【集結する戦力】
「誠! 私たちがワクソーム城に一番乗りするぞ!」
ハナちゃんがペースを上げて、さらに前へ駆け出す。
「ハナちゃん、張り切ってるね!」
「そうじゃない。あっちを見ろ」
ハナちゃんが指をさす方向には、勢いよくワクソーム城へ進む団体があった。勇者でもないのに、敵本拠地へ真っ先に突っ込んで行く、って……何者なんだ?
「あいつらは禁断術封印機関の執行官たちだ」
「それって、ギル様の??」
確かフィオナの兄、ギル様がオクト支部の代表をやっている、って組織だったはず。僕とブレイブアーマーを争って戦った千冬が所属している組織だ。
「それだ。封印機関のやつらが勇者より戦果を挙げたら、ギルバート様が幅を利かせることになる。フィオナ様のためにも、あいつらだけには負けられないってわけだ」
「そういう事情もあるんだね!」
そんな話をしている間に、アッシア兵の大軍が禁断術封印機関の進行を阻もうとした。しかし、執行官たちはどんどんアッシア兵を屠っていく。
「凄い突破力……」
「封印技術を相手にするような組織だからな。勇者に並ぶ戦闘力があって当然なんだよ」
なるほど、確かに千冬も強かったし、尋常じゃないやつらの集まりなんだろうな……。
「勇者部隊、迂回! 迂回!」
前の方から合図が聞こえてきた。
真っ直ぐワクソーム城へ走っていた勇者たちの列が右の方へ逸れて行く。
「正面にアッシア兵の大軍が出たみたいだ」
岩豪が言った通り、前方に大軍が展開されていくのが見えた。あれは大軍というか、海ではないか。人の海が押し寄せてくるみたいだ。
「あれだけの敵を相手にして……ワクソーム城にたどり着けるの??」
「私たちの相手は大軍じゃない! あくまで城の中にいるイワンだけだ!」
ハナちゃんはそう言うけど、これじゃあ迂回しても、あの海に遮られるだけじゃないか??
「援軍! アニアルークの旧政府軍だ!」
しかし、どこからか声が上がった。
援軍ってことは……誰かが助けにきてくれたってことか!
戦場を見渡すと、援軍がどこにいるのか、すぐに分かった。ワクソーム城の前に展開された、アッシア兵の海に勝らずとも劣らない、巨大な人海が現れていた。そして、それがアッシア軍とぶつかり合う。
これなら、ワクソーム城まで無事にたどり着けるかも!
でも、援軍に来てくれたアニアルークの旧政府軍って……
アリサさんの故郷の人たち??
そう言えば、フィオナが何度も連絡を取り合っていたみたいだけど、この時のためだったのか!
「アニアルークの旧政府軍…、あれだけの数を集められるなんて」
ハナちゃんの疑問に、岩豪が補足する。
「噂によると、アキレムが裏で支援しているそうだ。たぶん、アキレムから派遣された兵士も混じっているんじゃないか?」
「なるほど。世界最大の国がバックアップしている、って言うなら……この戦い、勝敗は決まったようなものだな」
ハナちゃんの言う通りで、アッシア軍はアニアルークの旧政府軍に呑み込まれるように、どんどん押されて行く。これなら、ワクソーム城に突入できそうだ。
「よし! 誠、鉄次! 正面から突っ込むぞ!」
「うん!」
「おう!」
ハナちゃんと岩豪がワクソーム城へ向かって駆け出す。僕も必死に後を追うのだった。
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