって、ちょっと甘いんじゃないか?」

「ここで我を助ければ、汝の功績は大きい。その地位は不動のものとなろう」

「ハッ、俺は言ったよな。勝つ方に付くって」


 サクラムが加速した。その鉄鞭でジーオルーンの向こう脛を思いっきりぶっ叩く。


「ぐうぅぅあっっ」

「あんたが俺を警戒したのは正解で、だからこそ最悪の選択だったな。俺は裏切りの蛇だぜ」


 俺は自分の目が点になったのを自覚する。こんなことがあり得るのか?


「こら、サクラム! 貴様、シレッとした顔でこちらにもどって来る気か? 最初から二重スパイとして魔族に潜り込んでいたとでも言うつもりか?」

「変わり身か? かわいい声になっちゃって。つもりも何もその通りだしな。お前を鉄鞭で叩いた時も、ちゃんと遠くまで飛ばしてやっただろうが」

「な、な、な」


 俺の言語機能は変調をきたしたようだ。

 うろたえる俺に構わず、蛇の勇者はちょっと移動するとそこの地面を鉄鞭で叩いた。そこの地面が内側から爆発する。鉄鞭の影響にしては不自然な爆発。

 土煙の中から大柄な人影が歩きでる。


「ふう、酷い目にあったである。口の中までジャリジャリする。蛇の口車になど乗ってはいけなかったである」

「ゴウレント⁈ 足はあるのか?」

「? 無くした足は片方だけである。足一本と引き換えに大将首をとれるなら、悪くない取り引きである」


 見ると『胸ライオン』な人影の右脚は異様に細くなっていた。義足状態なようだ。

 ゴウレントは義足の足で踏み込むと、相手を光に変えそうな巨大なハンマーをふるった。向こう脛を狙った鉄鞭もなかなかだったが、こちらは更に強力だった。四つある足首のひとつを完全に打ち砕いた。


 魔族の軍勢はいまだに強大だが、今この場だけならこちら側が完全に有利だ。


 今度こそ、勝負をつけに動く。


 ガス欠となった戦巫女への変身を解除する。そしてモードチェンジ。光の繭が俺を包み、性別を変更する時の不快感が襲ってくる。


 モード蟷螂(マンティス)


 今回は全身の無数の刃は必要ない。ただ一つあればいい。

 俺はブレスレットから大鎌モードの破城銃を顕現した。


 ジーオルーンはまとわりつくだけの俺よりも足元の二人の方に注意(ヘイト)を向けていた。

 最後の力を振り絞って巨大な腕が地面をひっかく。

 そんな苦しまぎれの攻撃が通じる二人ではない。義足のゴウレントすら簡単にかわしていた。


 熱中症に追い込み、足に痛打を浴びせて機動力を封じたとはいえ、ジーオルーンは巨大だ。生半可な攻撃では致命傷にならない。


「これで最後だ。とっておきを使わせてもらう。……魔力炉三重起動。モード無限(インフィニティ)!」


 とどめの一撃、それだけ持てばいい。

 三つの魔力炉が共鳴しつつその出力を大きく上昇させる。

 三重起動には特別な姿は設定されていない。過剰に生成された魔力が俺の中を駆け抜け、モード蟷螂(マンティス)の装甲表面から吹き上がる。

 有り余る魔力を俺は大鎌に集中させた。魔力の刃が肥大化する。


 ジーオルーンが俺を見た。

 彼にはもう戦闘能力は残っていないようだ。


「イレギュラーなる者よ、汝は死神なのか?」

「自分で神を名乗るほど驕ってはいないつもりだ。が、お前への引導だけはきっちりと渡してやるよ」


 俺はもう飛べない。だから跳んだ。

 ジーオルーンの頭部に向かって大鎌を袈裟斬りになぐ。

 巨大魔族は反射的に避けようとした。そのせいで狙いがややズレた。それでもヤツの片目と頭部の三分の一ほどを斬り落とした。


「やった!」

「まだ、のようである」


 地上の会話。

 確かに斬った時、俺の手応えがおかしかった。ジーオルーンの頭蓋の中身はほとんどが空洞だった。

 おそらく、普通の人間並みの知能を持つにはあの巨体にふさわしい程の巨大な脳は必要なかったのだろう。むしろ、そこまで大きな脳を働かせたら処理速度の面で問題が出るはず。巨大な体を制御するためにも大きな脳は必要だが、そこは体の各部に脳の機能を分散させてでもいるのだろう。恐竜が脊髄に第二の脳を持っていたように。


