【やってやる、の〇太くんみたいに!】
「誠さま、もう少しでヴァジュラの保管場所です」
大きな扉を前にして、リリさんが言った。
「ただ、この先に最後の難関が待ち構えています。ご注意を」
最後の難関ってなんだ??
隣のアオイちゃんが手を挙げる。
「アオイ、知ってるよー。ここ、凄い危ない通路なんだよね」
「どう危険なの?」
「知らない。危ないって言われてたから、アオイは近付いたことないし」
どんだけ危険なんだろう。
正直、進みたくないけど……振り返ってフィオナを見ると、彼女はただ頷くだけ。
いつものように、フィオナは覚悟が決まっているみたいだ。
重たい扉をリリさんがスライドすると、狭い通路が奥に続いていた。
「何もないね……」
アオイちゃんの言う通り、壁も天井も真っ白で何もない通路だ。だが、いかにも罠が待ち構えていそうな雰囲気がある。同じことを感じ取ったのか、フィオナが言う。
「リリ、この通路はどんな仕掛けがあるの?」
「この通路には動くものを自動で攻撃する、禁断術が仕掛けられています」
「禁断術?」
「はい。ブレイブバスターに似た兵器、と聞いています。ただ威力は段違いだと」
リリさんは懐からナイフを取り出した。武器の携帯は許されていないはずなのに……。
「すみません、護身のために敵兵から拝借しました」
いつの間に!
皇が倒したアッシア兵から取ったのかな??
「見ててください」
リリさんがナイフを通路の方へ放り投げる。
キーンッ、と音を立てナイフが床に落下した瞬間、天井から何かが飛び出した!
すると、ナイフが瞬時に消滅する。いや、床に銀色の小さい水だまりのようなものが……。
「ナイフ消えちゃったよ!!」
興奮気味のアオイちゃん。
確かに、僕もそう見えた。ナイフが溶けた、ってこと……だよな??
「もしかして、レーザービーム的な……?」
天井を見ると、アームが付いた監視カメラのようなものが引っ込んでいく姿が見えた。
なるほど。
スパイ映画とかで見たことあるぞ、こういう罠!
いや、カリ〇ストロの城だったかな……。
「通路内に動くものがあれば、このように禁断術で攻撃されます。天井だけでなく、壁や床にも無数に仕掛けられているため、回避は困難です」
「……なるほど」
フィオナは耳に装着した通信機に触れる。
「ニア、私たちの位置は分かる? 禁断術を使った罠が仕掛けられているのだけれど、貴方の方で止められない?」
しばしの沈黙。
だが、フィオナは少しだけ顔をしかめたあと「分かった」と言って通信を切ってしまった。
「ここだけネットワークから独立しているらしく、ニアも解除できないみたい。ここは、勇者二人に守ってもらいながら進むしかないわ」
「……ブレイブチェンジ」
唐突に、皇が変身する。
皇の白いブレイブアーマーは勇者の象徴と言えるようなカラーリングだ。
「どうするつもりだ?」
僕の質問に皇は振り返ることなく答える。
「これ以上、時間をかけるわけにはいかない。僕が姫様を守りながら進む」
そうか。一時間経ったらセキュリティも復活して、ハナちゃんたちもワクソーム城に攻め込むことになる。悠長にはしてられないんだ。
皇は天井に向かって手の平を伸ばす。
「ブレイブバスター」
そして、呟きに反応し、手の平に拳銃型の武器が現れた。
あれがブレイブバスター?
僕がイザール港の戦いで使ったブレイブバスターとは違って、かなり小型じゃないか。
「これ」
「え?」
皇がブレイブバスターを僕に手渡す。
「ブレイブアーマーならあの攻撃を受けても、数秒は耐えられるはず。僕が姫様を守りながら通路を進むから、君はこれを使って、天井から出てくる禁断術を破壊するんだ」
「わ、分かった……」
まさか皇の方から援護を頼まれるなんて、超プレッシャーじゃんか……。
でも、大丈夫。
ゲーセンのガンシューティングだってノーコンテニューでクリアしたことだってあるんだから!
「姫様、僕の後ろから離れないでください。絶対に守ります」
「皇颯斗、貴方を信じます」
見つめ合う二人。
なんだか、この潜入作戦のせいで、二人の距離が縮まってないか?
そんなことないよね??
「あの、誠さま」
リリさんが横から声をかけてくる。
「頑張ってください。誠さまならできます」
「あ、ありがとう」
なんだろう、気を使われたのかな。
って言うか、僕ってそんなに感情が顔に出てるの?
複雑な気持ちに戸惑っていると、アオイちゃんが僕の服を裾を引っ張った。
「誠お兄ちゃん、自信ないの? アオイも応援してるからね」
「アオイちゃんも、ありがとね……」
情けない……。
これからは、あまり弱気なところは見せないようにしよう……。
「姫様、行きます」
「はい」
皇が通路に向かって踏み出す。
一歩、二歩、三歩……。
ガタンッという音と同時に壁から、あの監視カメラみたいなものが飛び出してきた。
「皇、斜め後ろからくる!」
思わず叫ぶが、皇はそれよりも早く反応していた。素早くフィオナの後ろに回り込むと、盾のように覆いかぶさりながら伏せる。
瞬間的に見えた赤い光線。
それが皇の背中の上を通り過ぎた。
皇のやつ、躱したのか……?
あれだけ一瞬のことだったのに……??
「誠さま、撃って!」
リリさんの声。そうだ、驚いている暇はないんだ!
僕はブレイブバスターをかまえてトリガーを引く。銃口から光の弾丸が発射され、壁から出てきた禁断術兵器に吸い込まれるように進んでいったが――。
「は、外した……」
禁断術兵器はすぐに引っ込んでしまった。少しでも反応が遅れたら、破壊なんて絶対に無理じゃないか。
こんなに難易度が高いとは思ってなかったんですけど……!!
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