表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第49話 島に拉致された人々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

364/411

362 島

  

「島が見えてきたぜ。広いという話だったが、たしかにその通りだ。こりゃぁ、ミュリエル島よりだいぶ大きいな」


 操縦席に座るマートの声にジュディ、アニス、バーナード、モーゼル、(スネーク)、ネストルといった面々は魔空艇の窓から昼の太陽の光に照らされる眼下の島を眺めた。マートはバーナードとネストルにサポートしてもらいながら転移装置の設定メニューから得た転移先の座標を頼りに飛行してようやくたどり着いたのだ。その島は今回のきっかけとなった南西の島から北西にさらに200キロメートルほどの位置であった。

 

 魔空艇はゆっくりと島の上空を旋回した。上空から見るその島は中央になだらかで大きな山があり頂上は大きく窪んで湖になっていた。山頂近くは岩場であるが途中から森と草原となっていた。海岸あたりは岩場がほとんどだが砂浜もある。いくつか山のほうから海に流れ出る川があり、その川に沿ってかなりの面積にわたって畑と集落が作られていた。島の形はほぼ円形で周囲には大小多くの島が連なっている。

 

「島の真ん中の山の火口に湖があるだろ? その北側の湖岸にいくつか白い建物が見えるな。あれは遺跡じゃないか?」


 マートが示したところは距離はまだ遠く砂粒程度であるもの濃いグレーの岩場の中に白いものがぽつぽつと見えた。

 

「ということは、あそこが転移拠点かしらね」


「ああ、そうかもしれない。さて、どうするか。あまり近づくと島の連中に気付かれちまう」


 マートは機体を旋回させながら言う。


「とりあえず、この島に連れて行かれたという人たちの様子を知りたいわね。ダービー王国南部から連れ去られた人々のいったい何割ぐらいがこの島に送り込まれたのか……、川沿いに見えた集落は人間のものなのかしら。どこかにこの魔空艇を隠して調べましょう。人の居なさそうな島に一旦上陸するのがいいかしらね」


「私もそれが良いとおもうね」


「そうだな」


 ジュディとアニスの提案にマートはゆっくりと魔空艇の高度を下げると、静かに着水した。魔空艇はそのまま水上を滑るように手近な島の近くまで移動させるとアンカーを下ろした。

 

「俺はまず一人で身を隠して調べてくる。皆はアレクシアたちに連絡をとって良い作戦を考えておいてくれ」


 マートはそう言って、単身飛び上がろうとした。

 

(キャット)、待って。折角今日は私も居るんだから分担しましょう。といっても一緒に行くわけじゃないわ。魔術師(ウィザード)の目(アイ)の呪文を使うのよ。でも、この呪文は一つ欠点があるのは知ってるでしょう? 魔法を使う相手には見つかってしまう可能性があるって事。だから(キャット)は蛮族が拠点にしてそうなところを中心に。私は周囲の集落を中心に調査するっていうのはどうかしら」


 彼はなるほどなと頷いた。

 

「お嬢、そうしよう。じゃぁ俺は行ってくる」


 改めてマートは飛び上がり、他のメンバーに手を振ると中央の島に向かったのだった。


----- 

 

 マートが向かった山頂付近には、例によって白い継ぎ目のない石でできた四角い建物が並んで建っていた。いくつかの建物は崩れていたが、4つは辛うじて形をとどめている。それらの建物はそれぞれが巨大でいずれもワイズ聖王国の王城に比べても遜色がないほどである。数えると、大きな窓が縦に10、横に10、几帳面に並んでいた。そのすべてにかなり透明なガラスが埋め込まれていてきらきらと輝いて見えた。

 

 マートはその遺跡から少し離れたところに着地すると、ごろごろしている大きな岩の影を利用しながらその建物に近づいた。本来であれば足元も岩だらけで歩くのだけで精いっぱいの場所なのだが、そこは高い斥候、体術スキルに飛行スキルを組み合わせてすばやく静かに移動していく。

 

 近づいてみると、湖の周囲はリザードマンの卵でかなり覆われており生臭い空気がどんよりとしていた。山頂近くには細い道を押し合いへし合いゴブリンとリザードマンが忙しく行き来していた。その行列はかなりの数らしく麓までずっと続いている。そいつらは樽を担いで上がってきて、1つの建物にそれを運び入れているようだった。運んでいるリザードマンとゴブリンだけで万は超えるだろう。マートは周囲を見回した。警備、監督していると思われるキロリザードマンやリザードマン、ラミアの姿は見えるが、ダービー王国の王城では見られた空を飛んで警戒するゴブリンメイジの姿は全くない。

 

“建物が気になるね。ラミアぐらいなら幻覚で姿を隠して行っても大丈夫じゃない?” 

 

 ニーナが念話で話しかけてきた。

 

“運んでるゴブリンにゴブリンメイジが紛れ込んでねぇとも限らねぇ。ここは変身するしかねぇだろ”

 

“最近慎重すぎない? つまんないよ。それにさ、こんなのは姿を隠してさーって行った方が逆に安全……”


 ニーナがブツブツ呟くが、マートは首を振ってリザードマンに変身した。横によけておいたマジックバッグと魔剣を腰に付け、そこから空の樽を取り出し肩に担ぐ。

 

“これのほうが安全だって、いくぜ”

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 慎重なのはいいが、変身も問答失敗してバレばかりだし、どっちもどっちかなぁ。
[一言] 敵に見つからないほうが良いのですが、見つかってもニーナが喜ぶので安心ですね。
[良い点] おや?ニーナの様子が… なにかのフラグかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