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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第11章 ニーナの冒険2

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90 森の中

2020.9.14 剣技 → 闘技 に変更しました

 

 ----マートがヨンソン山に向かっていた頃、ニーナは、以前見つけた転移装置を使ってたどり着いた森の中に居た。

 

"あいつ(マート)は、今頃、サラマンドラと闘ってるのかな。どんな相手なのかちょっと興味あったな。それにしても、あいつはいろんなことに気を回しすぎだよね。僕には面倒くさくてとても無理だよ"

 

 そんな事を考えながら、彼女は足元に生えていたキノコを採り、笠の毒々しい赤い部分を摘まむと口に入れる。毒性の在るものを調べ、取り込むというのは、マンティコアとしての彼女の習性の一つだ。

 

 彼女は遠くに悲鳴のようなものが聞こえたような気がして、ふと足を止めた。よく耳を澄ませる。ひと月ほど、この森は探索したが、人の気配は初めてだ。

 

 ・・・

 

 やはり、何かの声だ。彼女は、飛行スキルをつかって、その場で浮かび上がると、木々を縫うようにして飛び、その方向に向かう。

 

 しばらく飛んだその先では、幼い子供が2人、3匹ほどの狼と闘っていた。戦うといっても、子供たちは木の枝を持って、懸命に打ち払おうとしているが、3匹の狼はその2人を嬲っているような様子だった。子供は二人とも何か所も傷を受け、血を流している。

 

<旋脚> 格闘闘技 --- 全周囲攻撃

 

 ニーナは2人と3匹の狼の間にまっすぐに飛び込み、3匹の狼に蹴りを放つ。その素早い攻撃に狼はなにも反応できず一斉に吹っ飛んだ。

 

「もう大丈夫」

 

 ニーナは2人に声をかけつつ、手近の一匹に近寄ると、その頭に掌底を叩きこみ沈黙させた。2匹はそれを見て、キャンキャンと鳴き声を上げ逃げ出し始めた。

 

「ふふん」

 

 ニーナは得意げに笑い、掌についた血を木の葉で拭った。

 

治癒(キュアウーンズ)』  

 

 2人の傷を呪文で癒す。2人は驚きの顔で自分の傷がみるみるうちに治ってゆくのを見つめ、その後、ニーナの顔を見て、微笑んだ。

 

「チスニキチカラナキラツチニモチトナ」

 

「え?」

 

「チスニキチカラナキラツチニモチトナ」

 

 その時、ようやくニーナはその2人の子供の耳がすこし尖っているのに気が付いた。

 

「あ、言葉を話せないの?もしかして人間じゃないのかな?蛮族だった?それにしては穏やかだけど……」

 

「ノラカラコチクチテチノチスチミチニノイスイシラカチトナノチスニモチトニカチ」

 

 そのとき、二人の子供のおなかがぐーっと鳴った。

 

「お腹が空いてるの?まぁいいわ、良いのあげる。バナナっていうのよ」

 

 ニーナは、魔法のベルトポーチからバナナの房を取り出した。ひとつもいで、皮を剥き、自分で食べてみせる。

 

 2人の子供は、その様子を穴が開くほどじっと見つめていた。

 

「おいしいわよ。どうぞ」

 

 そういって、房をもぐと、2人の子供に1つづつ手渡した。クンクンと臭いを嗅ぐ。その甘い匂いに2人はえも言われぬような微笑みを浮かべた。皮を剥くのももどかしそうに、むしゃぶりついた。

 

「ラニトニニ!」

「ラニトニニ!」

 

 まだ物足りなさそうな様子の2人に、ニーナは残った房を丸ごと渡した。

 

「ニトトンラミニノニカイ」

 

 2人はそれを大事そうに受け取る。そして、ニーナの手を取ろうとした。

 

「?、何なの?」

 

 2人はどこかに案内しようとしてくれているようだった。

 

「蛮族にしては、大人しいし、どこに連れて行こうというのだい。まぁいいわ。付いていってあげる」


読んで頂いてありがとうございます。

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