【次から次へと危機的状況】
「フィオナ、離れろ!」
何が起こっているのか。それは分からないが、僕はフィオナを引き寄せてから、できるだけブライアから離れる。
すると、皇の周辺に異常が。
ぐにゃり、と渦のように空間が歪んだように見える。
大きさはバスケットボールくらいだろうか。しかも、それは皇を囲うようにして複数発生しているではないか。
ブライアはあの捩じれに触れた瞬間、腕や首がねじ曲がったように見えた。だとしたら……。
「皇、何かが変だ。避けろ!」
僕の警告を聞いたのか、既に察知していたのか、皇はブライアを解放すると、歪みに触れないよう、その場から離脱する。そして、僕の傍らに立つと呟くように言うのだった。
「念のため、ブレイブチェンジしておいた方がいい。何が起こるか、分からない」
「最初からそのつもりだ。変身!」
再びブレイブアーマーを装着し、謎の敵に備えるが……。
「憐れなブライア。簡単にヴァジュラを奪われてしまうとは」
敵の声は笑っていた。
この感じは、かなりの悪党だ。
たぶん、ブライアを仲間に引き入れたけど、用無しと判断して切り捨てたのだろう。こういうやつが一番の悪だって、どんなアニメや漫画でも、パターンは決まっているからな。
「それにしても」
謎の敵は言う。
「今の攻撃も躱すとは、噂以上ですね。皇颯斗、貴方は本当に危険な人物のようです。ウソの葬儀まで行ったようですが、ここで本当に死んでもらいましょう」
僕たちの周りの空間が歪んでいく。
先程と同じバスケットボールくらいの渦がいくつも発生して、僕たちを囲みだしたのだ。
「やばい!」
僕はフィオナを抱きかかえ、その場から離脱する。だが、移動したその先に、また空間の歪みが!
「あぶねっ!」
何とか身を低くして、その歪みを躱すが、今度は足元に。
「マジかよ!」
僕は跳躍してそれをやり過ごすつもりが……。空中にも歪みが発生し、僕とフィオナを囲い込もうとしていた。
やばいぞ、空中では躱せない!!
「こっちに背中を向けるんだ」
「え?」
皇の声。
その方向を見ると、僕にブレイブバスターの銃口を向ける皇の姿が!
「本気か!?」
本気に決まっている!
僕はフィオナを抱きしめつつ、皇の方に背を向けると、すぐに背中に衝撃があり、吹き飛ばされた。
落下の衝撃からフィオナを守るが、ブレイブバスターを受けた背中を床に叩きつけてしまう。
「いってぇ……」
マジで痛いんだけど……。
さっき、あいつのブレイブバスター壊しちゃったこと謝ろうと思ってたけど、もう一つ持っていたのか。謝らなくてよかった。まぁ、助けられたのは確かなんだけど。
フィオナの無事を確認しつつ立ち上がると、すぐ隣に皇がいた。
「皇、このままじゃまずいぞ。何か考えはあるのか?」
正直、フィオナを守るので精一杯だ。この天才野郎に頼るしかない。皇は言う。
「たぶん、敵は空間そのものを捩じ曲げる力を使っている、と思う」
「空間そのものを……? 非現実的すぎるだろ!」
って、異世界からやってきた僕が今さらそんなこと言えるわけないか。
「禁断術を使っているとしたら、あり得る。それに敵が見えない理由も、空間を捩じ曲げているとしたら、説明が付く」
「なるほど」
よく分からないけど、ここは話を合わせておこう。
「で、倒せるのか? できないのか?」
「もう少し観察する時間があれば……もしくは」
皇にしては自信のない返事に聞こえるが、何も理解していない僕に比べたら、もちろん可能性はある。
「じゃあ、僕が囮になって攻撃を凌げば、敵の場所が分かるのか?」
「断言はできないけど、やってみせる」
だったら、ここは僕が根性を見せるしかない。けど、そこら中にある、空間の歪みを見ると……
いや、怖過ぎる。
でもなぁ、それっぽいこと言っておいて、何もしないで引き下がるわけにもいかないし。
どうしよう……。
そんな葛藤に頭を抱えそうになった、その瞬間だった。不快な警告音が鳴り響き、部屋中で赤いライトが点滅し始めた。
『侵入者あり、侵入者あり。兵士たちはただちにセッションSへ。繰り返す。兵士たちはセッションSへ』
どうやら僕たちの潜入がバレてしまったらしい。きっと、ここに敵がたくさん押し寄せてくるに違いない。
……どうすればいいんだ??
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