113話
奴の気配が消えた瞬間倒したかと思ったのも束の間……奴の体が光出したのを見て残念な気持ちを振り払った。
「ワタシヲシハイスルナド……ダレニモデキナイ!」
俺は奴ではない話し方ですぐにコイツが別人だと分かった。さっきとは全く違う強い威圧感に気圧されそうになった。
もしかしてアイツ……始祖に取り込まれたんじゃ……。
「いい気味ね、今までさんざんやってきた事を逆にやられて!」
「やっぱりそう思う? きっとアイツは始祖に取り込まれたんだわ」
アイナとエニィの会話から俺の勘は当たっていたようだ。
「でも、始祖が知性を持ったら少し厄介だね」
アリスの言う通りだ。今までモンスターを生み出すだけだった始祖が知能を持ったら苦戦は必至……。
「コノセカイカラキエルガイイ‼︎」
ブワッ‼︎
突然始祖の体から放たれた物凄い衝撃波が一瞬で俺達に到達するとそれを避けられるはずもなく遠くまで吹っ飛ばされていた。
「キャア!」
「なんて力だ……」
その時俺はシントの奴が全然始祖の力を使いきれていなかった事に気付いて愕然とした。今のは本能的にヤバいと感じる攻撃だった。
「皆んな! まずはアイツの動きをしっかり見ながら立ち回るぞ! 何か勝てる手段が思いつくかもしれない!」
動揺する心を落ち着かせ、少し冷静になるとモンスター攻略の基本である相手の情報収集に務めることにした。始祖の行動や弱点を見破らなければ俺達に勝ち目はないのだ。
「分かったわ!」
「これは長期戦になりそうね……」
「私は退かないよ! 後ろには皆んながいるんだもん!」
「そうだ……俺達には守るものがあるんだ!」
俺は後ろに佇むランド王国の城に目をやると体に力が入った。
「蒼炎剣!」
俺はひとり始祖に突っ込んでいった。
「ハッ!」
そして何故か微動だにしない始祖の肩に一撃を入れようと剣を振り下ろした。
ガギン!
嘘だろ……な、なんて硬さだ!
俺は心の中でまたも驚愕した。剣が肩を捉えた瞬間やったと思ったが全く効いていない……始祖は避けるまでもないと言わんばかりに無防備をさらけ出していた。
多分今のを見た皆んなも驚いているに違いない。それでも俺が一旦退くとアイナが飛び出し、エニィとアリスも攻撃を開始したのだった。結果は俺と同じで魔法は愚かスキルも受け付けないほど始祖の体は硬かった。
それでも諦めるわけにはいかなかった。俺達はひたすら攻撃をして攻略の糸口を探していた。
「……始祖はなんで自分から攻撃してこないんだ?」
攻撃を繰り返しているうちにそんな違和感を感じると攻撃を止めた。始祖は俺達の動きを観察するように見ていて、始祖の行動を分析するどころか逆に分析されているようで怖くなってくる。
「まさかこんなに力の差があるなんて……」
「あの顔はいつでも私達を殺せるって言ってるわ」
打つ手のない絶望的な展開にアイナとエニィの顔が青ざめていた。
「リアン、私に考えがあるの……」
アリスに何か考えがあるらしい。
「何か勝てる手段があるのか?」
「うん……でも、これは賭けになるかもしれない……もし失敗したら……」
アリスは凄く不安そうな顔で俯いていた。
「話を聞かせて?」
エニィは優しくアリスに話しかけた。
「私達の加護をリアンに託すの……そうすればアイツに勝てるかもしれない」
「リアンに?」
「多分私達だと体が耐えられない……リアンが一番確率が高いと思う」
「それは大丈夫なの? 失敗したらリアンはどうなるの?」
「……分からない……」
アリスはエニィの問いに力無く首を横に振った。
「やるよ……このままだと勝てないと思うんだ。この戦い負けるわけにはいかない……」
このままでいくと確実に負ける……それはこの場にいる皆んなが分かっている……だからアリスはやりたくない賭けを口にした。
「でも、もしリアンが耐えられなかったら……」
自分で提案した賭けに怖くなったのかアリスは迷い、怯えていた。
「アリス……リアンを信じよ?」
「このままだと始祖には勝てないわ。私もリアンを信じる」
「リアン……絶対に死なないでね」
アイナ、エニィ、アリスの言葉に俺は強く頷いた。
「ああ、任せろ!」
俺の力強い言葉にそれぞれ決心がついたのか周りを囲むように皆が集まった。
「水の加護よ……リアンの元へ……力を貸してあげて」
「雷の加護……お願い、リアンに力を貸して」
「土の加護……リアンに力を貸して……」
皆んなの手から力が流れてくる……。
それはやがて体を駆け回り炎に包まれているような苦しさが襲った。
「が……⁉︎」
「リアン⁉︎」
「頑張ってリアン‼︎」
「負けないで! リアン‼︎」
皆んなの声が俺に勇気と力をくれた。目を閉じると今必死に戦っているだろうセラニ、マーナ、ウェンディの顔が浮かんだ。
「くっ……」
剣を強く握りしめ、体中に走る激痛に耐えた。もう何も考えられない程俺は意識を保つのに必死で、少しでも気が緩めば意識を失いそうだ。
俺の体がどうなってもいい……始祖を倒す力を俺にくれ……。
俺を試すように暴れ回る加護達を認めさせる為、必死に痛みに耐える。
こんな痛み……今まで受けた痛みと比べたら全然大したことない‼︎
そうだ、俺は死ぬより辛い激痛に耐えていたんだ……そう思えばほんの少し気が楽になる。
そして俺は認められた。スッと痛みは無くなり途端に溢れる力が身体に宿った。
「……やっとその気になってくれたか……」
痛みはない……でも、強大な力を4つも宿して体は確実に悲鳴をあげている。
多分この一撃が最初で最後……俺の体……持ってくれ……。
「消滅の一撃……」
4つの加護が俺に一つのスキルを授けた。俺がそれを口にした瞬間体が動き出す……次の瞬間目の前に目を大きく見開く始祖がいた。
「はあああー‼︎」
「グッ⁉︎ グゥオォー‼︎」
俺は全てを込めた一撃を始祖の頭上から振り下ろした。
か、体が溶けていく……。
体の感覚はすでになく、全てを出し尽くした俺はそのまま意識が薄れて……消えていった。
「……」
俺の体はどこにいってしまったのだろうか……フワフワと浮いている感覚が夢かも分からないまま体はどんどんと空に上がり雲を突き抜けた……。
そこは真っ白な世界……まるで異空間の中にいるようだった。
「ん? あれは……」
そんな白い世界に降り立つと誰かが立っていた。
「ばーか! お前がここに来んのはまだ早えんだよ!」
そう言った男は白銀の装備を纏っていた。
「……ガイアか?」
「お前には待っている奴らがいっぱいいるだろうーが! さっさと戻れ!」
男はへへっと笑うと横に顔を向けた。
「加護よ……彼に再び生きる力を……さ、皆んなが待っているよ」
「アロント……ありがとう」
光が俺を包むと次の瞬間真っ白な世界が消えて俺は空に浮かんでいた。そしてゆっくりと皆んなが待つ地上へ降りていった。




