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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第38話 古代港湾都市遺跡探索と魔法研究

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297 探索

   

 がらんと広い部屋の中は、片隅に豪華な装飾のついた大きい箱が8つ並んでいるだけで、あとは何も残ってはいなかった。マートはすこしがっかりしつつもその箱を開けていく。1つ目、2つ目は空だったが、3つ目にはなんと真っ白の全身金属鎧が一式、箱の中に鎮座するようにして入っていた。見たところ、普通の人間より大柄なマートにも余裕があるほどのサイズである。錆びなどが浮いていないところを見ると、何か魔法的な付与がなされているのかもしれない。試しに兜を持ち上げてみるとかなり軽かったが、硬い。何らかの魔法効果が付与された鎧というのではなく、ミスリル製なのかもしれない。それだとかなりの防御効果が見込めるだろう。色からして儀礼用という可能性もないわけではないが、確認が必要だ。

 

 あとの5つはどうかと見てみると、2つは空だったが、残り3つにはまったく形の同じ全身金属鎧が入っていた。魔剣の識別呪文を使うかどうか迷ったが、この4つの全身金属鎧の識別は後回しにすることにした。全身金属鎧となると戦争などには向くが、音がうるさくて動きが阻害されるので探索には向かないだろう。この4つの全身金属鎧の入った箱は背中のマジックバッグに収納し、マートは探索を続けたのだった。

 

 次は手前の右側の扉だ。ここも同じようにドアノブが回らないが、やはり解錠の呪文が使えるワンドを使って開けることができた。中は先程の部屋と同じように広く、まるで倉庫のような感じであり、残念ながらここもほとんど空っぽだった。ただ、部屋の隅に武器立てが2つ置かれており、そこに6本の槍が残されている。武器の場合は持つだけで呪われるという話がよくある。魔法感知には反応があるのでなんらかの魔法効果があるのだろう。念のために魔剣にそのうちの1本を識別してもらうことにした。

 

“魔法で強化された槍……じゃな。手入れが不要で、鋭い穂先を持つ。あと、長さを30㎝~3mの間で変える事が出来る。鋭さは強欲の剣ほどではないの”


 ふつうの魔法の武器、呪われているということはなさそうな感じであったが、性能は微妙だった。もちろん微妙というのはマートにとっての話であり、売るとすればかなりの金額になるだろう。マートはこれら6本の槍も全身金属鎧と同様にマジックバッグにしまい込んだ。

 

 鎧と武器ということはここは騎士団か何かの倉庫という事なのだろうか?そのような事を考えつつ、マートは探索を続けた。次の部屋も同じような手順を踏みつつ中に入る。そこも中はほとんど空だが、直径2mほどの半球型の魔道具が3つ残っていた。その次の部屋は手のひらに乗りきらないほどのサイズの楕円形で、底の部分が透明で平たいスープ皿のようなものが11個、次の部屋には1mほどの棒型の魔道具が8本、一番奥の右の部屋は金属製の円筒で、円筒の円の直径は8㎝程、長さは20㎝程のものが6個みつかった。どれもどのような効果のある魔道具かはわからないが、これほどの魔道具がみつかるとはかなりの収穫である。すべて後で識別することにして、マートは一旦すべてをマジックバッグにしまい込んだのだった。

 

 最後にマートは一番突き当りの扉を開けた。そこは再び小さな部屋となっており、さらに奥に扉があった。だが、この部屋はいままでの部屋と明らかに異なっている点があった。奥につながる扉の隙間からぼんやりとだが灯りが漏れてきていたのだ。

 

 扉は相変わらず分厚くてマートの視力でも中は見通せなかった。警戒しながら扉を開けようとする。やはりカギがかかっていた。解錠の魔道具を使ってカギを開け、慎重に扉を開ける。

 

 ギギギギッ

 

 さび付いた扉は全く無音という訳にはいかなかった。覗き込むと中は研究室のような感じでテーブルが複数あり、そのテーブルの一つの前には白い上着を着た初老の男が一人立っている。彼の前には1本の剣が乗っていた。

 

「おお、ようやく戻ってきたか、戦況はどうじゃ?」


 初老の男はマートのほうを見てそう尋ねた。まるでマートを知っているかのようなそぶりだが、マートは見たことのない男だ。

 

「ん? 戦況?」


 誰かと間違ったのだろうか? しかしこんなところになぜ人が? マートは首を傾げながらそう尋ね返した。

 

「もちろん、蛮族どもとの戦争の状況にきまっておるではないか。他に戦争があるとでもいうのか。ドラゴンの前世記憶をもつオークジェネラルが反乱を……ん? その目……、そなたは何者だ?人間ではないな」


 男はテーブルの上の剣を取ろうとした。だが、その手は剣をすり抜けた。よく見ると男の足もぼんやりと途中から透明になっている。

 

“気を付けよ、そやつはレイスじゃ”


 魔剣の念話が届く。レイスというのはアンデッドの一種で魔法使いが永遠の命を得るために肉体を捨てた姿だと言われている。だが、いくら肉体を捨てて永遠の命を得たとしてもあまりに長い間生きていると正気を保っている事が出来なくなり魔物となってしまうのだという。肉体がないため、普通の武器でレイスを傷つけることはできないと言われていた。

 

「ようやく出来上がったこの聖剣を盗みに来たのじゃな。ゆるさんぞ!」


魔法衝撃波マジックショックウェーブ

 

 そのレイスはマートに魔法を放ってきた。

 

読んで頂いてありがとうございます。


一迅社さまより書籍は絶賛発売中です。できればよろしくお願いします。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

見直してはいるのですが、いつまでたっても間違いが無くならない……申し訳ありません。


評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] おや、無理を言いますが話末の展開が、珍しくわずかにすわりが悪いような。レイスの登場が突然で読み込みが悪くて理解しにくいのかなと思います。
[良い点] ピール王国時代を知る人?がついに出てきた。 話を聞くことができたらいいな。 [気になる点] 聖剣はピール王国からワイズ聖王国に引き継がれているはずだけど、初老の男の言う通り部屋にある剣が本…
[良い点] お宝ザクザクw 鎧や槍はどうするかな。一つらマートが使うかもしれませんが、アマンダ等強い部下達に下賜でもするのかな。
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