【とんでもバトル】
視界がオレンジ色の光でいっぱいになる。何もかも飲み込んでしまいそうなビームだが、僕は避けなかった。たぶん、オクトの移動要塞を一瞬で破壊したビームに違いない。そんなもの、僕の体一つで受け止められるか、と思ったが……。
「な、なんだ……??」
僕の目の前に、ピンクの薄い膜が円を描き、壁のようにビームを受け止めていた。
(バリアだ。コントロールは私に任せて、お前は踏ん張ることだけに集中しろ!)
ば、バリア!?
なんでも有りだな、女神は!!
これで、フィオナたちは無事のはず、と思ったが、ビームは周辺に飛び散り、大地や森、空の雲を切り裂く。や、やっぱりとんでもない威力だけど、僕はあれを受け止めているのか??
押し寄せるビームの威力に流されまいと、何とか踏ん張っていたが、体が急に軽くなる。アオイちゃんがビームを止めたみたいだ。
(誠、叫べ)
「叫ぶ? もしかして、僕も口からビーム出せって意味??」
(違う、フィオナたちにワクソーム城の影に隠れるよう、伝えるんだ)
「いやいや、どれだけ離れていると思っているんだ! 聞こえるわけないだろう」
(良いから叫べ! 女神のとんでもパワーは理解できただろ??)
た、確かに今なら……。
僕は思いっきり息を吸い込む。
「フィオナ! ワクソーム城の影に隠れろぉぉぉーーー!!」
僕の絶叫に衝撃波が発生した。鼓膜が破れそうな絶叫でも、アオイちゃんはそれを平然とした顔で受け止め、表情を変えない。
「うるさいなぁ。全員、焼き殺してやるんだから!!」
アオイちゃんが空に飛び立つ。まさか、フィオナたちの方へ……!?
(まずい、行かせるな!)
「で、でも……僕、空なんて飛べないけど??」
(飛べるんだよ! 女神は飛べて当たり前なんだ!!)
飛べて当たり前??
そんなドラゴ〇ボールじゃないんだから!!
しかし、僕の背中に何か違和感があったかと思うと、マジで羽が生えた。巨大な、コウモリのような翼が!!
「な、なんじゃこりゃぁぁぁ!!」
そして、体が宙に浮き、びゅんっと音を立てて飛び立った。しかも、めちゃくちゃ速い!!
「ほ、ほげぇぇぇーーー!!」
僕、ジェットコースターとか苦手なんですけど!!
しかし、そのスピードによって僕はアオイちゃんの前に回り込み、彼女が動きを止める。アオイちゃんは僕を睨み付けると、全身にオレンジ色の光をまとった。
「邪魔するなって、言ったよね!!」
すると、アオイちゃんがオレンジ色の熱線を体の所々から放ち始めた。無数の細いレーザー光線が、四方八方に伸びて行く!!
「よ、避けられない!!」
(空中移動とバリア制御は私に任せろ。お前はソールに一撃を入れるタイミングだけ逃すなよ!)
「どういうこと??」
僕が理解するよりも先に、体が勝手に動き出す。ハリネズミのように放たれるレーザー光線を掻い潜る僕の体。そして、避け切れないものはしっかりとピンク色のバリアが防いでくれた。
(三秒後、ソールに接近する! ぶん殴って地上に叩きつけてやれ!!)
ビームとビームの間をすり抜け、セレッソの宣言通り、僕の体がアオイちゃんの前へ投げ出される。
「悪いことしちゃ、ダメでしょ!!」
この一発で叩き落としてやる!
と拳の一撃をアオイちゃんの頭に落としたつもりだったが……!!
「セレッソ、空中移動の精度は昔ほどじゃないね!!」
アオイちゃんの声が背後に。
やばい、逆に叩き落とされるぞ!?
「し、しまっ……!?」
しかし、驚愕の呟きを漏らしたのは、アオイちゃんの方だった。何が起こったのか、まったく分からないが、彼女の体が胴の辺りで二つに分かれ、落下していく。
「な、何があったんだ?? う、うわぁ!?」
困惑していると、突然視界の中に巨大なピンク色のナイフのようなものが入り込んだ。
(髪の毛の一部を刃に変えて、ソールの胴を斬ってやった。こんな戦法に引っかかるなんて、千年経ってもあいつは子どもだな)
「こ、これ僕の髪の毛なの??」
(そうだ。制御に慣れれば、お前も自由に動かせるぞ)
髪の毛がピンクになって、ナイフみたいに動くなんて……
僕っていまどんなビジュアルしているんだ!?
(よし、次は口を開いて真下を見ろ)
「こ、こうか?」
言われた通りのポーズを取ると……。
「お、おえええぇぇぇーーー!!」
口の中から大量のゲロ……じゃなくて、ビームが!!
そして、アオイちゃんがいるだろう地上で、大爆発が起こるのだった。
「お、おい……。やり過ぎじゃないか?」
僕は焦土となった大地を見下ろして呟くが、セレッソの声は冷静なものだった。
(これくらいじゃないと、女神の動きは止められん)
「め、女神……?? アオイちゃんも女神なの??」
(今さら……。それより、もう少し痛めつけておくぞ。あれくらいで止められるなら、苦労はしない)
「まだやるのか??」
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