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62/土

祝!20万字!


10万字を祝わなかったのではなく、たまたま気づいたから…


何やらどでかい装置の前でマーリン爺、レインと三人並んでいる現在。


周りには等間隔で多くの魔術士たちが何かの作業をしているが、肩で息をしているのが少なくない数いるのが気になる。


そんなに大変な作業なのか…?



「これは装置の名前から分かる通り、(から)の魔石に魔力を補充したり、魔石から魔力を取り出す魔道具での。空の魔石に魔力を補充するのは魔術士協会の仕事の一つでもあるのじゃ」


「空の魔石というのは、魔力を使い切った魔石ってことですか?」


「そうじゃの。一般的な家庭で使われておる魔道具は、基本的に魔石燃料型と呼ばれる魔石を交換しながら使うタイプのものでな。特殊加工された魔石は、内包する魔力が空になったあとも消滅せず残るのじゃ。燃料型魔道具とも言えるかもしれんのう」



充電型電池みたいなものか。


よくある中世ヨーロッパ風の世界観ではあるけど、魔力一つでかなり便利な世の中だよな。ゲームだが。



「それでじゃ、この装置では蓄えた魔力を魔石に補充することも可能じゃが、人が魔力を注ぐことも可能となっておる。見てわかるようにの」


「死屍累々…」


「あれ大丈夫なんですか?」


「ちと魔力切れを起こしとるだけじゃ、心配せんでもそのうち勝手に復活しとるわい」



なるほど…。


ユズだったか、グレンだったか忘れたが、MP切れを起こすと物凄い倦怠感が襲ってくると聞いた気がする。


よく見れば、肩で息しながら作業しているのはいい方で、部屋の端の方にはピクリとも動かない死んでるのでないか疑わしいのまで転がっていた。



「レンテ坊とレイン嬢にまずやってもらうのは、魔力を感じることじゃ」



なんだそのファンタジーな修行は…。



「魔術を使うために必要な魔力というのは、勿論身体の中に流れておるエネルギーじゃ」


「血、みたいなもの…?」


「脈に手を置けば、血の流れを感じられるじゃろう。それと同じようなものじゃ。違うのは触覚で感じられるものではないことじゃな」



何となく言いたいことは分かったが、じゃあやってみせろ!と言われて、これか…?これが魔力!?となるのはラノベの主人公だけだ。


身体の中に実際にあるエネルギーだと言われても、俺には全くと言っていいほど感じられない。


もしかして才能ないのかも…。



「むぅ…。魔力、分からない」


「そう悲嘆するでない、稀に見る殿下のような天才でもない限り、簡単に感じ取れるものではないからの」



あらやだ、お爺さんったら。殿下は天才ではなく脳筋ですのよ?最近ボケちゃって全く困っちゃうわ。


くっ、脳筋王女が天才肌なことを認めたくなさすぎて、脳内奥様が出てきてしまった、だと!?


何故なのですか神よ!天は二物を与えずって話だったじゃないですか!!性格と引き換えに二物も三物も与え過ぎだと思います!!!



「それを解決するための方法こそがこの装置なのじゃからな」



え!?なんだってーーーーっ!?


と、まあ冗談はともかく、流れ的にそうだろうな。


脳筋王女に天才とかいう新たな属性が加わったことへの衝撃が大き過ぎて、少し感情が壊れてしまった。反省反省。



「この装置は魔法陣に手を置くだけで魔力を吸い取って、空の魔石に補充してくれるのじゃよ」


「その吸い取りで魔力の流れを感知できるようになる…?」


「そうなのじゃが、無魔術のアブソーブと違って、これは魔力を一気に吸い上げる欠陥品でな。急激に吸い取られる分、魔力の流れを感じ取り易いのじゃよ」



欠陥品…。まあ、モノは使いようってことか。


ちなみに無魔術のアブソーブは、他者から魔力を吸い取って自分の魔力に変換する魔術で、効率はすこぶる悪い上に、触れた相手にしか使えないという、魔術師なにそれ美味しいの?なプレイヤーには大変不人気の魔術だったりする。


