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【女神様のご褒美】

次にニアの部屋へ寄る。壊れてしまったブレイブシフトを渡すと、やはり泣かれてしまった。


「本当にごめん。でも、これ見て!」


「なんですか……?」


僕は皇から受け取った新型のブレイブシフトを見せる。


「皇のブレイブシフトだ。たぶん、あいつのデータもたくさん入っているし、何かの役に立つんじゃないかな」


「……確かに、トップの勇者である皇さんのデータがあれば、ブレイブアーマーの性能向上に役立てられるかもしれません」


「僕が皇から譲り受けたんだ。だから、僕のブレイブシフトだ。そして、僕のブレイブシフトはこれからもニアに調整してもらいたいと思っている」


「ほ、本当ですか?? 最新のブレイブシフトなのに、私が触っていいのでしょうか??」


正直、アインス博士が何を言うか分からないけど、フィオナに頼めば何とかしてくれるはず。ここはもう、勢いだ!


「もちろんだよ! これからもよろしくね!」


「はい!」


皇、ありがとう。

お前のおかげで、戦争が終わっただけじゃなく、ニアも泣き止んでくれたよ……。




ニアの部屋を出て、次はどうしようかと迷っていると、セレッソの姿が。


「お、目覚めたか。すまないな、傍にいてやれなくて」


何だか珍しいことを言う。


「別にいいよ。お前に子守されるつもりはないんだから」


「……そうだな。ただ、私が傍にいてやりたかっただけかもしれない」


な、何だよ。

セレッソにしては優しいって言うか、妙に意味があるような言い回しじゃないか??


そう思うと、決戦前にあいつとキスしたことを思い出してしまい、まともに顔を見れなかった。しかし、セレッソは僕の前まで寄ると、手を取って握りしめるのだった。


「誠」


「な、なんだよ」


「お前のおかげで、私は一歩踏み出せた。……ありがとう」


どうしちゃったんだ??

確かに顔面は美少女のものだけど、


素直にお礼を言うような性格の良い女じゃなかっただろ??


が、セレッソはいつも通りの調子で続ける。


「この戦争は、オクトにとって大きな出来事だった。だが、私にとってはただの一歩でしかない。お前にはまだ負担をかけるが……まだ付き合ってくれるか?」


セレッソの手に、力がこもったようだった。


「敵は……何者なんだ?」


「この世界のどこかに潜み、影から争いの火を広げようとするようなやつだ。だが、そいつもタンソールと同じく、強大な力を持っている。お前の力を借りなければ、私にはどうしようもないほどの力だ」


「……じゃあ、戦うよ。最後まで付き合う。今回みたいな戦争を繰り返させてたまるかよ」


「これまで以上に強い敵が立ちはだかるかもしれない。今まで以上に、苦しいことが待っているかもしれない。それでもか?」


「……ああ。お前とフィオナだけに、この世界の平和を背負わせるつもりはない」


僕の答えを聞くと、セレッソは手を離して、笑顔を見せた。今まで見たことのない、柔らかくて純粋な女の子みたいな笑顔を。


「ありがとう」


こ、こいつ……可愛くないか!?

こんな顔を見せられたら、今後どう付き合っていけばいいのか、分からなくなるぞ!?


「そうだ」


しかし、セレッソの方は平然と話を切り替えてきた。


「今からタンソールに会いに行く。お前も行くか?」


「あ、アオイちゃんに?? ここにいるの!?」


「捕虜という形でこの移動要塞で護送中だ。もちろん、魔王は死んだことになっているから、超極秘だ」


そうか。生きているのか。

まぁ、僕がとどめをささなかったから、当然なんだろうけど。


言ってやりたいことはある。

下手したら、ぶん殴りたいって気持ちも。だから……。


「やめておく。できれば、二度と顔を合わせたくない」


「そうか。じゃあ、私は行くぞ」


「うん」


そのまま立ち去るかと思ったが、セレッソはすぐに足を止めて、僕を引き止めた。


「誠」


「なんだ?」


再び向き合ったかと思うと、セレッソが踵を上げ、急に唇を重ねてきた。


「な、何をするんだ!?」


「別に変身させるつもりはない。ただの礼だ」


「れ、礼って……」


「私は、お前が思っている以上に、感謝しているってことさ。望むなら、これ以上のことだって、お前に捧げてやってもいいんだぞ?」


「ば、ばばば馬鹿を言うな!」


動揺する僕に、いつも通りの微笑みを残し、セレッソは去って行った。

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