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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第8章 ニーナの冒険

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71 ニーナと遺跡

2020.9.21 マジックバック → マジックバッグ

 

 仕方なくニーナは、図鑑と見比べながら芋や果物を採取したり、鳥や魚を捕まえて焼いたり、燻製にしたりといったことをこなしつつ、島で自己鍛錬をしていたが、数日たったある日、海辺の家の近くでふとワイルドボアの臭いを感じ取った。

 

 それほど大きくない島なので、あれほどの巨体の生物が居ればすぐにわかるはずで、数日の探索で見つからないところを見るとマートが1月ほど前に畑を荒らしていたのを見つけた個体はきっと以前に盗賊団が逃がしてしまったとか、そういう1匹だったのだろうと考えていた彼女にとって、それは予想外の出来事だった。

 

 急いで周囲を捜索したが、果たして、ワイルドボアはすぐに見つかった。さほど大きくはないが、それでも体長は2m程だろうか。いったいどこに居たのかと不思議に思った彼女はその個体自体はそのままで、歩いてきたであろう足跡をたどることにした。

 

 芋やキノコ類を掘り返して食べた痕跡を逆にたどっていくとさほど遠くない場所の崖から半ば滑り落ちるようにして下りてきた跡があった。ニーナが飛行スキルをつかってその崖の上に移動する。そこには木々と土にほとんど覆われてはいたが、海辺の家とよくにた継ぎ目のない白い岩の瓦礫が埋もれていた。その瓦礫にはところどころ隙間が空いており、一番大きなものは直径が1mほどもあって、最近崩れてできた穴があった。ワイルドボアはそこから出てきたように思われた。

 

 ニーナは、身をかがめその隙間に入っていった。穴の中は白い岩がごろごろと転がり、ところどころ土が山になっていたが、明らかに人造物で、古代の建物が土砂崩れかなにかに巻き込まれたが、どういった幸運か建物自体は完全に崩壊せず、半ば土の中に埋もれているのではないかと思われた。

 

 残されたワイルドボアの臭いをたどって、階段を下りていくと、真っ暗で瓦礫に半ば埋もれたすこし広い部屋にでた。そして、そのすこし広い部屋の片側の壁には3m四方ほどの枠があり、その向こう側にも、こことおなじように瓦礫で埋もれた木の床でできた部屋が見え、その見え方は魔法のドアノブで覗いた感じとよく似ていた。

 

 ニーナがその枠を潜り抜けると、やはり違う場所に出た。そこは5m四方ほどの広さがあって、窓は無く、一方に階段があって、その上から日の光が入ってきていた。気温は海辺の家のある島にくらべて格段に低い。そして、階段を登って出たところは、深い森の中だった。出てきた穴の周囲には掘りかえしたのであろう土が散乱している。

 

 あたりは苔むした石畳が広がっていて、それがかつて何かの建造物の床であっただろうと思われたが、その石畳を割るようにして二抱えほどもありそうな針葉樹がいくつも生えていた。付近にはニーナが上ってきたのとおなじような階段がいくつもあったが、すべて途中で崩れており、ざっと見たところ、中までは入れるのは彼女が出てきた階段だけだった。

 

 まず、臭いで人の存在を探してみたが、それは全く感じられず、獣はそこそこ居るようで、ワイルドボアや鹿、狼や虎などの臭いに混じって、嗅いだ事の無い獣の臭いも感じられた。余程の辺境かも知れず、気温からするとかなりの北だろうといった程度しか場所の手がかりはなかった。

 

 ニーナは飛行スキルをつかって、木々の上にまで飛び上がる。周囲には見渡す限り森が広がり、遠くには靄のようなものがかかっておりよく見えない。おそらくリリーの街とマクギガンの街の間に広がるバッテンの森よりは広いだろうと思われた。

 

 ほぼ間違いなくワイルドボアはこの森から転移装置を使って島に紛れ込んできたのだろう。ここがどこかは判らないが、海辺の家のある島のほうが温かく過ごしやすいと考えて移動してきた可能性があった。

 

 ニーナとしては、とりあえずワイルドボアが紛れ込んできたところがわかったのと、自炊のための肉類の入手がこれで可能になったことで満足だった。周囲は徐々に探索することにしようと考えて、とりあえず簡単には掘り返されない程度に森側の階段のあたりには岩を積んで、海辺の家のある側に転移装置を抜けてこれないように措置を施すと、島に紛れ込んだワイルドボアの退治に向かったのだった。

 

----- 

 

“目が醒めたか?”

 

 ジュディの家であるアレクサンダー伯爵家の後継者争いが無事決着した後、夕方に海辺の家に戻ったマートは、ニーナの顕現を解いたのだが、強烈な眠気に襲われ、気がついたときには朝になっていた。

 

「ああ、朝か?」

 

“そうじゃ、2晩じゃな。よく寝ておったぞ”

 

 ふわぁあとマートはなんとかもぐりこんだベッドで背伸びをした

 

「そうか、顕現は1月ほどだったが、その代償は2晩か」

 

“ニーナの記憶はどの程度引き継がれておるのじゃ?あの後、ニーナは大人しくしておったのか?”

