表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第52話 謎の陸地

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

393/411

391 逃亡者の話

 

 

 逃げていた男は後ろで戦いが始まったのに気づいて振り返った。そしてあっという間に蛮族たちがすべて倒れ伏したのに驚愕の表情をうかべて足を止めた。

 

「な、なんと……」


「安心せよ。蛮族は倒した」


 シェリーがにっこりと笑って声をかける。だが、男は表情を凍り付かせ、警戒をしているようだった。

 

「べ、べぇ……ありがどうごぜいやず」


 いつでも逃げだせるような体勢を保ちつつ、男はあわててお辞儀をした。

 

「私たちはローレライ侯爵家のジュディとシェリー、あなたはパーカー殿の配下の方かしら?」


 ジュディにそう言われて男は首を振った。

 

「あ、あぁっど……あっじばごの森に逃げ込んで猟をじで暮らじでる者でモンティど申じやず。パーカー殿どおっじゃるのば伝説の領主様でやんずよね。生憎、あっしば存じ上げまぜん」


 ジュディとシェリーは顔を見合わせた。

 

「このあたりに隠れ里を作っているという話を聞いたのだけど、知らない?」


「申じ訳ありやぜん。あ、あの、お礼を差じ上げだいのでやずが、今日の獲物も全部逃げる途中で放り出じでじまっでおりやじで……」


「どうする? シェリー」


 シェリーはぼろ布で剣についた血をぬぐい鞘にしまう。男はその様子をじっと見て、安堵したのかその場に座り込んだ。そうしているところにアンソニーたち3人が追いついてきた。

 

「ジュディ様、シェリー様 ご無事で?」


「もちろんよ。ホブゴブリンはたぶん生きていると思うから縛り上げて頂戴。他に生きているのが居たら同じようにね。死骸はいったん回収して後で処分するわ」


 ジュディにそういわれて、アンソニーたちと一緒に戦った跡を片付け始めた。

 

「そなたは、この森に逃げ込んで猟をして暮らしていると言ったな。どれぐらいになるのだ?」


 シェリーはモンティの横に立って話を聞き始めた。

 

「ぞろぞろ5年になりやず。ごごがらずっど南の村の出身でやず。母親をゴブリンに殺ざれで怒りのままぞのゴブリンを殺じでじまいやじだ。ぞの上ぞの後怖ぐなっで逃げ出じでぎでじまいやじだ」


 そう言って、男は顔を伏せた。逃げ出してきた村に対して罪悪感を感じているのかもしれない。

 

「それで、ずっと独りでこの森で暮らしているのか。ほかに同じように暮らしているものはいるか?」


「べぇ、あっじの知っでいる限りでば3人ぼどでやじょうが。お互いぼどんど干渉じやぜんが、ごくだまに森で遭うど挨拶程度ば……」


「それらと接触するすべはあるのか?」


 モンティは首を傾げて考え込む。

 

「ピピンどいうあっじより長ぐごの森に住む爺さんがおりやず。どうじでも困っだごとがあっで連絡をどりだがっだら、亀石の左足に矢を挿じでおげど言っでぐれでおりやしだ」


「挿して置いたらどうなる?」


「明げ方に亀石のどごろにぎでぐれるどいう話でじだ。だだ、毎日見れるわげでばないがら、ぞの時ば見だ日の翌日になるどいうごどで」


「成程な。その亀石というのはどこにあるのだ?」


 モンティは亀石のある場所と見つけ方を教えてくれた。5mほどもある巨大な亀の形をした岩らしい。


「あともう一つ質問だが、巨人たちは猟犬を連れてこのあたりをよく見張っているのか?」


「ごんなごどばばじめでのごどでやず。猟犬なんぞに追いがげられでどうじようがど思いやじだ。あの……騎士様だぢの仰っだローレライ侯爵家どいうのば、いっだいどごの貴族様で?」


「ここからはるか東、船で何週間もかかるところにある陸地に領地を持っている」


「ぞれば、ピール王国に仕えでいらっじゃる?」


「ピール王国? ピール王国ははるか昔に滅びたと聞く。われらはワイズ聖王国に仕えている」


「その、ローレライ侯爵様ば蛮族ど戦っでいらっじゃるので?」


 彼はローレライ侯爵家の事、ワイズ聖王国の事などをシェリーに尋ねた。聞くと蛮族を追い払ってくれそうなのか興味があるらしい。彼女は得意げに蛮族との戦いについて詳しく彼に説明をした。

 

「なるぼど、ぞのローレライ侯爵ば魔王イクソルトを倒ぞうど?」


「その通りだ。私も一度奴の片腕を切り落としたのだがな。とどめを刺すことはできなかった」


 シェリーは巨大集落の上空でおこなった戦いの事を思い出しながらそう話した。モンティは大きく感嘆した声を上げた。

 

「シェリー、片付け終わったわ。そっちの話はどう?」


 見ると、戦った痕跡はきれいに片付けられ地面に血の跡も残っていない。ホブゴブリンとゴブリンが1体ずつ縛り上げられている。


「うむ、大体終わった。モンティと言ったな。気を付けてゆけよ。一応蛮族の死体は片付けたが警戒は厳しくなるやもしれぬがな。あと、我々の話は口外無用で頼む。蛮族には奇襲をかけたいのでな」


「へぇ、ありがとうごぜいやじだ」


 彼は我に返った様子で深くお辞儀をするとその場を立ち去って行ったのだった。

 

「パーカー一族につながりそうな情報はあった?」


 ジュディは尋ねたが、シェリーは首を傾げた。

 

「微妙です。どこまで信頼できるかわかりません」


「そう、わかったわ。ゴブリンはどうしようかしら。ここで夜営するのも危険だし、暗くなってきたから移動するのも危険ね。一度ローレライ城に戻って(キャット)と相談してからにしましょう」


 ジュディの提案に皆は頷いたのだった。



読んで頂いてありがとうございます。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

いいね、評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 流石は長い間隠れ潜んでいる領主ですね。中々見付からないか。また何らかの魔道具とかで隠れてるパターンかな?
[良い点] ピール王国という単語が出てきたので、マートや魔剣と合流した後で何かがわかりそうですね。 [一言] マート抜きの冒険も面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