【新装備でテンション爆上げ】
「誠、こんなところにいたのか」
勇者たちが何やら整列を始める中、どうしたものかと、ただ様子を眺めていると、ハナちゃんが声をかけてくれた。
「フィオナ様から、何か特別な話があったのか?」
唐突の質問に、思わず口を開け閉めする。
「えっと……これからもよろしく的なことは、言われた」
「ふーん」
これは決して嘘ではない。
そんなようなこと、言われたもん。
「お前、割と期待されているんだな。よかったじゃないか」
「うん。そうかも。うんうん」
不自然に何度も頷く僕だったが、ハナちゃんはそれに触れることなく、話題は戦いのことに移った。
「お前も戦いに出るってことだよな? 配置は決まっているのか?」
「配置? フィオナ様には甲板で待機していろ、って言われたけれど」
「そうか。じゃあ、前で戦うことはなさそうだな」
てっきり、ハナちゃんも一緒に甲板で待機だと思っていたが、どうやら違うらしい。
「ハナちゃんはどこで戦うの?」
「私は中央突破の役を任命されている。皇も狭田ってやつも一緒だ」
「それって……危なくないかな?」
「名誉なことだろ。私がアルバロノドフとお前を捕虜にした女をぶっ倒してやるから、大人しく見てろよ」
「いやいや! 無理しなくて大丈夫だからね!」
本当にハナちゃんとアリサさんが戦うことになったら、どうしよう。それよりも先に、アリサさんを見つけないと。
一人、頭をぐるぐるさせていると、拡声器を通した声が聞こえてきた。
「中央部隊はただちに整列。繰り返す、中央部隊はただちに整列」
ハナちゃんはそれを耳にすると、僕の方を見て頷く。
「じゃあ、私は行くからな」
「き、気を付けてね」
ハナちゃんはわずかに微笑む。
「私のことが心配なら、もしものときはお前が助けに来いよ」
「そうだね。絶対に行く」
ハナちゃんが立ち去ってしまうと、今度はニアに声をかけられた。
「いたいた! 誠さーん」
ニアがパソコンを抱えながら、僕の方へ駆けてくるが、その手には汚れた布切れとブレイブシフトが。
「あ、僕のブレイブシフト!」
そうだ、ニアに預けたのを忘れていた!
「そうですよ、誠さん! そのまま戦いに出てしまったんじゃないかって、必死に探したんですから」
ニアからブレイブシフトを受け取る。
「ありがとう、助かったよ」
「あの、ブレイブナックルを一回使ったみたいですが、大丈夫でしたか?」
「大丈夫って、何が?」
「プロトタイプのブレイブアーマーでは考えられないようなプラーナ消費があったんです。あんなの使ったら、普通は倒れているはずなんですが……」
なんのことだろう。
確かに、ブレイブナックルはとんでもない威力を発揮したけど、特に僕の具合が悪くなるようなことはなかったはず。
「別に、平気だったよ?」
「えええ? じゃあ、ブレイブシフトのデータに問題があったのかな? うううん……まぁ、それは今度調査するとして。誠さん、例のやつ準備しておきましたよ!」
「例のやつって……ブレイブキック??」
ニアは笑顔で頷く。
「はい。プラーナを脚部に集中すれば、ブレイブナックルと同じような強力な一撃を放てます。これで、強化兵をやっつけてくださいね!」
「さすが天才博士の一番弟子! 仕事が早いなぁ!」
だが、これだけではないらしく、ニアは得意げに鼻を鳴らした。
「誠さんが喜びそうなものが、まだまだありますよ。まずはこれ!」
ニアは先ほどから手にしていた布切れを僕に差し出す。どう見ても、倉庫の隅で埃をかぶっていた薄汚い布だが……。
「こんなぼろぼろの布、何に使うの?」
「これは、こう使います!」
とニアはぼろ布を被ると、顔だけ覗かせた。それはまるで……。
「マント?」
「そう、対攻撃魔法用防御装備です」
対攻撃魔法用?
どういうこと??
「誠さんのブレイブアーマーはプロトタイプなので、他の方に比べると防御力が低く、特に魔法攻撃に関しては、ダメージが大きくなってしまいます。しかし、このマントがあれば、魔法攻撃を受けても大丈夫!」
「え、ほんと??」
「はい! ただし、移動中にガラクタを寄せ集めて作った急造装備です。三回は魔法を防ぎますが、それ以上はただの布。あと強力な魔法の前でも、ただの布なので、注意してくださいね」
「……ニア」
僕は腕を組んで、こみ上げる気持ちを抑え込もうとしたが、我慢の限界だった。
「これ、超かっこいい装備じゃん!!」
やはり、天才アインス博士の弟子だ!
ヒーローとマントの相性をよく理解しているじゃないか。さらに言えば、三回のみ有効っていう儚さもかっこいい!
「誠さんならそう言うと思ってましたよーーー! さらに、こんなものもありますよ!」
次にニアが取り出したのは、両手で抱えて持つような銃だった。
「ライフル銃?」
「船の中に放置されていた旧式のブレイブバスターです! 何世代も前の旧式を修理して手を加えただけなので、威力は低めですが、強化兵の目をくらます程度には使えるはずです。こっちは五回まで使用可能なので、ここぞというときに使ってください」
じゃあ、強化兵が相手なら、これを使っても人は死なないってことか。できれば、殺したくはないし、僕にはぴったりな武器かもしれない。
「十分だよ。ありがとう!」
「まだまだ、あります。これ、見てください!」
ニアはマントを脱ぐと、背中を見せた。そこには小さめのランドセルのような物体が。
「それは?」
「小型のブースターユニットです!」
「もしかして……空を飛ぶの??」
「うっ……。さすがに、そこまでの機能は用意できませんでしたが、これがあれば五分間は超高速で移動できます。単純な直進スピードなら、新型のブレイブアーマーよりも速く移動可能なんです!」
「おおお!!」
五分だけなら超スピードで移動。
敵をかく乱できる!
アニメで見たことあるぜ。
これを使って、味方のピンチに駆けつけろってことだな!
興奮気味の僕にニアが補足する。
「でも、これもガラクタの寄せ集めですから、たった五分ですからね。それ以降は、ただの重りでしかないので、すぐに捨ててください」
「ありがとう、ニア! 本当に天才だよ!」
「任せてください。えへへへへーーーっ!」
新しい必殺技に新しい装備。
これなら……アリサさんを助けられるかもしれない。
アリサさん、待っててくださいね!
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