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【起動】

「世界を救う??」


突飛とも思えるセレッソの発言に、僕は首を傾げるが、彼女は顔をしかめて苛立たし気に言うのだった。


「お前な、忘れたのか? 私がこの世界に連れてきた理由を」


「それは、だから……最強の勇者になって、この戦争に勝つんじゃなかったか?」


「違う。あくまで、お前の目的はアトラ隕石を無害化し、この世界を救うことだ。魔王はファーストステージのボスでしかない」


そ、そうだった。

アトラ隕石を見たのは、かなり昔な気がして、すっかり忘れてたぜ……。


「でもさ、セレッソ。アオイちゃんは強すぎる。あれじゃあ、違う漫画のキャラクターが出てきたのと一緒だよ。規模感が、世界観が違い過ぎて、勝負にならないって」


セレッソは再び溜め息を吐いた。


「じゃあ、私が何のためにお前を連れてきたと思っているんだ?」


「なんでなの?」


「勝てるから連れてきたんだ」


「いやいやいや!」


僕は手を仰ぐようにして否定するが、セレッソの表情は真剣そのものだった。


「ま、マジなのか?」


「マジだ。大マジだ。だから、これから私の言うことを聞け。そして、受け入れろ」


何を言っているんだ、セレッソさん。

僕は空を飛びながら火を出したり、ビームを出したり、そんなことはできないぞ??


「安心しろ。たぶん、力の半分程度は私がコントロールできるはずだ。お前は自分の体を動かすことだけに集中すればいい」


「何を勝手に話を進めているんだ。何一つ理解できないぞ」


しかし、セレッソは僕に一歩詰め寄った。

な、何をするつもりなんだ??


「まず、変身を解除しろ」


「こ、この状況で変身を解除できるか!」


「いいから」


何とも言えぬセレッソの気迫に押され、僕は変身を解除した。すると、セレッソはより目を鋭くして言うのだった。


「じゃあ、目を閉じろ」


「だから、何をするつもりなんだよ!」


「少しキスするだけだ」


はぁ? この状況で??

こいつ、マジで頭がおかしくなったのか?


「き、キスって! 僕のキスの相手は、ファーストキスを捧げたハナちゃんであって……」


「もうそのやり取りは飽きた。お前は私のものなんだ。言うことを聞け」


「なんちゅー、強引な女神だ」


「良いから、顔を寄せろ。目を閉じておけ。私だって少しは恥ずかしいんだ」


本気? 本気なの?


「セレッソお姉ちゃん、頭がおかしくなったちゃったわけ??」


意外なことに、僕の気持ちを代弁してくれたのは、アオイちゃんだった。って言うか、これだけ離れているのに、僕たちの会話が聞こえてたのか?


「そんなの、とっくの昔に試したじゃない。私たち以外は適応できず、みんな死んじゃったんだから、どうなるかくらい分かるでしょ?」


セレッソは一瞬だけ、アオイちゃんを見たが、僕に視線を戻すと、目を細めつつ顔を寄せてきた。


「口の中から、変なものが入り込んで、不快感があるかもしれないが、大丈夫だ。私に全部委ねろ」


「ねぇ! 誠お兄ちゃんが死んじゃうよ?? いいわけ!?」


アオイちゃんの主張を無視して、セレッソは顔をさらに近付ける。僕は彼女の唇を見つめて「こんなときでも胸がドキドキ言うものなんだな」と妙に感心していた。そして、唇が僕に触れる。


「……セレッソ!」


アオイちゃんは引き止めるように叫んだが、その直後、何かに思い当たったのか、眉間に皺を寄せた。


「誠? 神崎、誠?? ……そうか、思い出した。あのときの(・・・・・)男か!!」


アオイちゃんがこちらに手の平を向けると同時に、セレッソの口から僕の口の中に何かが入ってきた。


し、舌なのか?

これって、ディープキスってやつ??


いや、それは僕の勘違いだった。だって、舌と思われた何かは僕の喉奥に入り込み、お腹の中まで到達したのだ。僕は異物感に吐き気を覚えるが、セレッソは唇を押し付けたまま、離してはくれない。


なんだ?

お腹の中が熱い。

焼けるように、熱い。


そして、それは全身に広がっていく。いや、その熱は体の外まで広がるようだった。ワクソーム城の外まで、アッシアの外まで、この星の外まで広がるような、そんな感覚に僕の頭が溶け出してしまいそうになる。だが、その熱が一瞬で収束し、再び僕の体に収まった。すると、僕のお腹の中から声が聞こえ始める。


壊せ。人を、この星を、すべて壊せ!!


そして、お腹の中にいるそれが、空気を震わせ、確かに声を発した。


『ナノマシーン・セレッソ、起動』


熱い! お腹が、目が、腕が、足が!!


いますぐ、この熱を体の外に……!!


「させるか! 消し飛ばしてやる!!」


視界の隅で、アオイちゃんの手が光った。光の弾がアオイちゃんの手から放たれる。ちょうどバスケットボールくらいのその光が、僕の腹に触れる。


ジュッ、と肉が焼けるような音がしたと思うと……僕のお腹が消滅していた。

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