345 王城での戦い 2
「こいつはなかなかヒリつくね」
アマンダがそう言ってニヤリと笑う。その横でシェリーは真剣な顔で剣と盾を構え、目の前に鎮座するレッサードラゴンをじっと見つめていた。その左右にはキロリザードマンが3体、そして、レッサードラゴンとリザードマンの後ろにはレインボウラミア、ヴィヴィッドラミア、ラミアがそれぞれ1、3、4体だ。
「うむ、ラミアたちが厄介だが、ドラゴンがいて手が出せぬ。まずはキロリザとドラゴンか」
そう言って、シェリーは前に踏み出た。それに反応してレッサードラゴンが右前足で薙ぎ払ってくる。巨大なカギ爪がシェリーを襲った。彼女は咄嗟に盾を構え、完全防御を発動させようとするが、直前でそれを止めた。アマンダの使う魔法無効化の効果範囲が近いのだ。ぎりぎりの立ち位置で今は発動させれるかもしれないが、この受けた衝撃でアマンダに近づくことになれば解除されてしまう。完全防御は1日に1回しか使えない技だ。
一瞬の逡巡の後、シェリーはとっさの判断で聖盾の下部を床に付け盾そのものはすこし斜めにして構える。ガツッと巨大な音がして巨大なカギ爪の衝撃で盾が床に食い込み、床石が割れたものの、盾を持つシェリーへの衝撃はすこし緩和された。とは言ってもレッサードラゴンの膂力は尋常ではない。シェリーは盾ごと吹っ飛ばされた。そして、その先にはアマンダ。だがアマンダは前世記憶によってオークジェネラルと同等の能力をもち、その身体強化された力もレッサードラゴンまではいかないとはいえ尋常ではない。吹っ飛んできたシェリーをがっしりと受け止めた。
「ちっ、さすがにレッサードラゴンだねぇ」
隙と見たキロリザードマンが3体、2人に槍を構えて突っ込んできたが、アマンダは巨大な矛を片手で振るい、槍の穂先を薙ぎ払った。シェリーもすぐに体勢を立て直し、盾を構えつつキロリザードマンとの距離を詰める。3m離れたのを見計らって聖剣で薙ぎ払った。このあたりの呼吸は訓練の成果である。聖剣を手に入れた時から、このような訓練は何度もしてきたのだ。キロリザードマンの1体は胴体が真っ二つ、もう1体も両腕を斬られてほぼ戦闘不能となった。
2人はお互いに視線を合わせ、軽く頷いた。
「そうだね。ジュディ、ブライアン、こっちは出来るだけ早く片付けるつもりだが少し時間がかかっちまいそうだ。頑張って耐えておくれ」
「わかってるわ」
そう返事をしたのはジュディだった。ブライアンは無言のまま、手にカギ爪を生やしジュディを庇う様に前に出る。2人の前には嵐の巨人と海の巨人、特に嵐の巨人の身長は10mを超えており恐ろしい迫力だ。
「ライラ様から預かってきたものもあるの。これで少しは……」
『人造兵士生成』 -岩-
ジュディが呪文を唱え、何か丸い石の塊のようなものをブライアンの前に投げた。その石の塊はその場でまばゆい光を放つ。そして城の床部分がその光の中に吸い込まれていく。光が消えたときには身長2m程の岩のゴーレムが出来上がっていた。
この丸い石の塊はゴーレムを瞬間に作ることができる魔道具でワイズ聖王国に伝わる宝物であり、一度使うと再利用はできないらしい。本来は何時間も儀式をして作り出すものを1瞬で作り出すことができるのだから、非常に便利なものだ。彼女は国王から2個預けられていた。1個は以前使ってしまったので、これが残り1個しかなかったが、救出に行くことができないライラ姫はそれを彼女に託したのだった。
「ギャヒッ、ヒッヒ…… (小賢しい事をしおって。しかしそれぐらいすぐに元の岩の欠片にしてやろう)」
そう言った嵐の巨人の背後でうぉーーっと多くの叫び声がした。
「忘れるなよ、俺達も居るぜ」
分断された1番隊の面々が2体の巨人の背後を襲おうと突撃してきたのだ。青い肌をした海の巨人が、舌打ちをし、自分の6mの身長を超える太い金属製の棒を構えてその前に立ちふさがった。大きくその巨大な棒を振り回す。その重量はかなりのものなのだろう。だが、蛮族討伐隊も百戦錬磨の者たちが集まっている。その巨大な棒は空振りに終わった。
『魔法の矢』
『魔法の矢』
『魔法の矢』
『魔法の矢』
『魔法の矢』
「ギャッ、ヒッ…… (ちっ、雑魚めが。こんなものは効かぬ)」
蛮族討伐隊の一部から魔法の攻撃が海の巨人に行われた。言葉とは裏腹にいくつかが海の巨人の皮膚を傷つけたようで、青い血液がその肌を流れた。
「よし、効いてるぞ」
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