表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

171/352

【女神様の嫌がらせ】

「ゆ、揺れが激しくなっている……」


瀬礼朱は崩壊する洞窟を目の前に、ただ祈った。


「お願いです、本物の女神様! あの二人を助けて!」


ドドンッ、という音と共に、洞窟の入り口となる穴が崩壊し始める。いや、瀬礼朱の足元すら崩れようとしていた。


「い、いや……!」


悲鳴を上げる瀬礼朱。

崩壊する穴、そのわずかな隙間から、何かが飛び出した。


「もしかして……! わあっ!」


地面が崩れ、瀬礼朱は足場を失ったことに気付く。暗闇の中に吸い込まれるような感覚。


やばい、今度は私が洞窟に――。


と思った瞬間だった。


体が突然軽くなる。

思わず閉じた目を、恐る恐る開いてみると、そこには三枝木の姿があった。


「ああ、瀬礼朱さん。無事で何よりです」


「み、三枝木さん!……ひゃっ!」


瀬礼朱は再び自分の足場がないことに気付く。いや、体が宙に浮いていた。


「何とか間に合ったな。ギリギリセーフ、というやつだ」


頭上から聞こえる声。

見上げると、そこにはピンク色の髪をなびかせるセレッソの姿があった。


どうやら、彼女の背にある大きな翼の力によって、空を飛んでいるらしい。そして、自分と三枝木は彼女に首根っこを持たれて、何とか浮いている状態のようだ。


「こ、怖いです! お、下ろしてください!」


高所恐怖症、というわけではないが、今まで見たことのない景色に、瀬礼朱は怯える。だが、セレッソは意地悪な笑みを浮かべるのだった。


「ほう。では、助けてください女神セレッソ様、と言ってみろ」


「な、ななな……なんてことを!」


「私は慈悲深い女神だからな。可愛い信仰者のお願いなら、聞いてやらんでもない。今すぐ、丁重に優しく下ろしてやるぞ。どうする?」


「わ、わ、私は……!」


「ほら、認めろ。私が女神様だぞ。お前が信じる女神様だ。ほらほら、どうした?」


「あ、あああ……!」


パニック状態の瀬礼朱。

隣の三枝木が苦笑いを浮かべた。


「あの、セレッソ様。私が言うので、下ろしていただけないでしょうか?」


「宗次、邪魔をするな。いや甘やかすな。私は信仰者に試練を与えているのだ。より強い信仰心を育てるためにな。ふふっ、ふははは! あはっはははーーー!」


イロモア上空に、邪悪な女神の高笑いが響くのだった。




「し、死ぬかと思いました」


顔面蒼白の瀬礼朱。

それを見下ろすセレッソは呆れ顔だ。


「本当に強情な女だな。少し折れるだけで、下ろしてやると言ったのに」


三人の空中飛行は、無駄に五分ほど続いた。無駄に上昇したり、無駄に揺らされたり、瀬礼朱の恐怖心は無駄に煽られ続けたが、最終的には三枝木が懇願して、着陸に至ったのである。


「セレッソ様、本当にありがとうございました。貴方がいなければ、私たちは何度命を落としたことやら」


改めて頭を下げる三枝木。


「わ、私にも礼を言わせてください」


青い顔で瀬礼朱は言う。


「貴方が女神様かどうかは別として、助けられたことは確かです。ありがとうございました」


「気にするな、と言っただろう。私たちは協力関係にあり、助け合う必要がある。違うか?」


「そうでしたね」


三枝木とセレッソは微笑みを交わし合う。が、それを見た瀬礼朱は何だか落ち着かない気持ちになった。


「それより」


瀬礼朱は二人の視線の間に割って入る。


「私たちは、フィオナ様から命令を受けたのですよね? 貴方と協力してイロモアを開放する、と」


「そうだな」


「具体的には、何をすればいいのですか?」


「お前たちの作戦が上手くいくよう、最低限の力でバックアップしてやる。あくまで、オクトの兵士によるものと見える程度に、だ。そして、すべての攻撃拠点を破壊すれば、アッシアはオクトから撤退することになるだろう」


「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