 俺は秒単位の時間をかけて自由落下、地上に降り立つ。


 頭蓋の中身がスカスカだったとはいえ、脳の中枢部分は頭部にあるはず。意感覚器官が集中している頭部以外の場所にそれにふさわしい場所はない。


 やつの脳がコンパクトに出来ていようと、頭全体を破壊すれば済むことだ。一生の不覚と言わせてやる。


 俺は大鎌を手放した。

 標的を粉々に打ち砕くつもりなら、切れ味はむしろ邪魔だ。それに、本当のとどめはこちらの技の方がふさわしい。


 三つの魔力炉は共鳴稼動を続けている。

 過剰な魔力を受け取っているボディもまだ破損はしていない。

 モード無限(インフィニティ)の使用限界は1分弱ぐらいだろうか? 最初に想定したよりは長持ちしそうだ。


 溢れ出る魔力を両脚に集中させる。溢れかえった魔力がそこに魔法陣に見えなくもないリングを発生させる。

 人類征伐将の残った一つ目がそれを見据えていた。


「我を見捨てた高慢なる者どもを滅ぼす力を求めて幾星霜。荒野をさまよい続けてようやく陛下のお目に留まったというのに。……我の旅はここで終わるのか」

「あんたの境遇には多少の共感と同情をしなくもないが、お話合いがしたければ殴り掛かる前にやりな」

「そうであったな。戦う相手に繰り言など、我も老いたか」


 ジーオルーンは前側の二つの膝をおった。その上体がこちらに倒れてくる。

 力尽きた訳ではない。いや、尽きかけているのは間違いないだろうが、確実に俺を押しつぶそうという意図をもって欠けた頭が降ってくる。


 避けないのなら好都合だぜ。


 俺は吠えた。

 クレーターを作る勢いで大地をける。


 俺は足を先にして跳んだ。両足をそろえて伸ばす。俺の全身を魔力を込めた砲弾と化す。


無限(インフィニティ)キック!」


 振り下ろされるヘッドバットに対して、顔面のやや下のあたりに着弾する。人中から入って後頭部へ抜けた。俺が通り抜けた後で衝撃波が拡散、ジーオルーンの頭はスイカのように割れて崩れた。


 今度こそ、終わりだ。





 気が抜けたようだ。

 ジーオルーンの残った胴体が地響きを立てて倒壊するのと同時に、まだ空中にあった俺のモード無限(インフィニティ)が解除される。モード蟷螂(マンティス)も続けて解除。慌てて素体だけは維持する。

 生身の身体でここから落下したら死ぬ。


 素体モードで難なく着地。

 大爆発をバックに見得を切りたいところだが、火薬のサービスはなかった。それでも堂々とポーズをとる。


 観客がいたからな。


 低ランクとはいえ、魔族の大軍が俺を遠巻きにしている。

 彼らはとまどっているようだ。恐慌をおこして逃げ出せば良いのか、復讐の念に燃えて襲いかかれば良いのか決めかねている。

 俺の魔力はもう限界が近い。継戦能力はないと言ってよい。もう一度撤退戦が出来るかどうかも怪しい。ここは何としてでもハッタリで切り抜けなければ。


 ハッタリを得意とする男は俺以外にいた。

 ゴウレントが獅子の咆哮でその声をあたり一面に響かせる。


「人類征伐将ジーオルーンはイレギュラーの異世界勇者ムサシが討ち取ったぞ!」


 軍勢がゾクリと動揺する。

 俺は力が抜けてきた。その場に倒れこみたいのを我慢して胸をはる。


 もう一押し、もう一押し欲しい。

 そうすれば敵軍は崩れたつ。俺たちは生き残れる。


 だが、俺に次の手はない。

 それどころか、俺の前に立つ奴がいた。背中から触手を生やした多腕の魔族。道化の仮面をかぶったゾイタークだ。


「やってくれましたね、名無しの勇者。これだけの都市攻略兵器を用意するのは苦労したのですが」


 狂乱の道化は頭を失って崩れ落ちたジーオルーンの遺骸を見上げた。

 こいつにとっては人類征伐将もただの攻城兵器扱いか? それより、なぜこいつがここに居る? 中枢翼船(セントラル)の方をチラリと見た俺をゾイタークは嗤った。


「雷の男ならそこいら辺に墜落していますよ」

「何だって?」

「私を追いかけようと空を飛んだのですが、うまく制御できなかったようです。地面に突っ込みましたから当分は出てこれないでしょう」


 アルシェイドはいったい何をやっているんだ。強化形態で出現したバックパックはフライトユニットだったらしいが、テストも終わっていない兵器を気楽に使うからそういう目にあうんだ。