効率が悪いってことは、魔力の行き渡りがゆっくり過ぎて、そっちでは余程の才能でもない限り、魔力の感知なんて無理なのだろう。



「空の魔石を100個ほど補充すれば魔力を感じられるようになるじゃろうて。では、使い方を説明するから見ておるのじゃぞ」


いや、待て。


100個ってそれ一つでMPどれだけ消費するんだよ。


確実にMP切れ起こすんじゃ…。


嫌だぞ、あれの仲間入りするのは!!


MPポーションも無限ではないし、クールタイムだってあるのに。


MPポーションの平均的なクールタイムは10分。品質によってまちまちなので、高品質なものならば5分といったところだ。



使い方は単純なもので、空の魔石を真ん中にセットする、セットした魔石の左右にある魔法陣に両手を置く、『フィルアップ』と唱える、吸い取られる。の手順だそうだ。



「まずは俺からやってみるか」


「頑張って…!」



部屋の端に転がる屍に目を向ける。


顔が歪んでいるのが自分でも分かる。いや、絶世のブスとかそういう話ではないぞ?


どのくらいMPが持っていかれるかも分からないので、最初に俺が実験台になろうという男前な判断だ。


小さく両手で握り拳を胸の前に作ってエールを送ってくれるレインだけが癒しであり、それ以外はゾンビ。


立派な白髭を蓄えたお姫様の僕もゾンビみたいなものだろう。



「ここにセットして、手を置いて、ええと…、『フィルアップ』!うぉぉお!!??」



こ、これはすごい…。


一気に身体から力が抜ける感覚と言えばいいのか、MPは0になっていないようだが屍のようになってしまうのも分かる倦怠感が襲ってきた。



「300か、ギリギリだな」


「倒れないで済むギリギリの容量の魔石を渡しておるからの。あれと同じようになりたくないじゃろ?」



なんだ、そうだったのか。


先に言ってくれよ、ビクビクした姿を晒してしまい少し恥ずかしいじゃないか。



「次はレイン嬢じゃな。レイン嬢はこっちの魔石じゃ」


「ん」



俺が倒れなかったのを見て少し安心したのか、先程よりは警戒心を解いている…気がする。



「レインも頑張れ」


「任せて」



何で魔力を補充するだけでこんなに覚悟を決めなければならないのか。


これから魔術士プレイヤー全てが通る道だと思うと、少し同情してしまいそうだ。






レインと交互に続けて、さらに夕飯を挟んで少し。


レインが高品質のMPポーションを提供してくれてなかったら、あと数時間追加で地獄が待っていたことだろう。



「これで100!」


〈【魔力感知】スキルを取得可能になりました〉



おお、これが念願の!!


SPは3か。取っちゃえ取っちゃえ!



「取得できたようじゃの」



説明を終えた後、しばらくして席を外していたマーリン爺がタイミングを見計ったように戻ってきた。


レインも次でスキルが出る筈なので、まずは先にレインもこの長かった単調作業を終わらせる。



「魔力感知、軽減されてSP5は重い…けど、仕方ない」



軽減ってことは、レインも何かそういう称号を持っているのだろう。


俺の場合は【魔術士見習い】【七色の魔術士】で固定で1ずつ減っていて、レインよりも軽減されているということは【“終焉の魔女”の弟子】の効果もあるのだろう。


師匠、ありがとうございます!



「無事取得できたようじゃし、少し移動しようかの」



マーリン爺の後を着いて、まずは受付で報酬を受け取る。


何の報酬かといえば、空の魔石に魔力を補充したことの報酬だ。


空の魔石の補充は魔術士協会のDランククエストの一つになっているらしく、勿論レベルの高いレインの方がMP総量が高く、容量の多い魔石に魔力を補充していたため報酬はレインの方が高いが、俺の方もそこそこな金額になった。


一応クエスト扱いの妖精鱗粉の塊の報酬と共に、これでまた少し懐が暖かくなったな!



