32 泉の精霊
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泉の精霊は明らかに落胆したようだった。少し考えて、彼女はこう続けた。
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マートは少し考え込んだ。あの老人とグレタとのつながりのようなものだろうか。以前、魔剣は精霊魔法を使うには、精霊と契約を結ぶ必要があると言っていた。もしそうなのであれば、決して悪いことではないだろう。
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泉の精霊の姿が、すこしゆらめいた。彼女は手を伸ばし、マートの左腕に触れる。触れたところに、水色の波を連想させる文様が描かれた。
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そう告げて、泉の精霊はぼやけ、姿がみえなくなった。
「ウェイヴィ」
マートは左腕に浮かぶ文様にやさしく触れながら言葉に出した。
輝く泉のそばに、一糸まとわぬ美しい女性が姿を現した。その姿は煽情的であったが、同時に神聖なものも感じられた。
「泉の精霊?猫が呼んだの?」
ジュディは彼女が裸なのを見て、すこし顔を赤らめつつもそう訊ねた。
「ああ、そのようだ。ありがとう、ウェイヴィ」
マートは、その女性に近づき、軽く抱き合った。
「猫よ、そなたとの絆に基づいて、私は姿を現した。そなたの望むヤドリギの枝を授けよう」
「感謝するよ、ウェイヴィ。そして、グレタにも感謝を」
マートは、差し出されたヤドリギの枝を受け取った。
「猫よ、我らの絆が長く続くことを願う」
ウェイヴィはそう言ってにこやかに微笑んだ。
場の雰囲気に気おされていたアニスが、ようやく落ち着きをとりもどした。
「猫、泉の精霊となにか約束したのかい?」
「最初は、伴侶になって欲しいといわれたんだが、それは無理だと答えたんだ。すると、次に名前と契約ではどうかと聞かれた。それで、ウェイヴィという名前を彼女にあたえたんだ」
「それは、ヤドリギの代償…に?」
「ああ、そうだ」
ヤドリギの代償と聞いて焦ったような顔をするジュディに、マートは微笑んで気にすることはないと首を振った。
「何も困ったことじゃないさ。ウェイヴィはとても魅力的だし。精霊魔法使いとして、だれかと契約を結ぶ必要はあった。俺はウェイヴィと契約を結べてとてもうれしい」
ウェイヴィは、さらに身体をマートに絡ませるようにして、きつく抱きつき、微笑んだ。
「そ……そうなのね」
戸惑いながら、ジュディはそう言った。
「泉の水は活力の泉、疲れを癒す効果があるわ。猫、どうぞ」
「ありがとう、ウェイヴィ」
マートはそういい、血で汚れた手を綺麗に拭ってから、泉の水を掌ですくって飲んだ。ランペイジエイプとの戦いに疲れた身体に、冷たい泉の水が染み渡り、疲労がたちまち消えた。
「これは、すごい。他の3人に与えてもいいか?」
「猫、あなたが望むのならかまわないわ。でも、泉を血で汚さないように注意して」
「ああ、わかった」
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