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【ぼっちを実感した瞬間って】

数分後、アインス博士から連絡があり、オクト城で保管されているはずのヴァジュラが偽物だったと判明した。リリさんはブライアの居場所についても話し始める。


「あの方は、ワクソーム城から少し離れた場所にある、地下施設にいるはずです。そして、ヴァジュラもそこに」


「正確な場所は?」


フィオナがノートパソコンの画面をリリさんに向ける。そこには、アッシアの中心であるワクソーム城の周辺地図が表示されているようだった。


「地図には載っていませんが、この辺りだと聞いています」


「……なるほど。私たちがワクソーム城を攻め入るとき、ここからヴァジュラで攻撃されたら全滅でしょうね」


「ぜ、全滅? そんなにやばい武器なのか?」


フィオナは僕に向かって頷くと、再びリリさんに質問する。


「なぜ、貴方はそれを知っているの?」


「最初からオクトを離れ、ここに移る予定だったのです。なので、私はこの施設の構造も、ある程度は聞いています」


それを聞いてフィオナは指先で顎に触れながら、何やら思考を巡らせているようだった。そして、何もない空間を睨みつけながら呟く。


「だとしたら、方法は一つか……」


「何か思いついたの?」


「後で話す。貴方も覚悟しておいて。あと、ここで聞いたことは誰にも話しちゃダメ。分かった?」


「どういうこと?」


困惑する僕を置いて、フィオナは取調室を出て行った。これから何が起こるんだ……?


「勇者様、お願いがあります」


僕が途方に暮れていると、リリさんが口を開いた。


「は、はい」


「恐らく、フィオナ様はヴァジュラの奪還のため、自らアッシアの地下施設へ出向くことになると思います」


「フィオナが自分で? なんでそんな危険なことを??」


「ヴァジュラはオクトの武器。オクト王家の遺伝子を持つ人間でなければ、触れることすらできせん。だから、持ち出すとしたらフィオナ様本人が触れる必要があります」


「じゃあ、フィオナのやつ……」


いやいや、危なすぎるだろう。

敵地のど真ん中じゃないか。


「だから、お願いがあります。私も一緒に……地下施設に連れて行ってください」


「えええ??」




それから、一時間後。

僕はフィオナに呼び出される。


指定した会議室の中に入ると、そこには皇の姿が……。


「な、なんでお前がいるんだよ」


てっきり、フィオナと二人きりで話すとばかり思っていたので、反射的にそんな言葉が出てしまった。しかし、皇は僕の声なんて聞こえていないみたいに、無視を決め込む。


……なんて嫌なやつなんだ。


皇から一番離れた椅子に座るが、会議室はそれほど広くはない。気まずい時間が流れたが、会議室の扉が開かれた。


「失礼します! って、あれ? 神崎くんに皇くんじゃないか」


「雨宮くん?? フィオナに呼び出されたの?」


「神崎くん、呼び捨てはダメだよ。王女様なんだよ、フィオナ様は」


雨宮くんは呆れながらも、僕の隣に座る。


「なんの会議なんだろう? もしかして、特殊任務? でも、皇くんが呼び出されるならまだしも、なんで僕たちなんだろう」


どうやら彼も状況を理解しているわけでないのか、困惑しているようだ。だが、さらに会議室に何者かが入ってくる。


「失礼します。……って、なんだお前らか」


ハナちゃんだ。

ハナちゃんも「なんの会議なんだ?」と言いながら、僕の正面に座った。


「失礼します! あ、誠さんに華さん」


次はニアだった。そして、彼女はハナちゃんの横に座る。


「よかったー、フィオナ様に呼び出されて凄い緊張していたんですけど、二人がいるなら安心ですー!」


それから五分ほど雑談が続いたが、皇だけ孤島のように少し離れたところに座っていたので、何だか気になってしまう。


たぶん今の皇の姿が、前の世界の僕が教室で一人ぽつんと座っていたときのことを思い出させるからだろう。


あれ、けっこうきついんだよな。皆が楽しそうに話しているのに、自分だけ一人で黙っている。まるで、存在を否定されているというか、認められていない感じ。


皇のことは気に食わないけど、放っておけるか……?


「す、皇。お前は何か知らないのか?」


勇気を出して、声をかけてみると、皇の無感情な視線が僕の方に向けられた。数秒の沈黙。


ま、まさか無視されるのか?

もしかして、声かけない方がよかったの?


な、なんだよ。頼むから何か言ってくれよ!


「集まっているわね」


しかし、僕は皇の声を聞くことはなかった。フィオナが会議室に入ってきたのだ。


皆が席を立ったので、僕も遅れて立ち上がる。フィオナは僕たちを見て、それから少し離れた場所にいる皇を見た。何を感じたのかは分からないが、フィオナは皇の近くに腰を下ろすと、皆に座るように言った。


「ここで話すことは他言無用です。いいですね? 万が一、ここで話したことがアッシア側に漏れてしまったら、オクトは滅びる。そのつもりでいてください」


フィオナは皆にヴァジュラのことを説明した。ブライアが持ち出し、今はアッシアの秘密基地に保管されていること。これを取り返さなければオクトは滅びてしまうことなど。フィオナの説明が終わって、最初に声を漏らしたのは雨宮くんだった。


「ヴァジュラって……おとぎ話に出てくる、あれですよね?」


「本当にあったんだな……」


ハナちゃんも雨宮くんと同じように驚いているようだったが、フィオナに質問する。


「女神戦争のときに使われた兵器がまだ動くのですか?」


「禁断術指定されているので、千年近く使われていませんが、ほぼ確実に動きます」


「おとぎ話通りの武器なら、何千何万の敵を焼き払う、ということですよね?」


「その通りです。なので、アッシアとの決戦の前に、必ず取り戻さなければなりません」


「あの、僕も質問です」


雨宮くんが手を上げる。


「ヴァジュラはオクト王家の人以外は触れられないって話ですよね? それが本当なら……」


「私が直接取りに行きます」


平然と答えるフィオナ。リリさんの言う通りだったのか……。


「そのため、護衛が必要となります。ただ、大軍を率いてその施設を攻めたら、ヴァジュラを使われてしまうでしょう」


フィオナの考えを最も早く察したのはニアだった。


「つまり、秘密基地に少人数で潜入して、ヴァジュラを取り返す。そのとき、フィオナ様を護衛するメンバーがここに集めらた、ということですか?」


「少し違います」


では、なぜこのメンバーが?

そんな空気が流れる中、フィオナが皇を見た。


「この作戦を成功させるため、皇颯斗に死んでもらいます」


会議室に完全な沈黙が訪れる。


皇に死んでもらう?

この戦いに参加している勇者の中で、最強と言える男なのに?


「ど、どういうことですか?」


最初に疑問を言葉にしたのは……ハナちゃんだった。

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