その足のまま連れてこられたのは、地下の訓練場。


たしか冒険者ギルドの地下も同じようになっていると聞いた記憶があるから、職業協会の地下は似た構造になっているのかもしれない。



「魔力感知を取得したことで魔力を感じ取れるようになっとる筈じゃ」


「不思議な感覚ですね。胸の右、心臓とは逆位置に集まるように、全身を巡って流れてる」



よくラノベなんかではヘソの位置だったり色々とあるが、MLでは心臓の逆位置が魔力の起点になっているようだ。


まだ魔力感知のレベルが低いせいか、自分以外の魔力は薄ぼんやりとしか分からないが、マーリン爺の魔力は圧倒的で、いくら魔力感知のレベルが低かろうと誤魔化しきれない魔力量をしている。


この場でそれ以外に感じられる魔力は二つ。


レインの魔力と、微細だが空気中に満ちている…これが魔素だろう。


魔力感知を発動している視界は、魔素が若干様々な色を帯びて光っているため、多少の暗さでも視界を確保できそうだ。


ちなみにレインは黄色のオーラを纏っているように見える程度だが、マーリン爺は妖精の輪を発動したときのような輝き方をしており、正直言って眩しい。



「魔力感知が出来るようになったら、今度は自身の内にある魔力を、手に集めたり、また全身を巡らせたり、速くしたり遅くしたり、色々とやってみるのじゃ」


「集めたり巡らせたり…」



魔力が流れる感覚は、散々ドM装置で体感しているので、感覚自体は掴めていると思うのだが、なかなか思い通りに動いてくれない。


自分で流れを作ろうとすると、ゴミが詰まった水道管のように流れてくれない。


辛うじて出来るのは、元からある流れを堰き止めて、一気に開放してを繰り返すくらいで、巡らせるだとか流れの強弱だとかは逆立ちしても出来そうになかった。



「流石ファンタジー、手強いな」


「難題…」



それはレインも同じようで上手くいっていないようだ。


俺だけ才能ないとかじゃなくてよかった。



「今はそんなところじゃろうて」



一旦魔力を巡らせる訓練を中断して、マーリン爺の話に耳を傾ける。


この訓練、少しやるだけで疲労というか、気力や精神力がガッツリ削られる。


汗を掻かないはずのVRの身体が汗ばんでいる気さえするのだ。



「それを繰り返しておれば直に【魔力操作】というスキルが取得可能になるのじゃ。それさえ取得できれば、魔法は目前と言っても過言ではないからの。次の課題は【魔力操作】を取得することじゃな」



どうやら魔法への道はまだ遠いらしい。


※括弧の使い分けについて


「」…会話

『』…詠唱

()…念話など

【】…称号・スキル

[]…アイテム名

〔〕…土地名、モンスター名

〈〉…個人アナウンス

《》…ワールドアナウンス

ステータス表記についてはまた別



今後はこれで統一していこうと思います。

以前からもある程度揃えてはいるつもりでしたが、多分揃えられてなかった箇所も多々見受けられると思います。

文中の強調や、過去会話の回想のために用いていた“”は廃止して、文中であっても「」を用いるようにしよっと思っています。


投稿前に修正する予定ではありますが、既に書き上げている話に関しては不備がある可能性がありますので、その場合は誤字修正機能か、見逃していただけたらと思います。


もし、ここの使い分けはこっちの括弧の方が分かりやすい、分類しやすいなどあれば、感想やTwitterの方のDMでも構わないので、お気軽にご意見お待ちしております。


最後に、もし宜しければ当作品の評価と、ブクマ登録して頂けると作者の励みにもなりますので、宜しくお願いしますm(_ _)m

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