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112話

「ククク……またお前達か」


 うんざりした口調で話す低い男の声……殻を破った先にいた始祖はなんと人の形をしていた。肌の色がドス黒い他、尻尾が生えていたりと多少違えど魔族に近いその姿に俺は心底驚いた。


「アイツ喋った!」


 アリスも驚いた声を上げている。


「またってどういう事?」


 エニィは始祖の言葉に首を傾げていた。それはあたかも俺達を知っているような口ぶりで、さっきから俺も引っかかっていたのだ。


「誰だお前は!」


「まだ分からないか! まあ仕方ないか、俺はとうに実体を捨てたからなぁ」


 この話し方……まさか!


「もしかしてアイツ、アリスを乗っ取っていた……」


 アイナも俺同様の確信を得たのか信じられない様子でそう漏らした。


「生きていたのか……」


「あの時はまさか俺を追い出せるとは思わなかったぞ。幸い始祖様が地上に出ていたからな。そこへ私が同化したのだ」


「なるほどね、ほんとしつこいやつだわ」


 エニィは呆れた顔で言った。


「始祖様には知性がない。ただ本能からモンスターを生み出しているにすぎないのだ。だから私という高度な知性が加わればこの世界はあっという間に昔の姿に戻す事ができるのだ!」


「アイツまさか始祖の体を乗っ取ったのか?」


 まさか生みの親を乗っ取るなんて……。


「どうなのかしらね、知性が無いって言ってたから始祖は分かってないんじゃない?」


 俺はエニィの言葉になるほどと納得した。


「その為にはお前達を消さないといけないようだ」


「消えるのはお前だ」


「ククク、始祖様の大いなる力が分からないか? この溢れる力……素晴らしい!」


 そう言いながら地面に大きな穴を開け、始祖の力を俺達に見せつけてくる。


「完全に自分に酔ってるわね……ずっと他人の力を利用してきただけなのに」


「ほんとよね、勘違いも甚だしいわ!」


 エニィとアイナは怒っていた。


「アイツは許せない……リアン! 絶対に倒そうね!」


「ああ!」


 アリスも怒りを露わにしていた。俺も当然アイツが大っ嫌いだ。


「フハハ! 俺はこの時よりシントとなり世界の支配者になるのだ!」


 大地が揺れる……それほど奴はというより始祖の力が凄いんだろう。


「ふん! 何がシントよ! 魔族の神様の名前を名乗るなんて笑っちゃうわ! お前なんかただの臆病者よ!」


「そうね! 始祖もろともぶっ飛ばさないと気が済まないわ!」


「自分を過信したお馬鹿さんにはお灸を据えてあげないとね」


 アリス、アイナ、エニィの怒りは最高潮に達している。


「みんなやるぞ!」


 俺はアイナと頷き合うと一緒にシントの元へ飛び出した。


「この力を存分に味合わせてやろう!」


 シントは遊んでやるとでも言っているような余裕の表情で口を開いた。そして、体から無数の手が飛び出してくると俺とアイナに襲いかかった。


「アイナ! この攻撃は地面と空からも来るから気をつけろ!」


「うん! 深淵の洞窟30階のボスね! 覚えてるわ!」


 アイナもこの攻撃を思い出していたらしく迫ってくる手をさらりと交わしていた。


 瞬時に俺は奴の攻撃を読む事ができた。最初の歪み時点でそんな気がしていた。次からも始祖が今までに生み出して来たモンスター達の攻撃をしてくるはず……今まで数多くのモンスター達を分析してきた俺の努力と毎日モンスターと戦ってきた経験の賜物だ。いくら当時と比べて威力や速さが違っていてもあの時では俺達のレベルも全然違う。


「ハハハ‼︎ 面白い! これならどうだ!」


 今度は奴の背中辺りから巨大な尻尾が出てくると威嚇するように天高く空に伸びた。


「エニィとアイナは奴の正面から攻撃してくれ! アリス! あの尻尾の先端から猛毒が広範囲にばら撒かれるから凍らせて阻止してくれ!」


「分かった!」


 俺は仲間にそう指示を出すと奴の裏に回り込む為に動き出した。


 そして皆んなが奴の気を引きつけている間、あの尻尾の弱点が出る瞬間を狙った。


 やがてアリスが尻尾の先端を凍らすと毒が外へ吐き出せず尻尾がプクッと膨張する。


 今だ!


「そこだ!」


 膨らんだ部分は耐久性が落ちる。俺は以前の攻略通りに尻尾を切り落とすと奴はそこから雨のように降る毒を浴びた。


「な、なんだと⁉︎ グァ⁉︎」


 浴びた毒が効いているようだ。ゴロゴロと苦しそうにのたうち回っていた。


「力の使い方が下手だね。ただ使うだけじゃダメなのよ」


 アリスの言う通りだ。奴は始祖の力をそのまま使っているだけで全く考えていない。


「流石リアンね。指示が的確すぎて動きやすいわ」


「リアンをパーティから外した私が言えることじゃないけど魔族がリアンを恐れていた意味がよく分かるわね」


 エニィとアイナが褒めてくれて少し浮かれてしまいたい気分を抑えた。まだ、戦いは終わっていない。


「ゆ、許さんぞ……な、なんだ⁉︎」


 奴は何かあったのか、怒りに身を震わせていたが一転して驚いた様子で自分の体を見ていた。


「か、体が思うように動かん! 馬鹿な! 私は確かに始祖様の体を支配したはずだ! そ、そんな……ああぁ……」


 奴の体全体から煙が上がると崩れるように倒れていった。


「な、何が起こっているんだ?」


 俺達は一歩も動けずにその場に立ち尽くしていた。状況が理解できずに皆と顔を合わせて何が起こったのか考えていた。


 そんな時、奴の体が光に包まれていったのだった。


 


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