88 ヨンソン山洞窟探索2
2020.9.16 サラマンドラの名前、ヴレイズとブレイズ 混ざっておりました。ヴレイズに統一させていただきます。(御指摘ありがとうございます)
2024.10.7 マートの口ぶりが少しおかしかったので訂正しました。
「やめてくれ、オズワルト、アズワルト」
マートが叫ぶ。しかし、2人は止まる様子もなく、サラマンドラに向かって走り始めた。
『麻痺』
ジュディの呪文が響く。
オズワルト、アズワルトの2人はジュディの呪文を受け、動けなくなった。2人とも驚愕の表情を浮かべている。
彼ら2人は無視して、炎の精霊ヴレイズはマートに話しかけた。
「マートよ。時間のある時には、我に音楽を聞かせよ。これは約束の髭だ」
炎の精霊ヴレイズは、小さな手で自分の髭を一本取る。マートがそれに手を伸ばそうとすると、炎の精霊ヴレイズはそれを遮るように片手を伸ばした。
「少し待たれよ。人の手で触れる事はかなわぬ故」
『耐熱』
マートの全身を黄色い光が覆う。
炎の精霊ヴレイズは頷き、遮っていた手を下げる。マートはそれを見て頷き、自信たっぷりに手を伸ばした。その手に、炎の精霊ヴレイズは、真っ赤に光る髭を手渡す。
「サラマンドラの髭、受け取った」
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「あなた方が、サラマンドラに斬りかかるかもしれないというのは、猫から聞いていたわ。本当にしちゃうとは思わなかったけれど…。残念よ」
ジュディは、麻痺呪文で動けなくなった2人にそう言った。
その横で、マートは熱が冷め、真っ黒で艶のある様子に変わったサラマンドラの髭をマジックバッグに仕舞い、ヴレイズを往還する。
それを確認して、ジュディは2人にかけた麻痺の呪文を解く。
くはっと息を吐き、2人はその場にひざをついた。
「お嬢、2人は俺がお嬢にこういった口の利き方をするのを許せなかっただけだよ。もうヴレイズもここには居ないし大丈夫」
荒い息をしながら、オズワルト、アズワルトの2人は顔を上げ、マートをにらみつける。
「猫、サラマンドラを殺されそうになったのに、許すの?」
「お嬢が止めてくれたじゃねぇか。ヴレイズが殺される可能性なんてこれっぽっちもなかった。無事サラマンドラの髭も手に入れた。何も問題はねぇだろ?あとは帰るだけだ」
「でも……」
ジュディはさらに言葉を続けるが、マートは首を振った。
「お嬢、勘違いしてるようだからはっきり言うぜ。俺は俺のやり方でやってたが、2人はそれが許せなかった。それだけのことだ。お嬢がどう言っても2人は納得できねぇだろうよ」
「どうしても気になるんだったら、お嬢は騎士団長やランス卿とでも騎士として2人の行動はどうなのか相談するべきだ」
「俺としてはサラマンドラに何の特別な装備もなしで斬りかかっても、2人が大やけどを負うだけだろうし、さらにお嬢はサラマンドラの髭を入手できなくなったかもしれない。だから、もし、本当にそれをしようとしたら、止めてくれってお願いしたんだ。だが、それは2人にとっては、俺のやり方でしかない」
「暑い中で、一緒に歩いてて、その様子を見てたら大丈夫かもと思ったんだが、ちょっと見込み違いだった」
「猫……」
マートはジュディにウィンクして見せた。
オズワルトたちは、黙って剣を納める。彼らとしても謝ったりするつもりはないようだ。
「じゃぁ、帰るぜ。そうそう、今のままじゃ暑いだろ?」
『耐熱』
彼は呪文を唱えた。ジュディ、オズワルト、アズワルトの身体が順番に黄色い光が覆われる。
「これで、暑いのはマシになったはずだ。ん?」
マートは壁の一部をじっと見た。
「これは、偽装されてるが……」
呟きながら、壁を崩す。横穴が顔を出した。
「こいつは、ラッキーだ。盗賊が隠したっていうお宝発見かもな」
読んで頂いてありがとうございます。




