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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第47話 時差4時間を求めて

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355 遺跡


 族長に聞いたその島はほぼ平らではあるが大小の岩が積み重なっており見通しはあまりよくない。その島は幾ら掘っても真水が湧かないそうで、木々などもほとんど生えておらず人は住んでいなかったらしい。北側にだけ砂浜があり、それ以外は岩だらけだ。

 

 ライトニングに乗って近くまで来たマートとモーゼルはまず遠くからその島を見た。ところどころにリザードマンの姿は見えるが、中心部にあるという遺跡のところまでは見通せない。


「モーゼル、すぐ戻るからちょっと待ってな。ライトニング頼む」


 マートは精霊呪文を唱えてライトニングの背からふわりと浮き上がった。モーゼルは複雑な表情をしていたが彼は軽く手を振って上昇し続けた。


 上空に500メートルほど上がると、島の様子を見る。たしかにリザードマンの姿はかなりある。おそらくこの島だけで100体は超えているだろう。だが、ファクラの運河であったようなリザードマンの卵はあまり見当たらず、水際に彼らが漂着したのであればあるはずの船の残骸などもない。人間が住まない島で大繁殖してしまったという訳ではなさそうだった。

 

 そして中央に岩が変な形で並んでいる、それを確かめるためにマートは中央近くに視線を移した。その遺跡が輪廻転生の理を狂わせた魔道装置に関わるものであればとマートは願った。中央はかなり掘りかえされている。それを見るとおそらく何らかの建物があり、その壁が崩れて変な形に見えていたのだと推測できた。その石造りの建物はおよそ10m四方ほどで、ほぼ中央に1m四方の段が3つ並んでいた。マートはその1m四方の少し高くなっている段の形に見覚えがあった。同じようなものをどこかで見た気がする……。

 

 マートが考え込んでいると、そこにふわりとリザードマンの像が浮かんだ。最初は半透明であったが、徐々に色を増しそれは実体となる……。

 

 それは転移装置だった。倉庫棟や一般棟、中央転移公共地点にも似たような形のものがあったのをマートは思い出し、思わずため息をつく。残念ながらこの遺跡は転移場所の遺跡でしかない可能性が高くなった。

 

 マートは島の端に降下した。すこし集団から離れているリザードマンを探す。それはすぐに見つかった。そのリザードマン3体はこれから海を泳いで別の島に移動しようとしているようだった。背後から近づく。

 

(ポイズン)』 -昏睡毒 


 マートの毒呪文でリザードマンは振り返ることすらなくそのままどさりと地面に倒れた。上位種なら抵抗できたかもしれないが通常種の、それも魔法適性を持たないリザードマンであれば抵抗の余地はほとんどない。マートはそのうち1体を岩陰に引きずり込んだ。

 

変身(メタモルフォシス)』 


記憶奪取(スティールメモリー)』  

 

 目の前のリザードマンを参考にリザードマンに変身、そして記憶を奪う。その上で彼らがどこから来たのかを思い出す。

 

 このリザードマンは、ダービー王国の都市、古都グランヴェルの繁殖場で生まれたリザードマンらしかった。マートは知らなかったが、古都グランヴェルの地下遺跡には転移装置があったようで、そこから転移をしてさらに別の場所に移動した。その別の場所は窓はなく石造りの広い部屋であった。壁の大半は崩れていたものの、崩壊を免れた壁際にはここと同じような転移装置がいくつか並んでいた。そして、その中の一つを使ってこの島に来たということらしい。

 

“転移装置の中継地点じゃな。かなり崩れているがまだ使えるものがあったのじゃな”


 魔剣がマートに呟いた。魔剣自身はマートの見ている記憶は見れないはずではあるが、彼が考えたことを組み合わせて推理したのだろう。


“中央転移公共地点のようなものか。魔剣の時代にも有ったのか?”


“数は少なくなっておったがまだ存在しておった。ちなみに中央転移公共地点は儂は聞いたことがないので失われておったのじゃろうな。今の時代にはすべて失われていると思っておったのじゃが……”


“数少ないというのなら、その場所は知らねぇのか?”


“残念ながら場所までは知らぬ。リザードマンの記憶から辿れぬか?”


 リザードマンはここに来るまで数日その中継地点に滞在していたようだった。その時にその広い部屋の外にも出ていた。その部屋は巨大な石造りの建物の中にあったが、背後の山が崩れて半分以上崩壊している。そこは古都グランヴェルに比べて暖かく、山に囲まれた土地だった。北西に山頂には雪をかぶったかなり高い山が見えたもののそれ以上のものは判らなかった。

 

“こいつが見た光景で調べるしかないが少し時間がかかりそうだ。ローレライに連れてくか”

 

“そうじゃの”


 放置しておくと、この島だけでなくまた別の所に蛮族が現れるかもしれない。だが、転移装置に飛び込むのは無謀だろう。リザードマンはこのまま牢につなぎ記憶を探ってその中継地点を探すしかない。マートはそう考え、時差4時間の場所を探すのを一旦中断してローレライに戻ることに決めたのだった。

 



読んで頂いてありがとうございます。


今回のお話はここで終わり、次回は別の話になります。

ですが、少しリアルが忙しく、申し訳ありませんが1週間程お休みを頂きたいと思います。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

いいね、評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 転移装置の中継地点 複数?場所に繋がってるのなら、期待持てそうですね。 [一言] ドナドナされるリザードマンw 更新気長に待ってます。
[良い点] 少しずつ謎が解明されていく感じが良いですね。でもこれほどの文明が何故滅びたのか、または滅ぼされたのかを想像するだけで恐ろしいです。 [一言] 次回の更新をお待ちしております。
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