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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第50話 新年パーティ

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371/411

369 研究所よりの知らせ

 

 新年のパーティのあった翌日、マートが王都の邸宅で遅い朝食をとっていると、アレクシアの部下がやってきてバーナードから連絡があったと伝えてきた。それによると魔道具の研究で進展があったらしい。

 

 バーナードはオウルベアとよばれる熊に似た魔獣の前世記憶をもつ研究所の責任者だ。彼らに調査してもらっている魔道具は数多い。そして作ってもらっているものもある。施設の警備用の魔法を感知する魔法感知や存在を感知する感知の魔道具、魔法無効化の魔道具、萬見(よろずみ)の水晶球などだ。マートは急いで朝食を食べ終えると自室に帰り魔法のドアノブのダイヤルを研究所に合わせたのだった。

 

 扉を開けるとそこはいくつかの転移装置がある部屋である。いつもならこの部屋には誰も居ないことが多いのだが、今日は5人ほどの研究メンバーが転移装置である板を囲んでなにやら話し合っていた。その中にはバーナードとローラも居る。

 

「バーナード、連絡をうけて飛んで来たぜ。なにかわかったのか?」


 バーナードはマートに気付き慌てて立ち上がると礼をした。

 

「マート様、ちょうど良い所に来られました。この転移装置の設定をリセットして使える様にする実験をしていたのです」


 研究メンバーが集まっているのはたしかパスワードが判らずに使うのを諦めていた転移装置の台座だった。バーナードの横に立っていたローラや他のメンバーもマートにお辞儀をする。ローラがマートに一歩近づいた。


「この間の遺跡にあった大量の破損した転移装置を提供していただいたおかげで様々な事が判りました。まだ我々で最初から作り上げる事は成功しておりませんが、今まで見つかっている転移装置の設定を変更することや、それによって問題なく移設することが可能になりました。また、現在修理にも着手し始めており、破損の少ない転移装置の部品をつなぎ合わせて使えるようになるのもあと少しだと思われます」


 ローラのめずらしく得意げな顔にマートの声も嬉しそうだ。


「へぇ、すげぇな。ということは、ローレライとウィードとかが簡単に行き来できるようになるってことか?」


「いままでジュディ様かエリオット様にお願いしなければいけなったのが格段に楽になります。と言いましても見つかっている転移装置には限りがあります。また、それを踏まえて王家にこの事実を伝えるか否か決めなければなりません。めずらしい魔道具であれば王家に献上するのが慣例という話もあるようですが……」


 ローラの問いにマートはあっさりと首を振る。

 

「これらの魔道具が動かせるっていうのはうちの研究でわかったものだ。わざわざ教える必要はねぇだろう。転移装置という話では以前ライラ姫を経由して報告しているしな。もし量産できるようになったら提供してもいいが、それまではこれはあくまでもテスト中って扱いだ。もしそれでもって言うのなら、騎士団が俺たちに協力して巨人の里に攻め込むことを条件にしよう」


「なるほど、それでは運用は基本的に秘密を守れる者だけということになりますが、それでよろしいですか」


「ある程度はそうなるのは仕方ねぇ。だが、蛮族との戦い、攫われた人々の救出のために必要な場合は例外ということにしてくれ。アレクシアやワイアットたちにもそう伝えておく」


 マートの答えには迷いはなかった。


「畏まりました。あとは設置する区間なのですが、どういたしましょうか?」


「今、発見してるのはどれだけあるんだ?」


「私どもにお教えいただいているのはこれだけかと思われます」


 そういって、バーナードが横から羊皮紙を手渡した。そこには現在見つかっている転移装置の位置とその区間が書かれていた。

 

 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 

 

★複数転移先が登録できる転移装置

 

 ①研究棟 - ②倉庫棟 - ③一般棟

 

 ④研究所(パスワード不明のため、今登録されている転移先は見れないが、リセットして使用可能かどうか試す)

 

 ⑤倉庫棟 - ⑥中央転移公共地点

 

★1対1の転移先が固定の転移装置

 

 ①転移装置中継地点 - 古都グランヴェルの地下

 ②転移装置中継地点 - 巨大な島(嵐の巨人(ストームジャイアント)を倒した島)

 ③転移装置中継地点 - 南西の島(リザードマンが攻め込んでいた時差4時間の島)

 ④転移装置中継地点 - 人のいない小さな島

 ⑤航空リゾート 監視塔 下 - 航空リゾート 監視塔 上


-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 


「こうやって見ると結構あるな。そこの転移門が開くやつは後まわしか?」


 そういって、マートはすぐ横にある今は四角いブロックでふさがれている転移装置を指さした。転移門が開くタイプで鳥の糞で覆われた島に繋がっているものだ。その隣には起動していないが同じタイプのものがもう一つある。

 

「そちらは転移方式の転移装置とはまた異なっておりまして解析が不十分なのです。とりあえずはそのままにしておきたいと考えております。それにギルバ男爵の家宝の転移門のパネルと非常によく似ておりまして、とりはずす方法があるのではないかと推測しております」


「なるほどな、わかった。じゃぁ、これらを再設定するってわけか。一度設定してもまた変更は可能だよな?」


「はい。大丈夫です」


 バーナードの答えを聞き、マートは渡された表をじっと眺めた。いろいろと質問を繰り返しながら、その表に書き加えていく。


「じゃぁ、とりあえずこうかな……」


-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 

 

