【異世界でチート無双】
僕の腹部は八割ほど消滅し、その身体を支えられなかった。上半身が傾くと、残っていた腹部の二割が重みに耐えられず、千切れてしまう。
「ぎゃっ……ぎゃあああぁぁぁーーー!!」
ドサッ、という音と共に僕の上半身が床に落ちて、絶叫を上げる僕だったが、アオイちゃんは忌々しいといった表情で「遅かったか!」と舌打ちする。
(誠、安心しろ。その程度の傷で死にはしない)
「その程度って、僕の体が千切れたんだぞ!?」
(すぐに修復する。落ち着け!)
「こんなに痛いのに……落ち着いてられるか!!」
だが、僕の体は異様な動きを見せていた。上半身の背骨が伸びたかと思うと、下半身につながり、それを引き寄せる。
「な、なんじゃこりゃあああ!!」
そして、僕が驚きの声を上げている間に、体がくっ付いていたのだ。
(立て、誠! ソールの攻撃がくるぞ!!)
「へっ?? どういうこと?」
顔を上げると、アオイちゃんが再び手の平を向け、そこに光の弾を生み出していた。僕のお腹を八割消滅させた光。あれが顔面に当たったら……今度こそ死ぬぞ!?
僕は両手を床に付いて、思いっきり体を押し上げた。すると、ドンッという音と衝撃があり、気付くと僕は……空にいた。
「何が起こったんだ??」
(お前の腕力が強すぎたんだ! 今はワクソーム城の上にいるぞ!)
「僕の力が強すぎる?? って言うか、お前の声はどこから聞こえているんだ??」
セレッソの声が耳元で聞こえるが、その姿はどこにもない。
(今のお前は私と一心同体みたいなものだ。とにかく、細かい話しは後にしろ! 下からソールの攻撃がくるぞ!)
「攻撃?」
(空中の姿勢制御は私に任せろ。お前はソールの攻撃を弾くことだけを考えるんだ!)
「弾くって、どうやって??」
(何でもいい! 手で叩けばいいだろ?? ただ、フィオナたちのいる地上に跳ね返したりするなよ!?)
「いつものことながら、唐突過ぎるし、説明が足りないんだよ!!」
真下には確かにワクソーム城があるのだが、その天井は僕が突き破ったのか、大きな穴がある。そして、その穴の奥で一瞬何が光った。
(くるぞ!!)
光が凄まじいスピードで飛んでくる。
「うわわわっ!!」
動揺しつつも、バンッ、とボールを叩くみたいに弾き飛ばすと、それは僕の足元に見えていた山へ吸い込まれるように落下していった。
一瞬の後、爆音と爆風にさらされる。
何がどうなっているんだ??
と、足元を見下ろすと、光が落ちたであろう山が見当たらず、ただただ大量の煙が上がっていた。
(馬鹿、地上に跳ね返すなと言っただろう! フィオナたちに何があったらどうする??)
「えっ!? みんな大丈夫なのか??」
(戦場から離れた山が吹き飛んだだけだ。だが、気を付けろ。少し角度を間違えたら、フィオナたちが消し飛ぶ)
や、山が消し飛んだって……本気で言っているのか??
僕にしてみると、飛んできたバスケットボールを手で弾いたくらいの感覚だったのに。
(ソールが行ったぞ! かまえろ!!)
「こ、今度はなんだよ!?」
すると、目の前に……いや、少し見上げるような位置に、翼を生やしたアオイちゃんの姿が。
「お兄ちゃん、みーっけ!!」
アオイちゃんが悪魔のような笑みを浮かべると、僕の頭を踏み付けようと、足を上げた。
「あ、危ないって!!」
僕は腕で頭を守るが、アオイちゃんが足の裏を叩きつけてきた。すると、凄まじい衝撃と落下を感じ、引力が僕を地面へ引き込もうとする。
背中に痛みがあり、塞いでいた目を開いてみると……僕は地上で倒れていた。しかも、隕石でも落ちたみたいに、僕を中心にクレーターが広がっている。
「これだけの衝撃なのに……大して痛くない。マジでどうなっているんだ??」
すると、耳元でセレッソの声が聞こえた。
(当たり前だ。今のお前は人間じゃない。私の……女神セレッソの力を移植したんだ)
「女神の力を移植……?? なんでそんなことに!」
(お前、この世界にくる直前に言っていただろ?)
なんて言っていたっけ?
セレッソが過去の僕の発言を教えてくれる。
(異世界と言えば、チート能力がつきものだ、って。今のお前はどんな相手でも無双できるくらい、とにかく強いぞ!!)
なるほど。
今までビビりながら戦ってきた、最弱系主人公の僕だったけど……
ついに異世界でチート無双する日がやってきたってことなのか!?
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