表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

248/352

綿谷華の場合 / たまには守られるのも

アナの拳は銀の閃光となって華を穿つ。が、その一撃とすれ違うように煌めく赤い閃光。それは、アナと衝突すると、彼女を包み込んだ。


「捕まえたぞ!!」


「な、なんだ今のスピードは!?」


華のタックルにブレイブモードの力が加われば、いかに強化兵とは言え、いかに距離が離れてたとは言え、その目で捉えることはできない。華はアナを押し倒しただけでなく、立ち上がろうとする彼女の後ろに回ると、その背にしがみついていた。


「は、離れなさい!」


「お前が死んだら離れてやる!」


華は後ろからアナの首に腕を回そうとする。一気に締め上げれば、強化兵でも呼吸を奪われ、意識を失うだろう。が、アナも歴戦の兵士。華の腕を掴んでそれを防ぎ、体を揺すって彼女を落とそうとした。


「その程度で逃げられると思うなよ」


さらに腕に力をこめる華。アナの首がさらに絞められていく。


「どうだ、笑ってみろよ!」


「あああっ……」


アナの体が痙攣し始める。

が、アナは後ろにしがみつく華の眼前へ拳を向けた。


(くそ、この状態であれがくるのか!)


アナの拳が槍のように伸び、華の顔面を貫こうとした。至近距離ではあったが、狙いは大雑把だ。華は顔を逸らしてそれを躱してみせる。頬をかすめる鋭い切っ先を感じ、華は思った。


(時間はかけられない!)


華は両足をアナの腰にしっかりと絡め直す。


「これで終わりだ! ブレイブスラッシュ!!」


華の両腕両足から、魚のヒレに似た刃が飛び出すと、電動ノコギリのように振動して、甲高い音を立てる。


「ぎゃあああぁぁぁーーー!!」


それに重なるアナの悲鳴。

しかし、華の刃がどこか鈍い。どうやらアナは体を硬質化させ、華の必殺技を耐えようとしていた。


「バラバラに切り裂いてやる。覚悟しやがれ!」


華は自身のプラーナを、ありったけ刃に注ぎ込む。すると、刃の切れ味は増し、より激しく振動した。アナは首と胴を斬り裂かれ、血を吹き出しながら、さらなる絶叫を吐き出す。それでも、華は容赦しなかった。なぜなら、アナの拳が再び華の前に置かれたからだ。


(すぐにくたばれ! こっちだって、これ以上は無理だぞ!)


アナの拳が変質する。

華だって、それを躱す体力が残されていない。あとは槍のように飛び出せば、華の顔面を貫いただろう。


しかし、アナの動きが制止すると、ゆっくりと膝を付き、前のめりに倒れた。華は息を切らせながら、ゆっくりとアナから離れる。彼女は体を痙攣させ、床を赤く染めて、これ以上は動く気配がなかった。


(あー、しんどかった)


華はブレイブチェンジを解除し、よろよろと歩き出す。


(あれだ。あの言葉、恥ずかしくて絶対に言いたくないと思ってたけど、こんなときくらいは、言っておくか)


華は大きく息を吐くと、消え入りそうな声で呟く。


「正義執行……」


ゆっくりと壁際まで移動する華だったが、そこで力尽きて、座り込む。


(これじゃあ、ブレイブ・オブ・ブレイブは無理だな。叔母さんのこと喜ばせたかったし、誠のやつにも自慢して、皇には……姉の威厳を見せてやっても、良かったんだけどなぁ)


もう体が動きそうにない。最終決戦に向けて温存すべきだった力は、何一つ残っていなかった。


「でも、それは他も一緒か。やっぱり、私がやらないと」


仲間たちも無事とは限らない。だとしたら、自分が敵の大将を討たなければ。


「いたたたっ」


ダメだった。

全身が悲鳴を上げて痛みを訴える。


どうしたものか。このまま眠ろうか。でも、戦争が終わらなかったらどうする?


「ハナちゃん!!」


そんなとき、彼女を呼ぶ声があった。


(そうか……。任せてみようかな。守ってやる、って思ってたけど、守ってもらうしかない。あいつに……誠に勇者の使命を託そう)


華は駆け寄る誠に、微笑みを浮かべた。

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 華ちゃんかっこよ…!壮絶な死闘でしたね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