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【お前は何を言っているんだ?】

あまりに激しい光で、何が起こったか少しの間、理解できなかったが……


それが収まって、僕はその光景に驚くのだった。


リリさんにパンチを放つとき、おおまかな僕の位置は車両先頭だったが、彼女の体は車両後方の扉に打ち付けられていた。いや、これでは扉に(はりつけ)になっているみたいだ。


つまり、彼女の体が車両一本分吹っ飛んで、それでも勢いが余っていた、ということになる。


「や、やばくないか?」


しかも、扉の歪みっぷりが、ブレイブナックルの威力を物語っている。


……これ、リリさん大丈夫か?


驚きに何も考えられず、ノームド化したリリさんを見ていると、彼女が変化したときと同じように、蒸気らしきものが体から発生した。そして、それが晴れると元のメイド姿のリリさんが。


『目標の無害化を確認』


サポートの声で、ぼんやりとしていた状態から戻ってくる。


「へ、変身解除!」


『解除はブレイブシフトへ流れるプラーナを切断することで行われます』


「分かんないから何とかして!」


『音声操作による解除でよろしいでしょうか』


「うん。それそれ! それでお願いします!」


かすかな光が僕を包み、体を覆っていたブレイブアーマーが綺麗さっぱり消えた。


「す、凄いな……」


……と、感心している暇はない!


僕はリリさんの方へ駆け寄る。

リリさんは意識を失っているようだが、ちゃんと息をしているようだった。良かった、生きている。


「貴方、これ……どういうこと?」


気付くと、後ろにフィオナが立っていた。


「どういうことって、フィオナを助けにきたんだよ。暗殺事件の黒幕はブライアだって、セレッソとアインス博士が暴いてくれたんだぞ。あ、フィオナが指示を出してくれていたんだっけ? いやー、助かったよ、ほんと」


「そ、そうじゃなくて。今の一撃のことよ。プロトタイプでこの威力って……聞いたことないけど」


そんなことを言われても……。


「そうなの? もしかしたら、ニアが特別な何かを仕込んでくれたんじゃない?」


「……そうなのかしら」


「そんなことより……」


僕は溜め息を吐いてから、フィオナの方に向いた。


「怪我は? 何かされなかったか?」


「え? ああ……私は大丈夫。大丈夫です」


「そっか。よかった。――ハナちゃん!」


僕は意識を失ったままのハナちゃんの方へ駆け寄る。


「大丈夫かな? このまま目覚めない何てこと、ないよね?」


「魔法で治療したから、すぐ目覚めると思うけど」


「本当? よかったぁぁぁ……」


ほっとする僕の後ろで、フィオナが何かつぶやいた。


「ありがと」

「え?」


「……何でもない。次はもう少し早く来なさいよ。貴方は、私の勇者なんだから」


「いやいや、けっこう大変だったんだから」


そうだよ、大変だったんだ。牢屋に入れられて、銃殺されそうになるし、プラーナのコントロールはぜんぜんできないし、ヘリコプターから新幹線に撃ち込まれるし……


あれ?

いま、あいつ何て言った?


それから、勇者たちを何名か呼んで、ブライアとリリさんを拘束した。ハナちゃんも無事目を覚まし、この事件は解決に向かっているようだった。


「お兄様、この件について……何か言うことはありますか?」


「誤解だよ、フィオナ。私は何も知らない。突然、リリが君の護衛を襲ったんだ」


「……はぁ?」


僕の心の底から、超純粋な「はぁ?」が出てきた。今にも詰め寄ろうとする僕だったが、それをフィオナが手の平を向けて制止した。


「オクト城では、この新人勇者が襲われています。貴方の指示と言った音声データもありますが?」


「確認してみてくれ。私の指示だと明確に言っているのかな?」


フィオナが確認してみると、ブライアの指示だと明確に言っているところはなかった。


「私の使用人が錯乱してしまったんだよ。戦争が始まるから、二人とも強いストレスを感じていたのだろうね」


こ、こいつ……本気か?


「ちょっと待って」


今度はハナちゃんが証言する。


「貴方はフィオナ様を襲おうとする使用人を止めませんでしたよね? それどころか、私を魔法で攻撃したではありませんか!」


ブライアは首を横に振る。


「私はまずリリの話を聞かなければ、と思っただけだ。それなのに、君が問答無用でリリに襲い掛かったから、それを止めただけのこと。長く仕えてくれた使用人が見ず知らずの君に襲われたんだ。人の情として、どのような行動を取るか。それは考えなくても分かるだろう」


「そんな言い訳、通用するか!」


身を乗り出そうとする僕を再びフィオナが制止する。


「どちらにしても、お兄様には王女暗殺未遂の容疑がかかります。拘束させていただきますので、ご理解ください」


「もちろん。疑いが晴れるまで、大人しくしているさ」


まるで、本当に自分は無罪だと信じているような笑顔を残し、ブライアは勇者たちに連れて行かれるのだった。その背中を見送るフィオナ。その視線は、ただ正しさに徹するような、力強いものだった。

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