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54/月

今年もラストスパートです。

年末といえば皆様は何を思い浮かべますか?

私は実家の大掃除に追われております…


ヤメテ…ホウキサン、コッチニコナイデ…

ゾウキンサンガヨンデイマス、シキュウバケツマデキテクダサイ


今のうちから素敵な初夢の呪いを掛けときますね!




今週もやってきました。曜日一憂鬱が亡者のように襲いくると噂の月曜日。


きっと日曜日に魂を置いてきたのだろう。


閑話休題、午前中の授業を終えて昼飯の時間だ。



「なあ、装備とかって、やっぱ特定の生産職の人に作ってもらうもんなのか?」


「ああ、タケはまだ初期装備同然だもんな。流石に替え時か」



実情は若葉の付け入る余地があるのかどうかの内々調査だが、そういえば俺の装備もそろそろ更新しないとな。


俺が相手にしてきたモンスターといえば、動く格下か動かない格上のどちらかだ。


装備には追加効果を付加できるらしいので、防御以外の面でも役に立つと考えれば更新は急務かもしれない。



「俺の場合だと、βからの生産職のフレンドが数人いるから、その人たちに話を聞いて、最終的に条件が良さそうなところでって感じだな。やっぱり生産職もスキルによって得意不得意出るから、特定のプレイヤー一人に頼むってのはないな」


これは若葉にもチャンスはあるか…?



「でも大手クランとかは別で、専属の生産職とか囲い込んでるから、そういう場合だと逆に、自クラン以外の生産職に頼むことはないんじゃねぇかな」


「クランか…。そういや、雑貨屋えびす以外のクラン知らないけど、グレンはクラン作ったりしないのか?」


「俺たちはなぁ。そういう話も出てるんだけど、少数精鋭って感じで自由気ままにやりたい気持ちが強くてな。クランはコンテンツが充実してきてからって意見で纏まってる」



クランとかって聞くとどうしてもノルマがーとか、しがらみがーとか、人間関係がーとかで悩まされそうで二の足を踏むよな。


もちろんそれに比するメリットはあるんだろうが。



「まあでも、親しい生産職を懇意にするプレイヤーも多いだろうから、誰か仲の良い生産職のフレンドがいるならその人に頼むってのもアリなんじゃないか?」


「なるほどなぁ」



取り敢えず俺の装備更新はともかく、若葉の成長次第では未来はあるということだ。


それが分かっただけでも収穫だろう。



「装備を気にするってことは、やっと先に進む気になったのか?ずっと町に篭ってるから少し心配だったけど、今度久々に冒険でも行こうぜ」


「生産も一段落したし、今やってる事終わったら新しい町目指すのもいいな」



まあ、どんな目標を立てようとも、若葉を王都に届けてからなんだけどな。


王都まで届ければ、あとは職権濫用王女のバックアップが受けられるようになる。そうなれば、俺は一旦お役御免だ。


そんなMLの話で盛り上がりながら昼のひと時は過ぎていった。






早めの夕飯を終え、風呂も済ませてログイン。


スプラとは西門前で待ち合わせていた。


今日から一週間、平日の夜の少ない時間を使ってグレディを目指す予定だ。


前にグレン達に引率してもらいながらグレディを目指した時は片道四時間ほど掛かったが、あれは魔術操作体験会などの寄り道はあったものの、戦闘に時間を取られなかったり、割とスムーズに進めた上での時間だった。


いくらあの時のグレン達よりもレベルが高いとはいえ、人数も少なければ、スキルレベルは及ばないだろうし、エンジョイ勢と初心者二人組だ。


時間は多く見積もっておいた方がいいだろう。


なので、無理する事なく、少しずつ進んでいくことにした。


それに、グレディまで到達出来れば、グレディと王都の間の街道には馬車が走っているので、最大の難関はグレディまで辿り着くことだ。


ちなみに馬車は脳筋さんが手配してくれているので、商会のクエストを進める必要もなく手間が省けた。


ビバ国家権力!