★複数転移先が登録できる転移装置

 

 【現状】

 

 ①研究棟 - ②倉庫棟 - ③一般棟

 

 ④研究所(パスワード不明のため、今登録されている転移先は見れないが、リセットして使用可能かどうか試す)

 

 ⑤倉庫棟 - ⑥中央転移公共地点

 

 【再配置後】

 ※移転先を再設定していずれの地点間も移動できるようにする

 

 ①ローレライ城内

 ②ウィード政務館内

 ③グラスゴー政務館内

 ④東グラスゴー政務館内

 ⑤研究所(※要注意)

 ⑥王都 邸宅内

 

★1対1の転移先が固定の転移装置


 【現状】

 

 ①転移装置中継地点 - 古都グランヴェルの地下

 ②転移装置中継地点 - 巨大な島(嵐の巨人(ストームジャイアント)を倒した島)

 ③転移装置中継地点 - 南西の島(リザードマンが攻め込んでいた時差4時間の島)

 ④転移装置中継地点 - 人のいない小さな島

 ⑤航空リゾート 監視塔 下 - 航空リゾート 監視塔 上


 【再配置後】

 

 ①ミュリエル島 - ナッガ

 ②ミュリエル島 - 古代港湾都市遺跡

 ③ウィード   - 巨大な島

 ④ウィード   - 南西の島

 ⑤ウィード   - ミュリエル島

 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 



「複数移転先が設定できる装置には、まず中心となる4つの拠点とあとはココ、王都ぐらいができると良いだろう。ナッガ、古代港湾都市遺跡は蛮族討伐隊の管轄だから中心拠点となるミュリエル島に、巨大な島、南西の島は開墾のサポートはウィードになるだろうからそっちに繋いで頑張ってもらおう。ローレライだと王都からも近いし目立ちすぎる。ケルシーは手が足りないって喚くだろうけど回せるのが居ねぇ。あいつなら出来るだろ、出来るだけ早く回すって言っておこう。それまでは頑張ってもらうしかないな」


 そう言ってマートはため息をついた。

 

「研究所に要注意とかかれておりますが、これは?」


「他の転移装置は内政官たちも利用することになるだろう。でも、ここには間違っても迷い込まないようにする必要がある。もしそれができないようなら他と繋げることは出来ねぇ」


 なるほどとバーナードは頷いた。

 

「パスワードというものが設定できます。転移先ごとに設定することができますのでご安心ください。ここに来れるパスワードはマート様の他はジュディ様、エリオット様、ローラ、モーゼル、そして私だけにしておきましょう」


「そうだな。それならこれで良い。とりあえずこれができるなら助かるぜ」


「畏まりました。そして、転移装置とは別にあともう1点報告があります」


「お、何だ?」


 マートの声は上機嫌だ。

 

「ドワーフたちから依頼されていました魔法装置の解析が終わりました」


 マートは首を傾げて、一瞬考えたが、ああと言って頷いた。以前巨大港湾都市遺跡の一角でみつけたミスリルの真っ白の全身金属鎧で1(りょう)をドワーフに一度預けたのだが、サイズ調整の部分がよくわからないと研究所に持ち込まれていたのだ。

 

「わかったのか?」


「約25%のサイズ調整ができるように魔法が組み込んであるようです。あまりオプションのない魔法のようでしたので、こちらにあった資料と照らし合わせました」


「オプション?」


「魔法を起動するための条件……とでも申しましょうか。魔法を使う場合、対象や範囲、時間といったものを明確にする必要があります。魔道具の場合、その発動する回路の中にそれをあらかじめ組み込んで条件付けする必要があるのです」


 ローラの説明にマートは首を傾げた。少し考え込んだが、よくわからなかったらしくまぁいいと首を振った。

 

「とりあえずドワーフには25%を意識してその真ん中のサイズの鎧をつくってもらえば、研究所でその魔法を組み込めるようになったってことでいいのか?」


「その通りです。既存のものでもその加工は可能です。サイズが違って使えなくなった鎧などの再利用もこれで可能ですね」


「そういう事になるな。だが問題はその魔法を組み込む手間と鎧を作り直す手間とどちらがコストが高いかという話だ。こっちのメンバーはかなり忙しいだろ? お嬢の方で大学を作ってそこで人を増やそうとしているが、まだまだ時間はかかりそうだ」


「たしかにそうですね。現状だと誰かがその仕組みを組み込むとなると何かが手薄になってしまいます」


「そうなんだよな。どこの部門も人が足りねぇ……。だが、これだけはどうしようもない。ちょっと着手が遅すぎたんだろうな。すまねぇがよろしく頼む」



読んで頂いてありがとうございます。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

いいね、評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] どっちもかなり重要な技術ですね。 鎧の方は討伐隊にかなり有用かも。体格や一部が通常の人間と違ってたりしてる人も多いでしょうから。
[一言] 人、それを実効支配と言う…
[一言] 転移装置だけではなく、鎧の調節機能も秘匿した方が良さそうですね。大量生産品でもある程度個人に合わせられる、というのはかなり貴重な技術だと思うので。
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