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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第36話 エルフの森の異変

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282 巨大集落探索3


 前回分でウェイヴィの口調を何故か記憶違いをしてエバ風に書いてしまいました。混乱させてしまい申し訳ありません。

 いつも通り10時に公開した後、感想欄でご指摘を頂き午後の3時頃に訂正は入れたのですが、それまでに読んでおられた方は多数いらっしゃると思います。ストーリーそのものは変わっていませんが、ご確認をお願いいたします。

 

 マートはいつものように幻覚呪文で姿を隠しつつ、巨大集落を見て回ることにした。まずは陸地側の外周からだ。巨大集落の外側には広大な畑が広がり、区画ごとに分かれて人間とゴブリンがそれらを耕していた。それを見る限り、人間は洞窟のグループ単位で作業をさせられているようだったが、30あるはずのうち10程のグループが居ただけだった。とは言っても、あわせて7千人近くは居そうだ。洞窟に居残っていた男が1つのグループは500人程と言っていたが、もう少し多いグループもあるのだろう。

 かなり広い範囲で分散して作業をしており、オーガやゴブリンが見張りや作業指示を行っていた。作業指示をおこなっている中にはなんと人間の言葉を喋っているものもいた。おそらく前世記憶が人間なのだろう。そのように話している連中は、マートが巨大空洞で少し感じが違うと思ったのと似ていた。ということは、巨大空洞で少し感じが違うと思った連中は皆前世記憶が人間なのかもしれない。


 巨大集落そのものは浅いが幅の広い水堀と柵で2重、ところによって3重に囲まれていて、ところどころに見張り台が設置されていた。人間の街のように身分確認は行われていないようだ。ひっきりなしに蛮族の集団が出入りしている。


 他の人間はどこに居るのだろう。マートは首を傾げながら、次に巨大集落の内側を見て回ることにした。人間の集落とちがってきちんとした建物がないので、屋根の上に潜んだりすることが出来ず、身を隠すところが少ない。変身呪文を使って蛮族に化け、併せて幻覚呪文に頼りながらの探索となった。

 

 しばらく探索を続けると巨大集落の内側でもいろんな所で人間が働かされているのがわかった。こちらは布を編んだり縫ったり、あるいは料理を作ったりといった作業をさせられていた。同じように洞窟グループ単位ぐらいで行動しており、こちらのグループのほうが、農作業をおこなっているグループよりも多く、おそらく倍近い数だろう。こちらにも前世記憶が人間と思われる蛮族が一緒に居て人間に乱暴に作業指示をしていた。

 こちらの人間の数は1万5千人ほどだろうか。農作業をしている人数と合わせると2万2千人という数になる。それぞれの場所はかなり離れており、周囲には蛮族も多く居る。この状態で人間を救出するというのはかなり厳しそうだった。


 内部に住む蛮族は、およそ30万体とマートは見積もった。様々な種類も居るしその上位種も居る。最上位種はさすがに集落の中をうろうろはしていないのが救いだが、こんなど真ん中で呪文が破れ正体が露見したらと思うとぞっとした。

 

 巨大集落の中央は、かなり広い台地のようになっており、そこには色とりどりで高さが7mほどあるこちらも巨大な布のテントのようなものが張られていた。

 

 オークジェネラルやオーガキングともなればかなり体躯は大きくなるが、さすがに7mは要らないはずだ。ということは、こっちに巨人族が居るのか。そう考えながらマートは物陰に隠れ、じっとテントを見つめた。布程度なら遠く離れていても透視が可能である。

 

 テントの中には、マートの予想通り巨人族が居た。身長5m程の緑色の肌をした 森巨人フォレストジャイアント、黄色い肌をした 丘巨人(ヒルジャイアント)に混じって、6m程で肌の茶色い山巨人(マウントジャイアント)や青い肌の海巨人(シージャイアント)がぽつぽつと居た。フォレストやヒルはオーガとオーガナイトの間の強さ、マウントやシーはオーガナイトとオーガキングの間程の強さだったはずだ。

 

 じっと見ていると、マートはテントのほぼ中央に巨大な寝台があるのに気が付いた。そしてそこには、身長は4m程、銀色の肌の巨人、 霜の巨人(フロストジャイアント)が寝そべっていた。その横にリザードマンの最上位種であるギガリザードマン、そしてラミアの同じく最上位種、レインボウラミアが居る。

 

 巨人の最上位種は霜、炎、雲の三種類あり、いずれも伝説の存在だったはずだった。その三種類すべてが存在し、蛮族を率いているというのはアマンダから聞いていたし、いろいろ調べてはいたが、実際に見るのは初めてだ。霜の巨人(フロストジャイアント)はゆったりと寝そべって半分目を閉じている。寝ているのだろうか。マートが今いるのはそこから500m、ワイバーン殺しなら届くかもしれない。寝ているところを狙撃すれば……?

