89 ヨンソン山洞窟探索3
無事サラマンドラの髭を手に入れ、宝箱まで入手したというのに、帰り道は、皆言葉が少なかった。
「お嬢様、マート様、オズワルト様、アズワルト様、お帰りなさいませ」
クララとジョンが4人を出迎えたが、微妙な雰囲気を感じて、首を傾げる。
「クララ、無事サラマンドラの髭を手に入れることが出来たわ。王都に帰るわよ」
ジュディは声を張った。
「おめでとうございます。お嬢様。ようやく杖を作ることが出来ますね」
「そうね、猫、加工を手伝ってくれるわよね」
「いや、もう俺の仕事は終わりだろう?王都まで着いたら、盗賊の財宝の話を冒険者ギルドに届けるまでは付き合うが、加工については、俺は専門外だ」
「えー、教授がまた会いたがってたわよ。ちょっとぐらい良いじゃない」
「財宝ってなんですか?お嬢様」
「盗賊がここに宝箱を隠したって話があったでしょう?あれを見つけたのよ」
「わぁ、さすがマート様です。ランス卿が認められるだけはありますね」
クララの、"ランス卿が認めた"という言葉に、オズワルトとアズワルトの2人はピクンと反応した。
「ランス卿だけじゃないわよ、ライラ王女も水の救護人の名前は知ってたわ」
水の救護人というのも、オズワルトとアズワルトは聞いた事はあった。王都でも評判のヒーローだ。
「そんなのはどうでも良いさ。帰ろうぜ」
「あの、ランス卿が認められた…というのは?」
オズワルトが、小さな声で尋ねた。
「セオドール様とロニー様が最近仲直りされたという話は2人は御存知ですか?」
クララが逆に2人に尋ねた。
「ああ、我々は王都に居たので詳しいことは知らないが、そう聞いて安心していたところだ」
「ハドリー王国が暗躍していたという……」
「クララ、それは話しちゃダメだ」
クララが得意そうに言い始めるのを、マートは慌ててさえぎった。
「そうなんですか?」
「ああ、ダメだ。ジュディ、そうだろう?」
「う……うん。そう……ね」
ジュディは舌を出している。クララに話をしたのは彼女らしい。
「でも、2人なら良いわ。この際だし、ちゃんと話をしましょう。2人共馬車に乗って頂戴。ジョン、2人の馬は馬車につないでくれる?」
「お嬢、俺は外で歩いてるぜ」
マートは馬車と並んで歩き始めた。
馬車の中で、ジュディは伯爵家の家督相続の件でのマートの活躍や、どうしてそれを公にできないのかを説明した。そして、その上で今の言葉遣いについて、公式な場以外では認めていることを説明したのだった。
2人は静かにそれを聴き、考えさせて欲しいと馬車を降りて、おのおのの馬に戻ったのだった。
読んで頂いてありがとうございます。
2人は頭ではわかる部分があっても、納得できませんでした。少し灰色な結末ですが、今後に続く展開ということでご理解ください。
次回は新しい章になります。毎日連載はもう少し続きます。




