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【必殺技と言ったらキックでしょ】

「あー! 誠さん、無事でよかったです!」


カザモ基地に到着し、最初に僕を迎えてくれたのは、意外にも知った人物だった。


ノートパソコンを抱えた彼女の名はニア。オクトの頭脳とも言われるアインス博士の一番弟子だ。どうやら、超ヘリコプターで一足先に到着していたらしい。


「高速鉄道に向かって誠さんを射出したとき、少しだけ計算間違っていたので、もう死んじゃったと思いましたよぉ」


半泣きでとんでもない事実を明かすニア。あのとき、完璧にかっこよく登場したつもりだったけど、


下手したら死んでたのか……。


「う、うん。ニアのおかげで諸々上手くいったから、大丈夫……。それより、どうしてここに? 城に帰らないの?」


「そのつもりだったんですが……誠さんのブレイブシフトに入れたプログラムのことが気になったので、私も残ることにしました!」


僕が持っている勇者の証、ブレイブシフトにはニアが作った特別なプログラムが入っている。そのプログラムが完成すれば、勇者たちはプラーナの扱いが楽になるらしいのだが……。


「もし、誠さんが死んじゃっても、あれだけは持ち帰らないと……」


ニアの呟きを聞く限り、とても大事なものらしい。


「なので、ブレイブアーマーの調整はもちろん、誠さんをサポートさせていただきますね」


「それは助かるよ。よろしくね!」


思わず彼女の手を取り、ぶんぶんと音を立てて握手してしまう。


「あ、そうだ。ブレイブナックル、使ってみたんだけどさ」


「本当ですか? 無事に動きました? 威力はどうでした?」


「ばっちり! 凄い威力で驚いたよ」


「そうなんですか?」


なぜか釈然としない、といった様子で首をかしげるニア。が、それよりも気になることがあるらしく、明るい表情に戻った。


「ぜひ、あとでデータを取らせてください!」


「もちろん! あ、それとお願いがあるんだけどさ」


「なんでしょう?」


「どうもブレイブアーマー用の武器があるらしいじゃん。ブレイブソードとかブレイブドリルとか! 僕も使ってみたいんだけど、何とかできないかな?」


「それは無理ですね」


返答が早い!


「なんで?? 僕も必殺技のバリエーション増やしたいよ!」


「気持ちは分かりますが、誠さんのブレイブアーマーは、プロトタイプなので。現在、運用されている装備とは規格が合わないんですよ」


そういうことか……。

プロトタイプでも変身できるならいいや、って思ってたけど、かっこいい武器が使えるなら新型の方がよかったな、と思ってしまうのは贅沢だろうか。


「そうだ、ブレイブナックルがあるなら、ブレイブキックは使えないの?」


「キックですか? そうですね……ブレイブナックルのキックバージョンということでしたら、私の方で追加できると思います!」


「本当?? ぜひお願いしたい!」


「任せてください! ……でも、どうしてキックなんですか?」


それは僕の得意技だから、ということもある。ランキング戦のとき、競り合う瞬間はキックで何とかしてきたんだから。


でも、本当の理由はそれではない……。


「変身ヒーローの必殺技は、キックって決まっているんだよ」


ヒーローたちのかっこいい必殺技の数々を思い出し、思わずニヤ二ヤしてしまう僕に対し、ニアは首を傾げたが、最終的には頷いてくれた。


「よく分かりませんが、分かりました! では、この戦いが落ち着いたら、ブレイブシフトを貸してください。それまでには、ブレイブキックを使用できるよう、ブログラムを組んでおきますね!」


「うん、ありがとう!」


ニア、なんて優秀で頼りになる子なんだ!


ほんと、ニアがついてきてくれるなら、心強い。


「……あ、そういえばセレッソは?」


興奮が少し落ち着いたところで、僕はあいつのことを思い出した。


「さっき、フィオナ様と一緒に司令室に向かいましたよ」


そう言われてみると、さっきまで一緒にいたはずの人たちがいない。みんな僕のことなんて気にかけず、先に行ってしまったようだ。


「すみません、私が声をかけたせいで……」


「いや、良いんだよ……」


悲しい気持ちではあるが、仕方がない。それに声をかけてくれたニアを無視することなんて、できないじゃないか。


「それより、司令室ってどっち?」


「たぶん、あっちだと思います!」


というわけで、ニアに案内してもらい、司令室の方へ向かった。

「新しい必殺技も見たい!」

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