表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第33章 ハドリー王国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

255/411

254 激突1


 ニーナは、飛び出した勢いで、宙に浮いたまま右手突き、左脚回し蹴り、左手薙ぎ、右脚蹴りと立て続けに放つ。だが、ハーマンの全身は白銀色に輝いており、カキンカキンという甲高い音がしただけでニーナの攻撃は全く効いていない様子だった。ハーマンはニーナの攻撃を忖度することなく、両腕を振るう。ニーナは肘をそろえて防御するが、殴られた衝撃でそのまま吹き飛ばされた。くるりと回って着地する。

 

「さすが、ミスリルだね。傷1つつきやしない。面白いね」


 その横で、マートは2本の剣を抜き、もう一人の男を待ち構えた。衛兵隊長の格好をしている男で、エイモスはノーマンと呼んでいた。


「その命、頂くっ」


 その男は、ニーナとハーマンの戦いには目もくれず、まっすぐにマートに斬りかかった。マートはその剣を2本の剣で捌くのが精一杯だ。

 

「やるな」

肉体強化(ボディブースト)

 

 マートは身体を回転させるようにしながら、2本の剣で攻め立てる。ノーマンの剣の腕は★4はありそうだった。もしかしたら★5かもしれない。彼は蛮族や魔獣の特徴をもっておらず、おそらく普通の人間だ。マートは魔獣スキルで強化をした筋力と敏捷度で押してみる。しかし、ノーマンは堅実にその力をうまく逸らせ捌いていく。

 

“向こうのほうが上手(うわて)じゃぞ。能力に頼り、訓練をさぼっておったツケが回ってきたのじゃ。このままではこちらのほうが先に疲れるぞ”


 得意げに魔剣が話しかけてきた。

 

“うっせぇ、こうすりゃどうだ”

生命力吸収(ドレインバイタリティ)』  

 

 マートは例によって無言で呪術をつかった。だが、呪文はノーマンには効かない。魔法の素質が高いのだろう。

 

“ニーナが顕現しておる間、そなたの呪術は★3、生命力吸収が抵抗されたということは、すくなくとも素質☆3はありそうじゃな”

 

“じゃ精霊ならどうだ”

“ウェイヴィ、頼むぜ”


氷結(アイス フリージング)』 


 ノーマンの右足が氷に覆われた。ノーマンは驚愕の表情を浮かべつつバランスを崩し片膝をつく。その衝撃で氷は砕けたが、ノーマンの足は止まった。その隙を見逃さず、マートは左手の剣で薙ぐようなしぐさでフェイントを入れつつ、右手の剣を突き出した。剣はノーマンの右肩を深く突き刺さる。マートは跳ね上げるようにしてその剣を抜いた。ノーマンの傷口から血が零れた。“神聖魔術★4を強奪しました”と通知が来た。強欲の剣の能力だ。こいつは神官戦士だったらしい。それも★4というとかなりのものだ。だがこれで魔法が効くかもしれない。強奪したスキルは一度使うと持ち主に帰ってしまうが、使わない間は相手も能力を失ったままだ。

 

治療(キュアウーンズ)』 


 ノーマンは傷口を抑えつつ、呪文を唱えたが何も効果が発生しない。顔を歪めながら左手で剣を持ち直しゆっくりと立ち上がった。右腕はだらんと垂れたままだ。まだ血は止まっていない。

 

「おのれ、まだだ」


<速剣> 直剣闘技 --- 2回攻撃


 ノーマンは、少しふらついては居たものの、気力を奮い立たせ突っ込んで来た。マートは防御に専念し、2本の剣でそれぞれを受けた。肉体強化で筋力が上がっていたおかげか、かるくしびれる程度だ。だが、このままでは攻撃に移れない。そのうち、魔法で不意を突くのもできなくなるだろう。マートは少し焦りを感じた。

 

「どうして、エイモスを助ける。あいつは蛮族の手下だぞ」


「私は従う」


「ちっ、こいつは呪いをかけられてやがるのか。魔法適性が4あるくせによ」


 そこに人影が屋根の上に飛びあがってきた。


「何をしている。さっさと片付けんか。空を飛ぶ魔道具をもっているのはそなたら2人だけなのだぞ」


 エイモスだった。100人ほどの部下たちは昇階段を探して右往左往している。ノーマンは傷口を抑えながら片方の手にもった剣を構えている。ニーナは目にもとまらぬ速度でハーマンに拳を連続で打ち込んでいた。だが、ハーマンはダメージを受けた様子もなく足を刈る回し蹴りを放つ。ニーナは軽く飛び上がりそれを楽々と避けた。

 

「ハーマンとノーマンの2人が手こずるとはな。1人と思ったら、なるほど、英雄と呼ばれる陰には腕の立つ護衛が居るという事か。それも女とはな。いい身体をしているではないか。儂のものにしてやろう。ノーマン、フラフラするな。儂が手を貸してやる。二人でマートを先に潰すぞ。ハーマン、その間、その女の相手をしておけ」


読んで頂いてありがとうございます。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おお、強欲の剣の能力が発揮されたのって描写がある中では今回が初めてかも。 奪える能力はランダムでちょっと使い勝手が悪いかもしれないけど、今回のように戦闘に大きな影響を与える能力を奪えたらも…
[一言] 訓練サボってたつけがきたな。2対1になるし、ニーナも中々苦戦中のようだし、撤退しかないかな?
[良い点] マートは接近戦闘が苦手とは言っても魔剣の明るい口調から察するに何とかなりそうなのですがね。 [気になる点] ここはマートらしく搦め手や手数で勝負でしょうか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