「お待たせ、待たせちゃったかしら」


「そんなに待ってないよ。さ、色々買い揃えたら出発だ」



前回はおんぶに抱っこの強行軍だったこともあり、諸々必要なものはグレンとセシリアさんが用意してくれていたし、フィールドでログアウトする必要がないように強行したことで、本来必要なアイテムを用意する必要がなかったりもした。


一応敵性モンスターが徘徊するフィールドでもログアウト自体は可能だ。


ただし次ログインしてきた時に、周りを凶悪なモンスターに取り囲まれていればデスする可能性が高いし、馬車や倒木などのオブジェクトに塞がれていれば、一つ前に登録していたスポーンポイントに戻されてしまう。


なので、外のフィールドでログアウトする場合は、安全を確保することが何よりも急務なのだ。


フィールドのまばらに配置されているセーフティエリアがあるのならそれに越したことはないが、時には近くにセーフティエリアがないこともある。


そんな時に便利なのがこのアイテム!



「[簡易結界石]、これだな」


「[魔物除けのお香]と[テント]はこっちにあるわよ」



こういう旅の必需品的なアイテムはNPCショップで揃えられる。


多分、雑貨屋えびすとかでも揃うんだろうが、少しでもグレンバレするリスクを減らすには、こういう小さな立ち回りは必要だろう。


旅アイテムの簡単な説明だが、[簡易結界石]はプリムス大森林や街道に設置されていたやつの使い捨てバージョンだ。


これを中心に設置しておく事で一日程度ならモンスターから身を守ってくれるらしい。


そして、[魔物除けのお香]は簡易結界石を使うほどではない小休止のときなどに重宝されるアイテムだ。


簡易結界石ほど長時間ではないが、モンスターが嫌う臭いで少しの間モンスターを寄せ付けないらしい。


また、ログアウトする際は[テント]の中ですることによって、宿屋ほどの効果はないが、HP・MPの回復速度が町と同じ早さで回復してくれるようだ。


HP・MPの自然回復速度は、街中などの安全地帯とフィールドなどの危険地帯では、倍ほど効率に差がある。


何気に防水加工で雨が降っても安心だ。


それに、これ程までにリアルなのだ。精神衛生上、野外で地べたに寝るよりもテントで寝袋に包まれたいではないか。欲を言うならベッドだが、今度検討しよう。


それ以外にも、ライトは魔石燃料型の魔道具のライトと、オイル式のカンテラの二種、野営のときに暖を取ったりするための焚き火用の着火剤と火打石、枯れ枝を纏めたり他の用途にも使えるロープや布袋、取り回しやすく枝を払えるようなナイフ、雨が降ったとき用の合羽代わりの外套等々、思いつく限り買い揃えた。


一応雰囲気は大事ということで、食糧や食器類も買い込んだが、空腹度が導入されてない以上ストレージの肥やしになる可能性が非常に高い。



さて、準備に余念がないのはいいことだが、闘技大会前にした金策で稼いでいたお金が底をつきそうだ。


あの時は魔法のインクを雑貨屋えびすに大量に流すことによって大金を得たのだが、もう同じ手で稼ぐことは流石に難しいだろう。


しかし今思えば、スクロールについてセシリアさんが疑いを深くした理由の一端は、この金策のせいでもあったのかもしれない…。


まあそれ以外でも脇が甘かった以上、今更一つや二つ原因が分かったところで、これから気を付けていこう以上に思い悩むことはないな、うん。



よし、あらかた必要なものは買い揃えた。


時刻は午後8時と空は闇に閉ざされているが、それは明日も明後日も変わらないので、さっさと外に繰り出そうではないか。



「他に何か忘れ物はないよな」


「大丈夫だと思うわ」


「よし、じゃあ出発だ!」



カンテラを片手に意気揚々と門の外へ足を踏み出してから気づいた。


そういえば夜のフィールドって初めてじゃね…?



主人公はスキルレベルが大きく劣っていると思っていますが、そこまで大きな差はありません。

グレン達に連れられてグレディを目指したのは、正式リリースから一週間、闘技大会の一週間前ですので、主人公は周りを攻略組に囲まれていると言う意識のせいで、少しばかり自分を過小評価してしまうところがあるのかもしれません。


ただ、今の攻略組と主人公を比べた場合、スキルレベルが劣っているのは紛れもない事実です。

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