【奇妙な攻撃による分断】
何の変哲もない扉から、僕たちは城内へ侵入した。中は広い空間が広がっていて、壁も天井も美しい装飾が施された、いかにも城らしい雰囲気が漂っている。
「嫌に静かだな」
ハナちゃんの呟きが広い空間に響く。外では勇者と強化兵の激しい戦いが起こっているはずなのに、確かに不気味な静かだ。
ハナちゃん、皇、狭田、岩豪とセレッソ。
それぞれが自信の興味を誘う方へ向かい、進むべき道を探していたが……。
「あれ?」
僕は気付いた。ふと城内に入った扉の方を見たら……
それが消えていたのだ。
「扉が消えた?」
全員が扉の方を見た。
「おいおいおい」
狭田が声を上げる。
「悪い予感しかせえへんぞ、これは!」
確かにその通りだ。
これ、某有名な漫画ならスタ〇ド攻撃を疑うところだぞ。
実際、僕以外のみんながお互いをカバーするように、別々の方向を見て周囲を警戒するが……敵らしい敵は見当たらない。
僕も右左と視線を巡らせ、何か怪しいものがないか確認したが、壁の高い位置にモニターがあることに気付いた。
そして、そのモニターに何者かが映し出される。いや、あれは……。
「イワンだ」
最初に気付いたのは狭田だ。
全員の視線がモニターに集まったところで、イワンが微笑みを浮かべた。
『勇者の皆、ワクソーム城へようこそ。私はイワン・ソロヴィエフ。アッシアの首相だ』
冷たい微笑み。
そこに感情がこもっているとは思えなかった。
『狭田慶次。綿谷華。岩豪鉄次……君は戦士だったな。そして、皇颯人。やはり生きていたか。オクトのトップクラスの若い勇者たちが、この部屋に踏み込んでくれたこと、非常に嬉しく思うよ』
あれ、イワンのやつ……僕のことスルーしてない?
もしかして、僕のこと知らないの?
『何よりも、皇颯斗を捕えられたことは大収穫だ。色々と話したいことはあるが、私も軍の指揮で忙しいので、これで失礼するよ。それでは諸君、地獄を楽しんでくれたまえ』
モニターの映像が切れると、後方からセレッソの叫び声が聞こえた。
「罠だ! 全員、こっちに集まれ!」
僕の前にいた皇が振り返り、隣にいるハナちゃんも振り返る。セレッソが何を見たのか。それを確認するつもりだったのに……視界の隅で何かが動いたことに気付く。
「なんだ!?」
ハナちゃんと僕の間、何かが天井に向かって伸び上がったみたいだったけど……。
「光の壁?」
僕の前に立っていた皇が呟く。確かに、それは僕とハナちゃんの間を遮る壁みたいだ。
「ハナちゃん!」
光の向こう側、ハナちゃんの姿は見える。が、こちらの声は届いていないらしい。その証拠に、ハナちゃんも何か喋っているみたいだけど、何を言っているのかは聞こえない。
「分断されたみたいだ」
セレッソたちの方を見ると、同じように光の壁によって遮られている。
ただ、セレッソは岩豪と狭田が一緒だ。
それを理解した途端、ぞっと嫌な予感が爪先から這い上がるようにして、頭の上まで抜けて行った。
「ハナちゃんだけ一人じゃないか……!!」
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