 

“魔剣は心配性だな。細かいところまで詳細には思い出せないが、大丈夫だ。転移装置をみつけた他はほとんど大人しくしてたよ。とはいっても、自炊も結局は焼いたり燻製にしたりといった感じで、俺の期待したような料理にはあまりチャレンジしてなかったけどな。彼女に言わせると、習ったこともないのに出来るわけないってさ。そりゃそうだな”

 

“転移装置じゃと?”

 

“ああ、島からよくわからない森までつながる転移装置があるらしい。森側の出入り口は一旦岩で塞いだらしいから、もうワイルドボアとかが入り込むことはないだろうって話さ。ニーナの見るところだと、転移装置はこの建物と同じぐらいの時代のものだろうってことらしい。森の大きさはバッテンの森より広く、気温からするとここよりかなり北だろうってことは想像できたけど、探索しても、街などにはたどり着かなかったらしい”

 

“なるほど、そのまま、探索でうろうろしそうだと危惧しておったのじゃが”

 

“俺の言葉に全く強制力がないというわけでもないんだろ”

 

 マートはステータスカードを取り出して、スキルの習得具合を確認した。

 

*************************************

名前:マート

種族:人間

所属ギルド

 冒険者ギルド リリーの街 ランクC


※以下非表示

--------------------------------------

前世記憶:デイモスマンティコア

     顕現可能:人間体

戦闘力評価

 訓練所1級

スキル

 戦闘:片手剣 ★★★☆

    短剣  ★☆☆☆

    格闘  ★★★★(☆)

    投擲  ★☆☆

    弓術  ★★★★☆

 精霊:    ★★★☆☆☆

(神聖:    ★☆)

(真理:    ☆)

 運動:斥候  ★★★★☆(☆)

    体術  ★★★★(☆)

 生活:調理  ★☆☆

    音楽  ★★☆

    動植物 ★★☆

 魔獣:飛行  ★★(★☆)

    毒針  ★★★(★☆☆)

    爪牙  ★★(☆)

    鋭敏感覚★★★(☆)

    呪術  ★★★(★☆☆)

    肉体強化★★(★☆)

    死霊術 ★☆☆☆

魔法

 呪術:痛覚  ★★

    毒   ★★☆

    幻覚  ★★☆

   生命力吸収★☆☆

    呪い  ★☆☆

  (感情操作 ★☆☆)

  ( 即死  ★☆☆)

(神聖:治療  ★☆)

  ( 防護  ★☆)

 死霊:生成【スケルトン】6

      【ゾンビ】  6

      【ゴースト】 1

      【レイス】  1

   ※ニーナ

     ((【ゾンビ】  52))

     ((【マンティコア・ゾンビ】 1))

    操作  ★☆☆

 精霊契約

  泉の精霊 ウェイヴィ

*************************************  

 

“魔獣系のスキルは高いのと格闘は★4つまで行ってるなぁ。しかし、これでマンティコアと1対1で戦って倒せるのか?姐さんの片手剣5段っていったいどれだけ高いんだ?俺は★3つだけどせいぜい1級だぜ?って、あーなるほどな”

 

“何を自問自答しておるのじゃ。気持ち悪いぞ”

 

“ニーナが教えてくれたのさ。魔獣って、すごい力だろ?それと相手をするのに、受け流したり、その力を利用したりといったことが重要なポイントになるんだと。それが身についてより高位の段がもらえるらしい。いわゆる柔よく剛を制すってやつだな。もちろん剣の腕もあるが、戦闘の際には筋力や敏捷などの素の能力がものを言う部分もある。ニーナや俺は肉体強化のスキルでそこを補えるから、剣の腕は1級でもマンティコアと戦えるってことらしい。あと、俺たちは魔法の素養が高いから相手の魔法を食らわずに済むっていうのが戦える要素としては大きいみたいだ”

 

“ふむ、なるほどな。そなたたち2人の場合、剣や格闘の腕はそれほどでなくても、力押しでいけるってことか”

 

“まぁ、言い方は悪いがその通りだ”


“しかし、微妙だな。これを見ると、顕現してないほうが明らかに強いんだろうが、2手に分かれて行動したり訓練したりできるっていうのは利点もあるよな”

 

“たしかにの。では、ランス卿から貰ったものの一部は、ニーナに渡すのか?”

 

“ランス卿が凄い魔道具ってもったいぶってた変身の魔道具とマジックバッグだけど、変身の魔道具はニーナが持っとくのがいいだろ。気をつけないと王女に間違われるらしいからな。マジックバッグは新しいほうが容量が大きいから俺がもらって、以前みつけたやつのほうをニーナに渡しておくで良いだろう。ニーナも顕現するときに、装備なしじゃ不便だしな。あと、魔法使いが持ってた呪文書や指輪の形の発動具?毒や薬類はニーナに預かってもらおう。悪いが俺は呪文の書なんて全然興味がないからな。ニーナのほうがそのあたりには興味を惹かれるだろ”

 

“そうじゃな。そういう意味ではニーナは貪欲じゃ。というよりは、そなたがのんびりしすぎておる気がするがの……”

 

読んでいただいてありがとうございます。

ニーナの冒険は一旦おしまいです。次からは新章の予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] > そなたがのんびりしすぎておる気がするがの……” 仕方ないよね。猫だから。
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