67 ニーナのモンスター退治1
2020.9.14 剣技 → 闘技 に変更しました
ニーナが着いた街は、プレザンスという名前だった。ハドリー王国の最南部の開拓拠点であり、この街より南の地域は蛮族が多く住んでいるということだった。そして、ワイズ聖王国に行くには一旦北に2日ほど行った城塞都市を経由して、今度は西に1週間ほどかかるらしかった。
“蛮族が多いっていうから、2,3日はこの街に滞在してスキルの検証をしようか”
“そうじゃの”
“それなら、冒険者として登録しておいたほうが良いかもだね。街の出入りにしても冒険者証があれば、簡単に出入りできる”
“大丈夫なのか?”
“僕は、アニスやアレクシアとしての記憶もあるんだよ。国が違うから、冒険者の役割でいろいろと変わってるところもありそうだけど、女冒険者としてどうやって男共をあしらったら良いかぐらいはわかってるさ”
彼女は、その足で冒険者ギルドに向かったのだった。
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<円剣> 直剣闘技 --- 全周囲攻撃
ゴブリンに囲まれたニーナはそう言葉を発して、剣を一回転させたが、闘技は発動されることなく、最初に攻撃の当たったゴブリンが1体吹き飛ばされただけだった。
“やっぱり、片手剣はダメだね。どうやってみても闘技が発動しないよ。★が下がってるんじゃないかな。格闘のほうで行くよ”
<旋脚> 格闘闘技 --- 全周囲攻撃
ニーナの周囲のゴブリンが一斉に吹っ飛ぶ。
【爪牙】
<崩撃> 格闘闘技 --- ダメージアップ
残った2体のゴブリンも、右手の一撃、左手の一撃でそれぞれ倒れた。
ふぅとニーナは一息つき、再び魔剣に念話を送った。
“こっちはちゃんと発動するみたいだね。格闘は、たしか顕現していない状態だと☆5になったんだよね。魔獣系のスキルと斥候・体術、格闘のスキルは高いけど、片手剣や弓術はやっぱり下がってるみたいだな。神聖魔法は、アニスは☆3だったけど、マートの顕現前で☆2、ということは、今の僕も☆1か2ってところ。やっぱり人間としてのスキルは下がっているとみるべきだろうな”
“真理魔法は、アニスは使えなかったのか?”
“アニスの素養にはないね。マートとアニスにないってことは、アレクシアがすこしあるってことじゃないかな。だから僕には☆1つってことさ。勉強してもそれほど真理魔法はつかえそうにないな。神聖魔法のほうは、今治療と防護は使えるみたいだけど、☆2だとすると、あとはせいぜい解毒と祝福ってところだろう”
“爪牙スキルが人前では使い難いから、格闘はのう……”
“ナックルや靴に鉄板を仕込むとか、工夫をしないとだめだね。爪牙スキルが使えれば武器の攻撃を受け流したりもできるけど、そうじゃないと躱すしかできないからね”
“うむ、そのあたりを考えてみよう。あとは、呪術魔法じゃな”
“そうだね。毒呪文はもうちょっといろんなサンプルが欲しいところだな。動植物に関する調査次第でバリエーションは増えていくだろう。幻覚呪文と呪い呪文、感情操作呪文はいろいろ想像力が大事だから、試してみないとだな。ただ、ゴブリンのような蛮族連中だと言葉が通じないからどこまで有効だったのか判りにくいんだ。ある程度試してからマートに実験台になってもらおう”
“そうじゃの”
“その点、即死呪文と生命力吸収呪文はわかり易い。こっちはできるだけ使って練習しておくつもり。あとは★5の呪文については何があるのか解らないんだよ。そっちもマート頼みだね”
そんなことを相談していると、ニーナの耳に、遠くに羽ばたく音が届いた。彼女が周りを見上げると、小高い丘の上に体長6mはあろうかという怪物が居り、蝙蝠のような羽根を動かしていた。身体は獅子、サソリの様な尻尾があり、老人の顔を持っている。ニーナに気づいているようで、じっとこちらを見つめている。
“マンティコア...。こんなところで、遭遇するなんてね”
“どうなのだ?勝てるのか?”
“普通で考えると、アニスクラスの前衛なら10人居ればなんとかってところかな”
“そいつはきついな”
“だけど、普通じゃない僕には肉体強化があるからね。ゴブリン相手に使ったら、5m位吹っ飛んでいったのは、魔剣さんも見たでしょ。魔法の素質も高いから、それを組み合わせれば、全然歯が立たないってことはないと思うんだよ。背中を向けて逃げるのは、飛行スキルの事を考えると厳しいかもね”
“戦うしかないのか”
“だね”
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