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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第6章 黒い呪詛

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57 ニーナ


「ニーナ、せっかく生まれたのに、全然呼び出せなくて悪かったな」

 

 マートは、宿屋で独りになると、魔法のドアノブを使って、海辺の家に行き、そこでニーナを顕現化すると、そう言った。


「いや、あの事情だとしょうがない。その間にいろいろと考えることも出来たし、何もすることが無ければ、僕自身もうとうとと寝ている感じで、あっという間に時間が過ぎていくんだ。だから、あまり待たされてるという感じもない」

 

「そうなのか」

 

「しばらく、どうする?新しいスキルとかもあるから、僕だけこっちに居て、試しておこうか?」

 

「ああ、俺からもそれをお願いしたいと思ってた。距離が遠くても大丈夫なのか確かめないとだが、もし大丈夫なら、ここで試しておいてくれるか?スキルの素養は下がると言っても、実際に力が下がるのは精々呪術位だろ。本当は、俺がこっちでのんびりとそうやって過ごして居たいぐらいなんだがな」

 

「ああ、そうだろうね。またワイルドボアとか柵をこわしたりしてないか、見ないといけない」

 

「この状態だと、念話みたいなのは送れるのかな?」

 

 マートは、左腕の黒い獅子の文様に指を置いた。

 

“聞こえるか?”

 

“聞こえるよ。でも、見ている光景まではわからないな”

 

“そっちからも送れるか?”

 

 ニーナは自分の腕を確認した。同じように黒い獅子の文様が描かれている。

 

“文様があるから送れるんじゃないかな?”

 

 そう答えるニーナの念話はマートに伝わってきた。

 

「ふむ、なるほどな。見ているものが共有できると判りやすいんだがな。顕現してない時にはできたのに残念だ」

 

「そうだね」

 

「顕現を解くのは、遠隔でもできるのかな?」

 

「試してみたらどうだい?」

 

 マートは、ニーナを海辺の家に残し、自分だけ宿屋に一度戻る。

 

“通じてるかな?”

 

 ニーナから念話が届いた。

 

“ああ、念話は送れるみたいだな。じゃぁ、顕現を解いてみるぞ”

 

“少しだけ待ってくれないか。試しに椅子を持つ…… おっけー 良いよ”

 

 マートは顕現を解こうとしてみたが、解けない。

 

“まだ?”

 

 ニーナから念話が届く。

 

“無理みたいだ。すくなくとも、この距離では……”

 

“そっか。いろいろ制約があるんだな。ピンチの時にはそちらに合流して助力してあげたいけど、そう言う訳にもいかないんだね”

 

“じゃぁ、とりあえず、そっちに行く”

 

 マートは魔法のドアノブを抜ける。ニーナが居ない。

 

“ニーナ、何処だ?”

 

“僕は今、二階に居る。そこから試してみてくれないか”

 

“わかった”

 

 マートは顕現を解いた。すっと顕現が解かれる。

 

“少しぐらいなら離れてても、大丈夫みたいだな”

 

 ニーナの念話が送られてきたが、マートの頭の中にはニーナが、彼とはなれた後、二階に上り、穿いていた靴を脱ぎ、椅子を持ち上げて待っていた状態までの経験が彼の頭の中に駆け巡っていた。自分とは違う身体の感覚、めまいがする。

 

“ああ、これは……ちょっと慣れないな”

 

“少しだけ遅れて、僕にも君の記憶が伝わってきたよ。今もまだぼんやりしている。戦闘中に顕現の解除するのは危険かもしれない”

 

 マートはニーナを再び人間体で顕現させた。椅子を抱え、靴は履いていない状態だ。

 

「ふむ、持ち物は維持されると…。これは何かに利用は出来そうだが……。なぁ、ニーナ、精霊魔法は?」

 

 彼女は自分の何の文様もない左腕を見た。

 

水生成(クリエイトウォーター)

 

 彼女はそう唱えたが、何の変化も起こらなかった。

 

「やっぱり無理だね。僕が契約しているわけじゃないからだろうな。試す気にはなれないけれど、たぶん死霊術も使えないだろう。第一、精霊魔法の素養もあるのかどうか……」

 

「いや、ニーナが顕現していない時に、俺のステータス情報には神聖呪文や真理呪文の素養が出現してた。あれは、アニスかアレクシアの素養をニーナが引き継いでいたんじゃないかと思うんだ。実際、ニーナが顕現したら素養は消えるしな。それと同じように考えると、俺ほどじゃないかもしれないが、精霊魔法や死霊術について素養は引き継いでいるんじゃないかと思う。契約は引き継がれないみたいだけどな。飛行とか呪術魔法とかは使えるんだよな?」

 

「ん?試してみよう」

 

 背中に、黒くて半透明の蝙蝠の羽根の大きくしたようなものが一瞬浮かび上がり、彼女は、ふわりと浮き上がった。

 

「なんだ?今のは」

 

「どうしたんだい?」

 

 ニーナは不思議そうにマートに尋ねた。

 

「一瞬、ニーナの背中に羽根が見えた」

 

「へぇ、飛行スキルを使ったら、背中に羽根が見えたって事かい?なぁ、マートも試してみてくれないか?」

 

「ああ、良いぜ」

 

飛行(フライ)

 

 マートは無言でスキルを使用した。自分自身では蝙蝠の羽根は見えない。だが、ニーナの反応を見ると、彼女からは見えているようだった。


毒針(ポイズンニードル)

 

 マートは近くの木に毒針を打ち込んだ。

 

「巨大なサソリの尻尾が一瞬見えたよ。これは、僕と君の関係だから見えたのか、それとも、前世記憶がある者は、スキルを使う瞬間が見えるのか。もし、後者だとすると、魔獣系のスキルは使う時は注意しないと気づかれるってことになるね」

 

「ああ、そうだな」

 

「市場のところに緑色の肌の男が居ただろう?彼で試せないかな……いや、危険か」

 

「危険すぎるだろ。恐喝とかされそうだ」

 

「そうだね。でも、とりあえず懸念事項として考えておかないといけない」

 

「ああ、そうだな。とりあえず、ニーナはしばらくここでのんびりしながら、新しい力を試しておいてくれないか。何か新発見があったら、念話を送ってくれ」

 

「わかった。いろいろ試しながらのんびりさせてもらうよ」


読んで頂いてありがとうございます。


ニーナは僕っ子設定です(笑)


次は新章となります。

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