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――― エピローグ ―――

時間は、イザール基地陥落から、三十分後にさかのぼる。


煙が上がるイザール基地から少し離れた場所。荒れ地を歩く男女の姿があった。


二人が歩いた道は、男が流す血で赤く染まっていたが、それも少しずつ薄くなっている。


「これ、からは……」


男が口を開いた。

だが、そこに生気はほとんどない。それは枯れ行く花の儚さを感じさせた。


「なに?」


女が聞くと、男はふと笑みを浮かべる。


「これからは、二人で……静かに暮ら、そう。どこか、世界の隅みたいな場所で、穏やか、な、暮らしを……」


「うん、そうしよう。きっと楽しいよ。でも、まずは怪我を治療しないとね」


「そう、だな」


女に支えられていた男の巨躯が崩れる。女は小さく悲鳴を上げたが、男は大の字に倒れてしまった。


「ごめん。大丈夫?」


「大丈夫だ……」


再び男を立たせようとするが、女は反応の鈍さに気付く。呼吸が限りなく浅い。


「アリーサ」


「なに?」


これが男にとって、最後の言葉になると、分かった。


「今まで、ありがとう」


「別に、そんな言葉、いらないよ」


「……幸せを、与えることができなくて、すまなかった」


「そんなこと――」


男は事切れていた。

女は男の傍らに座り込み、涙を流す。


「そんなこと、ないよ。セルゲイに会えて、幸せだった! 見れないもの、たくさん見れたよ! 苦しいこともあったけど、楽しかった! 生きてるって実感できたよ! だから……」


女は両手で顔を覆う。


「だから、ありがとう」


そんな二人を遠くから見守る青年の姿が。


彼は状況を理解するが、女にどんな言葉をかけるべきか、分からなかった。それが決まるまで、青年は立ち尽くしたが、ついに決心する。


「もう一度、俺はやるんだ。今度こそ、俺が」


青年は自分を鼓舞すると、女の方へ歩き出す。しばらくして、女と青年は男の屍を埋めると、荒れ地を歩き出した。


その後、女と青年がどうなったのか。それは誰も知らない。

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