 いや、今の俺の状態もあまり他人のことを言えた物ではないが。


「ジーオルーンを失った以上、この戦いは我々の敗北です。ですがそれはあなた方を見逃す理由にはなりません。特に名無しの勇者、あなたは危険だ。能力を使い切っているらしい今のうちに排除する」

「負けを認めたなら『再戦の場まで壮健なれ』とか言って立ち去るべきだろう」

「我々は美しい敗北など望まない」


 ま、そうだろう。

 俺がまぜっかえしたのだって一秒でも長く時間を稼ぐためだし、お互いにつくづく行き汚くできている。


「一つ提案がある」

「何でしょう?」

「とりあえず、休戦にしないか?」

「こちらにメリットが見えない提案です」

「それはそうだろう。後頭部にも目が付いていない限り、アレは見えない」


 俺は空を見上げた。

 先刻から見えていたものがある。


 ゾイタークは俺から目を離さなかった。かわりに近くに来たゴブリンに合図して俺の視線を追わせる。

 そのゴブリンはヒッと息を呑んだ。すくみ上った。


 コル・バリエスタから発進した飛空艇の群れはまだ飛んでいる。だが、それらとは比較にならない大型船が近づいてくる。こちらで墜落している中枢翼船(セントラル)とちょうど同じぐらいの大きさだ。墜ちている船と違って両舷から射角の広い砲塔が突き出ている。

 戦闘型中枢翼船(セントラル)

 予定より少し早いがやって来たようだ。伝令に向かわせた飛空艇と出会っているならばこちらの状況は把握しているはず。


 部下の様子を見たゾイタークが振り返った時には砲撃が開始されていた。

 俺の破城銃と同等かそれ以上の攻撃が魔族の密集地帯に向けて発射される。


「対空戦力を潰された状態では勝ち目がありませんね。……休戦て本気ですか?」

「こっちも限界だ」

「その話、受けましょう」


 やはり魔族同士でのみ通じる特別な連絡方法があるようだ。

 ゾイタークの身振りひとつで、彼が見えない位置にいた魔族までもが一斉に動き出す。整然とした組織正しい撤退戦、ではないな。

 これは空爆から逃れるための動き、散開しての全力逃走だ。


 仮面の魔族は続いて四本の腕で印を組んだ。

 その口で何かを唱えている。

 彼から煙のようなものが波が広がるようにあたりに満ちた。

 先刻とは攻守所を代えての煙幕使用だ。煙はそんなに厚くない。が、地面低く垂れこめて地上の視認を難しくする。


 ゾイタークもまた逃げ出した。

 全速力での逃走ではない。足の遅い者たちに気を配りながらの逃走。その存在感が薄くなる。認識を阻害するような魔法を使っているらしい。


「器用なものだな」

「恐縮です。……って、名無しの勇者。なぜあなたが一緒に逃げているのですか⁈」

「固いことを言うな。休戦中だろう」

「私は理由を尋ねているのです」

「俺もあいつらの事は信用していない。コル・バリエスタで共に戦った連中なら兎も角、新しく来た幹部なんて敵になる予感しかしない。強制命令コードを受け付けない制御不能の兵器なんて廃棄処分が妥当だ、とは俺も思うしな」

「……」

「どうしても戦いたいなら相手になるが、その場合は真上に信号弾を打ち上げてやるからな」

「……勝手にしなさい」


 後ろを振り返ると、戦闘型中枢翼船(セントラル)からカラフルな強化服を身につけた兵士たちが降下してくるのが見えた。

 ロクト博士の知識によると、あの装備は並みの勇者の半分くらいの性能がある。一対一なら勝てるが、セオリー通りに五人がかりで囲まれたら俺でも倒される。


 初志貫徹。

 こうして俺は勇者本部の魔の手を逃れ、コル・バリエスタからの脱出に成功した。


 あとに残して来た者たちの事は気になるが、俺以外は概ね大丈夫だろう。


 女の子たちはまったく問題ない。勇者本部との直接の関係はないし、これまで通り外部協力者として扱われるはずだ。

 モトサトには年の功とこれまでの実績がある。

 ゴウレントは実直だ。強制命令コードに抵抗できたことが問題視されたとしても堂々と受け答えするだろう。たとえそれで処分されるとしても自分の道は自分で決める。

 裏切りの蛇は、あいつの事は俺が心配する必要はないな。何か問題が起きても俺としてはまったく構わないが、しれっとした顔で上手くやりそうだ。

 唯一ヤバそうなのがアルシェイドか。アレだけは俺と一緒に逃げた方がよい気がする。


 ……。


 あの自称『愛の勇者』と手に手をとって逃避行か?

 それは別の意味で俺がヤバい。


 アルシェイドにも自分の道を歩いてもらおう。

 俺はその場から立ち去る足を速めた。

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