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【魔王に勝てるかも??】

(ただし!)


セレッソは付け加える。


(今回は相手も同じくらい強いから、絶対に油断するな!!)


「それ、無双って言わないじゃん!!」


(きたぞ!)


空を見上げると、拳を突き出しながら急降下するアオイちゃんの姿が。


「やべぇーーー!!」


僕は身を起こして、這うようにその場を離れたが、背後から爆発音と共に衝撃が。僕は綿人形のように吹き飛ばされたあと、地面をごろごろと転がってから、何とか体勢を立て直す。


どれだけの衝撃だったのか。大量の土埃が舞っていたが、それが一瞬で晴れる強風が吹いた。いや、アオイちゃんが腕を振って、それを払ったらしい。


「逃げないで、ちゃんと私と遊んでよ!!」


アオイちゃんは殺気をまき散らしながら、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。


(超スピードで踏み込んでくるぞ。だが、今のお前の反射神経と、これまで積んだ経験値なら、対処できるはずだ。落ち着いて戦え)


セレッソの言う通り、アオイちゃんが地面を蹴った。何十メートルはあっただろう距離が一瞬で消失し、彼女が目の前に!!


「うわあっ!!」


驚きはしたものの、彼女の右ストレートは見えなくはなかった。確かに、反射神経が上がっている。立て続けに放たれる、高速のパンチも捉えられる。しかも、アオイちゃんのパンチは正直で、右左と交互に出されるだけ。だとしたら!!


「ぎゃあっ!!」


彼女の右のパンチを外側に避けつつ、同時に拳を突き出すと、綺麗に顔面を直撃した。ぐしゃり、と今までとは全然違った感触に加え、彼女がダンプカーに轢かれたように吹き飛ぶ。


「ご、ごめん! 大丈夫!?」


ぶっ倒れたアオイちゃんのもとに駆け寄ると、彼女は両腕で自分の体を持ち上げ、ゆっくりを身を起こそうとしていた。


「お兄ちゃん……ひどいよぅ」


そして、こちらに顔を向けたのだが……。


「ぎゃ、ぎゃあああぁぁぁ!!」


アオイちゃんの顔半分がなくなっている!!


さらに、肉が抉れ、歯がむき出しになり、そこから血が吹き出しているじゃないか。


めちゃくちゃホラーなんですけど!!


「自分でやっておいて、驚くとかおかしいでしょ!!」


「しゃ、喋らないでよ、グロが際立つ!!」


「うるさいなぁ。これくらい、一瞬で治るんだから」


アオイちゃんが消滅した顔半分に手を当て、一秒もせずにそれを避けると、すべてが元通りに。


「ま、マジかよ。あり得ねぇ」


「お兄ちゃんだって、上半身と下半身が別れたんだから、あり得ないってことはないよね」


そ、そっか。

僕もとんでもない状態から、すぐに体が治ったんだった。異世界物の女神って、こんなグロテスクな化け物なのか?


(誠、油断するな!!)


セレッソの声。驚く僕に、アオイちゃんが拳を突き出してきた。


でも、それくらいの不意打ちは大したことがない。僕は身を退いて、すぐに距離を取るが、アオイちゃんはどんどん距離を詰めて、パンチとキックを連続で繰り出した。


(あいつは簡単に死なない。本気で殴れ、誠!)


「で、でも……可哀想じゃん!!」


(ここにきて同情するな! ソールを止めなければ、次はお前の仲間が死ぬぞ!)


「!?」


アオイちゃんのミドルキックを軽々飛び越え、空中から反撃の回し蹴りを叩き込む。それは彼女のこめかみに吸い込まれ、頭蓋を粉砕し、地面に脳の一部が飛び散らせた。が、それも瞬く間に修復される。


悔し気に僕を睨み付けるアオイちゃんだったが……。


勝てる。勝てるぞ!

パワーやスピードが桁外れでもだけど、アオイちゃんは格闘戦の素人だ。近接戦闘なら負ける要素がない!!


「これくらいで……」


アオイちゃんは握った拳をわなわなと震わせた。


「これくらいで、勝ったと思わないでよーーー!!」


叫ぶと同時に、彼女の口内が輝く。


あれは、オクトの移動要塞を破壊したビーム攻撃だ!


直撃したらただじゃ済まない。逃げないと!


(ダメだ、誠! 後ろにフィオナたちがいる。避けるな!)


しかし、頭の中でセレッソの声が響くのだった。

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