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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第4章 討伐クエスト

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39 海辺の家に魔石を

2020.9.21 マジックバック → マジックバッグ

   

 宴会でたっぷり食べて飲んで楽しんだマートは、翌日もすっかり寝坊し、その後も燻製を作るところを村長に見せてもらったりして、結局村を出発したのは、昼も過ぎた頃だった。そして、彼は少し村から距離をとると、人目を避けつつ、魔法のドアノブで海辺の家に行ったのだった。

 

 彼は一日のんびり過ごそうと考えたのだったが、それは、一歩海辺の家に入ったところで、裏切られることになった。

 

 家の庭でなにやら騒がしい物音が聞こえたのだ。

 

 あわてて、庭に通じる扉を開けると、そこには、体長2m程の大きなワイルドボアが一頭、庭を囲っている塀を破り、以前、エバたちが耕していた畑を荒らしていた。

 

 ちっ と、マートは、舌打ちし、腰の剣を抜いて構えつつ、毒針スキルをワイルドボアに使った。

 

毒針(ポイズンニードル)

 

 ワイルドボアは、マートに気づき、姿勢を低くして、突っ込んで来ようとしたが、すでにその足はもつれ始めていた。

 

 2、3歩地面を蹴った脚は、そのまま宙に浮き、ワイルドボアは鼻面から地面に着地する羽目になった。

 

 マートはそのワイルドボアに近寄ると、剣で首筋を払う。血が吹き出て、地面に血だまりができた。

 

「予定外だが、まぁいいか。丁度試したかったしな。毒針の毒も、この種類なら肉には残らないはずだ。念のために一部毒見はしないとだけどな」

 

 彼はそう呟くと、300キロはあるワイルドボアの身体を、引っ張って解体台に運ぶ。もちろん、本来の力では無理なので、肉体強化スキルをつかってだ。

 

 ワイルドボアの後ろ脚に縄を縛り付け、解体台にぶら下げる。これと、その横の簡単な小屋は、彼が最近付け加えた新しい設備だ。

 

 首筋の他、足首と肩の付け根にも切れ目を入れ、血抜きをしておく。そして、それを待つ間、畑の壊れた柵を補修したり、掘り起こされた畑を、これも新しく手に入れた農具で綺麗に元通りにした。

 

“なぁ、魔剣、思い通りにはいかないもんだな。誰も居ないと野生動物が入り込んできやがる”

 

“それは仕方あるまいよ。柵を強化して、あとはもうちょっと来る頻度を増やすことだな”

 

“せっかく、燻製の仕方を見てきて試そうと思ってたんだが、匂いで集まってきそうだ”

 

“そうじゃの。どうせ今日は液に漬けておくだけじゃろう。明日、燻製をしながら柵を強化することを考えればよい”

 

“まぁ、そうだが、やっぱり1人だと限界があるな”

 

 マートは、逆さ吊りになったワイルドボアの腹を裂いて内臓を抜き、皮を剥いだ。ワイルドボアの内臓は寄生虫などが多いので、肝臓などの一部を除いて畑の一角に穴を掘って肥料にすることにした。

 

 その後は肉はある程度の大きさに切り分ける。このあたりまでは、採集者として何度もしているので手慣れた作業だ。その次は脂を綺麗に取り除いて洗い、村で教えてもらった塩とハーブなどを足した液にしばらく漬けておくことになる。

 

“結構手間だよな。これって…。焼くだけなら、こんな事しなくて良いんだが”

 

“村長も言っておったじゃろう。脂が残ると早く腐るから駄目なのだと”

 

“まぁ、そうだけどな。腹の肋骨のところは脂も多くて面倒だから、焼いて食うのに回すか”

 

“儂じゃなく、早くだれか嫁をもらって、その娘と会話をしながら、こういう下ごしらえをしたらどうじゃ?”

 

“いや、結婚したとしても、こういうのは俺一人でやってると思うな”

 

 そんな事を魔剣と会話しながら、マートはワイルドボアの中でも太腿や肩といった塊の部分は燻製にするための下処理をすませ、それ以外の部分は焼いたりして食べる為に加工をすませた。

 

 そこまで済ませたところで、日は傾き、海辺の家には夜が訪れようとしていた。

 

 何度も夜は過ごしたが、今日は魔石がある。それを試してみるというのが、今日の目的の一つだった。

 

 彼はマジックバッグから、魔石を一つ取り出し、複数あるパネルの一つに押し当ててみた。

 

 パネルが数カ所点灯し、家の何か所かに灯りがついた。

 

「おお、すげぇ明るい。照明も魔道具か。ほんと贅沢な家だな」

 

 マートは思わず声を出した。家の中を見回す。一度徹底的に掃除をし、家具類も彼が暮らすための部屋は入れ替えたので綺麗なものだ。盗賊のアジトから頂戴したベッド類は処分するところがないので、使ってない部屋にほうりこんである。

 

 マートは順番に残るパネルにも魔石を当ててみることにした。

 

 一つ目は、パネルは光ったが数字と文字が出ただけ。

 

 二つ目も、三つめもそれは同じで、よくわからない数字と文字がでただけだった。

 

“なぁ、何かわかるか?”

 

“一つ目は空調じゃな。家の中の気温を一定に保つ。二つ目は、台所の諸設備、三つ目は風呂とトイレらしい”

 

“空調ということは、家の中を涼しくできるってことか?そういう魔道具があると聞いたことはあったが、実際に存在するとはな”

 

“たしかに贅沢品ではあるし、盗賊のアジトには無かったのだが、そんなに珍しいものなのか?”

 

“王様のお城とかはどうなんだろうな?とりあえず、実際に見た事はねぇ。あと、台所の諸設備ってなんだ?この間手に入れた魔道コンロとかか?”

 

“魔道コンロもそうじゃが、あとは水が出たり、冷蔵したり、冷凍して食べ物を保管するための箱もあるじゃろう”

 

“冷蔵?冷凍?冷たくしたり凍らせたりってことか。そうすると食べ物は長く保管できるのか?へぇええ、この家にそんな魔道具が備わってるのか。取り外したら凄い高値で売れそうだ”

 

“無理やり取り外すと使えなくなるぞ”

 

“ちっ、それだったら意味ねぇな…。冷たい井戸水とかは旨いだろうけど、それ以外に意味があるのか?”

 

“まぁ、嘘だと思って試してみるがよい。あと、風呂はシャワーと浴槽に熱い湯と水が出るというのは、前に言った通りじゃの。トイレは排泄物が水で流れる”

 

“ああ、それは楽しみにしてたんだ。身体を綺麗にするのに湯を使えるのも贅沢な話だよ。しかし、魔剣よ、あんた、なんでそんなに詳しいんだ?”

 

“儂が作られた時代と、この建物が作られた時代とは技術水準が似ておるからじゃ。逆にそなたが居る今、魔道具を作る技術が失われておるとも言える。魔法自体もかなり衰退しておるな”

 

“そういうことか。そういえば、前に魔石はもっと安かったと言ってたな”

 

“ああ、そうじゃの。儂が作られ、封印される前の時代はもっと魔道具は普通に存在しておったし、魔石ももっともっと安く、普通の街の者が手軽に魔道具をつかっておった”

 

“そういう事か。すげぇ昔なのかな。あんたは魔道具のつくり方とか知らねえのか?”

 

“それは知らぬ”

 

“そうか、まぁ、とりあえず順番に詳しい使い方を教えてくれよ。どれもすげぇ便利そうだ”

 

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 我流、つまり現在のナンタラ流とは違う、古流武術ということなのかな? 単に、カードに表示されないから言っている?
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