【ダーク・クノイチX】
「ぬぅおりゃあああぁぁぁーーー! 当たれ当たれぇぇぇーーー!」
皇に渡されたブレイブバスターのトリガーを何度も引く。壁から出てくるレーザー砲を何台破壊できたのか、正直分からない。ただ、必死に撃ちまくるだけだった。
「あの、誠さま。皇さんと姫様が向こう側に到着したようです」
「はぁはぁ……。え、本当?」
リリさんに言われるまで、まったく気付かなかったが、通路の奥で皇が抱きかかえていたフィオナを下ろしているところだった。皇のやつ、いつの間にフィオナのことをお姫様抱っこしていたんだ……。
「禁断術はすべて破壊されたのでしょうか?」
ブレイブバスターによって崩れた壁や天井を見ながらリリさんが言う。
「お兄ちゃんがいっぱいビーム撃ったから、もう大丈夫じゃない? 凄かったね、誠お兄ちゃん!」
アオイちゃんには僕が活躍していたように見えたみたいだけど、めちゃくちゃ外しまくって連射してただけなんだよな……。
「試しに私が進んでみましょうか?」
リリさんが通路を進もうとしたので、思わず彼女の肩を掴んだ。
「いやいや、危ないから! 僕が行きます。変身!」
これ以上、リリさんに気を使わせるわけにはいかない。早々に変身して、通路を進んで見せよう、と思ったが……
やっぱ、ちょっと怖い。
「お兄ちゃん、気を付けてね! 頑張れー!」
応援してくれるアオイちゃんに手を挙げて応える……が、なかなかのプレッシャーだ。
皆に見守られている中、恐る恐る一歩踏み出してみる。
天井! 真後ろ!
と素早く安全確認を行うが何も起こらなかった。
さらにもう一歩進んでみるが、レーザー砲が天井や壁から飛び出すことはない。
「なーんだ! 全部撃ち落せたんだな。ゲーセンで積んだ経験がこんなところで役に立つなんてね!」
気が楽になりスキップで通路を進んでやろうと思ったが……。
「誠さま! 後ろ!」
リリさんの叫び声に振り返ると、天井から飛び出すレーザー砲の姿が!
顔面のすぐ横を閃光が走る。
幸運なことに外れたようだ。だが、あのレーザー砲は一発で終わりじゃない。
二発目を撃たれる前に、撃ち落してやる!とブレイブバスターを構えたが――!
「うわっ!」
一瞬の輝きの後、ブレイブバスターが溶けたチョコレートみたいに形が崩れていた。
先に撃たれた?? や
ばい、続けてくるぞ!?
反射的に顔面を守ると、右腕に激痛が。レーザー砲に撃ち抜かれた……わけじゃない。
ブレイブアーマーが何とか守ってくれているが、激痛を感じる。これじゃあ、ブレイブアーマーも数秒と持たないぞ!
どうする!?
「誠!」
「誠さま!」
フィオナとリリさんの声に挟まれる。が、レーザー砲の圧力が強すぎて、動けない!
このままだとブレイブアーマーが破壊され、右腕どころか頭も貫かれてしまう。けど、どうすればいいんだ??
パニック状態の僕だったが、リリさんの横から何かが飛び出す瞬間を見た。いや、それは……
副操縦士さんだ。
副操縦士さんはレーザー砲へ駆け寄ると、天井スレスレまで跳躍し、綺麗な回し蹴りを。レーザー砲は弾けるように天井から飛び出たアームから切り離され、床に転がった。
着地する副操縦士さん。
何で一緒に来たのか、ずっと謎だったけど……
もしかして、凄い人??
「……副操縦士さん。貴方は何者なんですか??」
思わず、僕は声を上げる。
立ち尽くす副操縦士さんだったが、肩がわずかに揺れ出した。
「ふっ、ふふふ……」
ん? 笑っている?
って言うか……この声、女の人じゃないか??
「何者かと問われたのならば、答えましょう。ええ、答えるしかありません」
副操縦士さんが深く被っていたヘルメットを取る。
「私の名は……!」
その素顔は……。あれ?
「私の名はダーク・クノイチX! オクトの平和を影から守る最強の女忍者ですわ!」
「なっ、ダーク・クノイチX……だって!?」
名乗る副操縦士さん。
ヘルメットを取って「正体明かしました」って感じを出しているけど、その下に目出し帽を被っていたら、素顔はまったく分からないじゃんか!
それに……。
「ダーク・クノイチXって、どういうこと?」
改めて疑問をぶつけてみたが……僕は瞬時に理解した。
「あっ、もしかして……ヒーローを影でバックアップする、ダークヒーロー的な??」
「……そう! それです!」
ダーク・クノイチXは答える。
「私たちは、オクト王家を百年もの間、影で支えてきたシノビの一族。与えられた任務の性質から、表立って動けず悔しい想いをしたこともありました。ええ、ありましたとも。しかし、今回はオクト最大の危機。フィオナ様を直接守るため、こうして光当たる場所へ出てきたわけです」
……か、かっこいいじゃないか!!
確かに素顔は分からないし、胡散臭いような気もするけれど……
そんなの関係ない。
だって、かっこいいもん!
「こんなかっこいい戦士がオクトにいたなんて! 何で早く教えてくれなかったんだよ、フィオナ」
思わずフィオナの方に駆け寄り、ダーク・クノイチXのかっこよさを訴える僕。だが、フィオナの方は頭痛を覚えたように顔をしかめた。
「あ、あのねぇ……」
「フィオナ様」
フィオナが何か主張しかけた瞬間、ダーク・クノイチXが割って入ってくる。
「私は王家に使えるシノビの一族、ダーク・クノイチXです。よろしいですね?」
フィオナは頬を引きつらせ、何か言いたげな表情を見せるが、結局はそれを吞み込んだようだ。そして、どこか諦めるように言う。
「はい、そうです。王家に使えるシノビの一族、ダーク・クノイチXさんです」
……あれ、言わされている?
気のせいだろうか。ダーク・クノイチXから圧のようなものが出ていたような……。
でも、圧が出ていたとしても、王女様のフィオナが屈するわけがないだろうし。やっぱり、ダーク・クノイチXが凄いってことか!
「さぁ、皆さん! こんなところで時間を無駄にしている暇はないはず。ええ、時間はないはずです。先に進みましょう」
「はい! よろしくお願いします、ダーク・クノイチXさん。あ、ちょっと長くて呼びにくいのでエックスさんでもいいですか?」
「問題ありません。呼び方なんて何でもオーケーです」
さすがは最強の女忍者。
心が広いぜ!
先を行くエックスさんの背を眺めていると、何だかデジャブに近い感覚が。
……誰かに似ている?
もしかして会ったことあるのかな?
どんなに考えてもエックスさんの正体と確信できる人物は思い浮かばなかったので、取り敢えずは後回しにすることにした。
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