【時間内に倒し切れ!】
『ブレイブモード、スタンバイ』
ブレイブアーマーが激しく光を放つ。
それを目にしたフィリポは動きを止めた。下手に攻めず、様子を見るつもりらしい。
「時間がない。こっちから仕掛けないと!!」
僕は一気に踏み込む。
それを迎え撃つフィリポの左ハイキック。しかし、先読みしていた僕はしゃがみ込んでそれをやり過ごし、足払いを返す。
がくっ、とフィリポがバランスを崩すが、倒れはしない。
「おりゃあああーーー!!」
僕はバネのように飛び上がりつつ、肘を突き出す。それは確かにフィリポの鳩尾を捉えた。
ぐっ、と息を漏らすフィリポ。
このまま、畳み込んでやる!と思ったが、僕の頭はフィリポの両腕に抱え込まれ、首相撲の状態に。
「は、離せ!」
もちろん、離してくれることはなく、フィリポは僕の顔面に向かって膝を叩き込んでくる。しかも、二発、三発と連続で!!
これ、ブレイブモードの状態じゃなければ、たぶん三回死んでたぞ!?
「こなくそぉぉぉ!!」
僕はフィリポの軸足にしがみつき、バランスを奪って倒そうとした。しかし、彼は片足だけで状態を保ち、僕を突き放す。
ブレイブモードの残り時間は??
『00:21』
僕は再び間合いを詰めるため、前へ飛び出す。全力の右ストレートを放つが、フィリポはスウェーバックでやり過ごしてしまう。だが、僕はすぐにボディを狙って、パンチを続けて打つ。
僕の拳が腹部に突き刺さり、後退りするフィリポ。たぶん、効いているぞ!!
もう一度距離を詰め、左のジャブから右ストレート。しかし、フィリポは上手く状態を捻って躱しつつ、強烈なボディブローを返してきた!!
『深刻なダメージ』
ブレイブアーマーのサポートシステムが警告を出す。時間切れの前に、ブレイブアーマーの限界がきたらどうしよう!?
「この野郎!!」
振り回した右フックがフィリポの顎を捉える。
膝が折れた。
勝てるぞ!
「もう一発!」
今度は左フックを振り回すが……。
「ぐあはっ!?」
真っ直ぐなパンチを打ち返され、僕は何歩か後退る。今のは効いた。視界が歪むぞ……。頭を振って、何とか意識を保ち、残り時間を確認すると……。
『00:12』
う、ウソだろ!!
これだけなら、良くてあと一回の攻防だ。
でも、待てよ。確かニアは言っていた。
あくまで三十秒は目安。一分経過したら絶対に壊れる、って。だとしたら、まだ余裕はあるはずだ。
『00:09』
あああーーー!!
ゆっくり考える時間もない!!
攻撃あるのみだ!!
もう一度、フィリポに立ち向かう。右のパンチは躱され、ショートアッパーが返ってきた。かすめただけで、脳が揺れる。低く潜り込んでから、肘を叩き込むが、硬い腹筋の感触が返ってくるだけで手応えはない。
『00:03』
でも、フィリポだってダメージを受けているはず。やり切るんだ!!
今度はミドルキックでフィリポの横腹を狙う。バチンッ、と小気味のいい音が響いたが、フィリポは僕の足を抱えると、顔面に向かってパンチを打ってきた。何とか足を引っこ抜き、体勢を立て直そうとするが……。
『-00:04』
あああああ、マイナスに突入している。
こうなったら、次の一撃に賭けてやる!!
僕はどっしりと腰を落とし、ゆっくりとフィリポへ近付く。向こうも、僕の動きに合わせてリズムを取りながら、次の一撃を放つタイミングを狙っていた。
フィリポのステップ。
足が床から離れた瞬間。
今だ!
僕はプラーナを集中させた、渾身のハイキックを放った!!
しかし、次の瞬間、僕の視界はぐにゃっと曲がったと思うと、何度もぐるぐると回っていた。後から襲ってくる痛み。そして――。
『ブレイブアーマーに致命的なシステムエラーを確認。今すぐブレイブチェンジを解除してください。ブレイブアーマーに致命的なシステムエラーを確認。今すぐブレイブチェンジを解除してください 。ブレイブアーマーに致命的なシステムエラーを確認。今すぐブレイブチェンジを――』
警告が繰り返されたかと思うと
「ピィーーー!!」
と甲高い音の後、ブレイブチェンジが強制的に解除されてしまった。
生身の状態でフィリポに睨まれながら、僕は思う。
もしかして……
やっぱり……
ブレイブシフト、壊れちゃった??
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