 

 マートがそう思った時、 霜の巨人(フロストジャイアント)はぎろりを目を開けた。縦長に濃い緑色の光彩が入った金色の目がマートの居るほうをじっと見た。マートにはその目が爬虫類の目に見えた。テントの布などあって、普通はこちらは見えないはずだが、不安に駆られてマートはあわてて身を隠した。

 

“あの目はきっとドラゴンだよ。僕たちの視線に気が付いたね。どうやってわかったんだろう”


 ニーナが言った。

 

“ああ、わからねぇけど、やばいな……あれは。一旦引き上げよう”


 えー、と不服そうなニーナの念話は無視してマートはそのまま港の方に向かい、ワイアットやアレクシアたちの待つ船に戻ったのだった。


-----


「……とまぁ、こんな感じだ」


 舟にはすでに連絡を受けてジュディ、シェリー、アニス、オズワルト、アズワルト、アマンダ、パウルといった面々もやってきていた。皆マートの説明を聞き、さてどうするかと考え込んだ。オズワルトがまず口を開いた。

 

「ということは救出作業をするとしたら人間が洞窟に戻される夜になるのでしょうか。夜の警備体制を確認しないといけませんが、昼間に居たのは上位種どまりでオーガキングやオークジェネラルといった最上位種は居なかったのですね。どれぐらいの数になりますでしょうか?」


「昼間は地下空洞に居たのは100体程度だったかな。上位種はそのうち2割ほどだ。それぞれの洞窟グループにくっついて作業を監視してたのは30体ずつぐらいだったんじゃねぇかな」


「洞窟グループは500人程度居るのでしょう。30体ぐらいであれば、倒して逃げ出すことが出来そうなものですが」


 アズワルトが不思議そうに呟いた。

 

「監視は30体だが、周りには他の蛮族はいっぱい居たからなぁ。監視だけ倒しても逃げ出すのはむずかしいんじゃねぇかな」


「なるほど。敵は監視役だけではないと。すると逃げ出すのはむずかしいでしょうな」


 オズワルトが納得したようにつぶやいた。

 

「でも、地下空洞に行けば、夜は監視役だけになるんじゃないのかい? それなら1000体だろ、その程度なら急襲して一時的に地下空洞を占拠、転移門を使って救出するってことで不可能ではないような気がするね」


 アマンダがそう言ったが、アニスは首を振った。

 

「そう判断するのは夜の警備体制を確認してからだね。気づかれたら、(キャット)の言うやばい 霜の巨人(フロストジャイアント)が来るんだろう? ちゃんと見込みが立ってからじゃないと危険すぎて救出作業はできないね。あと、パウル、2万人が居るとすれば、救出に転移門呪文が必須になる。受け入れる先の準備はできそうかい? さっきジュディ様にお迎えしてもらったけど、転移門ってのはそんなに広くない。ちゃんと整理しないと大混乱になるよ」


「そうですね。できれば洞窟単位で誘導したいものですが、それでは時間がどれぐらいかかるか……、きちんと計画を立てたほうが良いですね。先程のお話では体が弱っているものも居るとのこと。受け入れ側の準備も必要ですね」


 パウルが考え込む。その横で、シェリーが立ち上がった。


「マート殿、その巨人というのは聖剣の勇者である我々が倒さなければいけない邪悪な龍ではないのか? ならば油断している今がチャンスではないか?」


 ワイアットが慌てて首を振った。


「シェリー様、30万の蛮族を相手に奇襲ということですか? さすがにそれは難しいかと。マート様の仰る2万人の救出だけでも危険なのです。騎馬隊と我々蛮族討伐隊の戦闘員を併せても3千を満たぬ人数です。それに救出作業のほうにジュディ様は必須となりますので、奇襲のほうには参加できません」


「むー、無理か」


 シェリーは口をとがらせる。


「でも、救出作業をするのに、時間はかかりそうなので。何かの陽動は必要かもしれません。見た感じではかなり火には弱そうな印象を受けました。別動隊を作り、火をつけて回るなどはできないでしょうか?」


 アレクシアが考えながらそう発言した。


「火か、それは良いかもしれないね。できれば船だけでも焼き払っちまいたいとこだけど、油を撒けばどうなんだろう? 水の上に油はたしか浮くよね。うまく港全体に火が回らないかねぇ」


 アニスがエリオットに尋ねる。エリオットは確かに浮くはずだがと答えたが焼き討ちに関しては首を傾げる。

 

「火をつけるとなると燭台用の油ですか? はたしてどれほど用意できるか……」


 パウルも考え込む。それを見てマートが口を開いた。

 

「ちょっと会議が長くなったな。これ以上話をしてても進まねぇだろ。一旦解散しようぜ。夜の警備状況、避難誘導の体制、他にも油の準備? 作戦が決まらねぇと騎馬隊や蛮族討伐隊の段取りも決まらねぇ。今晩は無理そうだな。決行できるにしても明日の夜だ。夜の警備状況は俺の方で調査する。明日の朝にもっかい会議をしよう。それまでいろいろと考えてみてくれ」


読んで頂いてありがとうございます。


一迅社さまより書籍は絶賛発売中です。できればよろしくお願いします。



誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 蛮族だけで30万体とは凄まじいですね、人間でも30万といえば大都市と言ってもおかしくないくらいですから、蛮族だと身体の大きい分三倍とか五倍になって100万都市くらいの威圧感がありそうです。 …
[気になる点] ふと思ったのですが、前世記憶が人間の場合は前世記憶の進化は起こるのでしょうか。進化するとしたら人間の次は賢者とか英雄とかかなぁ。でも人間が進化するっていうのはちょっと想像しにくいかも。…
[一言] 霜の巨人がドラゴンの前世記憶持ちか。だが、巨人の最上位種は他にも炎、雲が居るし、最悪三体ともって事も有るのか。数もそうだが、普通に戦ったら人間側に勝機無さげだなぁ。
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