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【それでも殺さないで】

「殺してやるぞぉぉぉーーー!!」


僕はワクソーム城の謁見の間に突っ込む。最初に足を踏み込んだ時とは違い、瓦礫が散らばり、荒れ果てていた。


そして、その奥にイワンが。

やつは、何を考えているのか、無表情に視線を床に向けたまま、どこにでもある装飾のない椅子に腰を掛けていた。


「イワン、殺してやる!!」


僕の怒号にすら、イワンは反応せず、ただ床を見て動かない。


(誠、戻れ! この間にフィオナが殺されたらどうする!?)


「その前にあいつを殺して、魔王も殺す!!」


(頼む、ここは私の言うことを……むっ?)


僕はイワンの方へ飛びかかろうとしたが、セレッソは何かを察知したようだった。


「イワンに近付くなぁぁぁ!!」


背後に衝撃。恐らく、上から体を踏み付けられたのだろう。僕の体は床を貫通し、ワクソーム城地下の床に衝突した。だが、それは僕の怒りを刺激するだけだ。


「お前こそ、邪魔するな!!」


僕は飛び跳ね、地下からワクソーム城最上部にある謁見の間に着地した。イワンの前に立ちはだかる魔王。彼女が何者か、僕は分かっているつもりだ。それでも、今はただの敵でしかない。


退()けぇぇぇ!!」


僕は魔王に飛びかかり、渾身の右ストレートを叩き込む。顔の半分が爆ぜつつも、瞬時に修復させて、魔王は反撃の拳を放ってきた。だが、僕はそれを手の平で払い、軌道を逸らしつつ、膝を突き上げる。


「がはぁっ!!」


僕の一撃に魔王の腹部に大穴が空いた。さらに、彼女の首を両手で絞めたが、反撃の気配を察した瞬間に、頭から床へ叩きつけてやる。先程の僕と同じように、地下まで落下する魔王。僕は口を開き、ビームを吐き出した。


ワクソーム城が揺れる。

もしかしたら、崩壊してしまうかもしれないが、それでいい。


「後は、あいつを殺すだけだ」


きっと、魔王は死んだわけではない。

戻ってくる前に、やつを……!!


「だから、ダメだってぇぇぇ!!」


床を貫き、魔王が僕に飛びかかってきた。しかし、僕は足を払って魔王を転ばせると、床に抑えつけてから、強引に背骨を掴んで引っ張った。


「ぎゃあああぁぁぁ!!」


魔王の絶叫。


うるさい。痛いのが嫌なら、出てくるな!


僕はさらに魔王の内臓をむしり取り、心臓を握り潰す。これでも足りない。僕は彼女を二つに裂いて、一つは天井に空いた大穴へ投げ捨て、もう一つは床に空いた穴へ放り捨てる。


「イワン、覚悟しろ」


僕は返り血に染まりながら、さらにイワンへ距離を詰めた。殺してやる。僕の怒りは増長し続けた。これを止めるには、この男を殴打し、引き裂いて、千切ってやるしかない。


「何か言えよ、イワン・ソロヴィエフ!」


謝罪が欲しかったわけじゃない。ただ、やつが恐怖に顔を歪め、今までの行動を後悔させたかった。それなのに、やつは……。


「……ん? 呼んだかね?」


まるで、昼寝でもしていたかのような反応じゃないか。


「殺してやる、って言ったんだよ。戦争を起こして、たくさんの命を奪って、たくさんの人の想いを踏み躙ったんだ! 楽に死ねると思うなよ?」


血にまみれた、恐らくは人とはかけ離れただろう姿の僕を見ても、イワンは表情を変えない。そして、立ち上がると、温度のない声で答えるのだった。


「そうだな。そろろろ罰を受けるときがきたのだろう」


その態度は、僕の気持ちを逆撫でる。


「なに平気な顔しているんだよ。当たり前みたいな顔しているんだよ!」


「……たくさん殺したからな。どんな痛みも受け入れなければ」


「そうじゃない。言うことくらい、あるだろう……」


よく分からない。

どうして、これだけ言葉が通じないんだ。


なぜだか、こっちが泣きそうになるじゃないか。


「もういいよ。じゃあ、殺してやる」


さらに一歩、イワンへ近付こうとしたが、ぐっと何かが足首に絡みついた。


「ま、待って……。イワンを、殺さない、で」


そこには、体を四分の一に引き裂かれた魔王の姿が。まだ修復が十分ではないらしく、片腕で全身を引きずり、何とか僕の足首を掴んだようだ。


「どれだけの人間が、殺さないで欲しいと願った? どれだけの人間が助けて欲しいって言ったんだ! それを聞かなかったのは、お前たちだろ!!」


僕は魔王の手を振り払い、彼女の腕を踏み付けた。それなのに……。


「こ、殺さ、ない、で。イ、ワン、を」


それでも、彼女は僕の足首にまとわりつくのだった。

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