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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第28章 政変

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218 人間の言葉を話す蛮族


“マート、こいつは楽しみだね。どんなのが来るんだろ。今クローディアを倒しちゃダメだよ。せっかくの敵が逃げていっちゃう”


 マートがどうするか焦っていると、相変わらずの調子の念話がニーナから届いた。焦っていたのがばかばかしくなる。おかげで気持ちが切り替わり少し余裕ができた。クローディアも逃げてるだけで攻撃してこないのなら、違ったやり方もある。

 

 クローディアとマートの鬼ごっこにも似た戦いはそれから1分ほど続いた。アレン侯爵の執務室は机などの家具がほとんどひっくり返って、目も当てられない惨状となり、壁なども所々壊れてしまっていた。

 

 そこに到着したのは身長が3m程ある2体の蛮族だった。オーガナイトと、オークウォーリヤーだ。このレベルの蛮族であれば、正直なところ敵ではない。マートは不審に思いながら、身構えたのだった。

 

「待たせたな、クローディア」


 驚くべきことに、2体の蛮族は人間の言葉を話した。今まで、蛮族の言葉を話す人間というのは、前世が蛮族である場合に存在していた。だが、人間の言葉を話す蛮族など見たことがない。彼ら2体は、巨大な剣と巨大な斧という武器をそれぞれ持ち、クローディアを背後に庇って身構えた。

 

「ただのオーガナイトやオークウォーリヤーじゃねぇな。前世記憶持ちの蛮族ってやつか。確かに居ても不思議じゃねぇか。お前たちは魔龍同盟じゃねぇんだろ?どこのもんだ?」


 マートは両手に剣を持ち、いつでも3人のいるところに突撃できるように身構えた。

 

「どこの者?ファイヤージャイアント様の配下に決まってるだろ。なんだ、クローディアが強敵だっていうから二人で来たのに、ただの人間じゃないか。よしトマス、さっさと片づけようぜ」


「わかった、パーシー」


 オーガナイトのほうがトマス、オークウォーリヤーはパーシーというらしい。2体はそれぞれの武器を構えて、マートのいるところに走ってきた。

 

痛覚(ペイン)』   


 マートの呪文に二体の蛮族は揃って顔をしかめた。


「うっ、くそっ。やるな」


「なにをやってるのよ。(キャット)は魔法も結構やるのね。見誤ったわ」


魔法解除(ディスペルマジック)』 ----ペインを解除


 小手調べに使った呪術だったが、オーガナイトとオークウォーリヤーには有効だったらしい。だが、すかさずクローディアがそれを打ち消してくる。トマスが巨大な剣を、パーシーが巨大な斧をそれぞれ両手もって振るってくる。だが、肉体強化を使っているマートには、なんとか両手に持った二本の剣で捌くことができた。

 

炎の矢(ファイヤアロー)


「ギャゥ」

 

 マートの拳から炎の矢がトマス、パーシー、クローディアにそれぞれ飛ぶ。クローディアにはそれほど効いていないようだが、トマスとパーシーにはかなりのダメージを与えたようだ。

 

“なーんだ、大したことなさそう。期待して損した”


“何言ってるんだよ。結構厳しいっつーの”


 ニーナはそうマートに念話を送ってきたが、クローディアの方でも同じようなことを思ったらしい。


「これほど簡単に策が破れ、さらに、三体がかりでも、これほどとは。(キャット)、あなたは一体何者なの?」

 

「何者と言われても、俺は俺だ」


「トマス!パーシー!!さっさとやっつけて」

 

「ウガッ!!」

魂の叫び(ウォークライ)

 

 雄叫びを上げ、2体がマートに突撃してきた。息の合った動きだ。オークウォーリヤーの斧が地面すれすれを薙ぎ払い、飛び上がって避けようとする相手に斬撃を与えようとオーガナイトの剣がマートの首を狙う。

 

<地撃> 斧闘技 --- 下段薙ぎ払い

<破剣> 直剣闘技 --- 装甲無効技


<反剣> 直剣闘技 --- カウンター攻撃


 マートは右手の剣を地面に突き刺して斧を止めると、姿勢を低くしてコマのように回り、オークウォーリヤーの脛を左手の剣で切り裂いた。


「ブモーッ!!」

 

 オークウォーリヤーが悲鳴を上げた。本来であれば皮膚装甲の厚いオークウォーリヤーだが、カウンターが完全に決まったようだった。片方の脚が砕けてあらぬ方向に曲がっていた。

 

転移(テレポート)』 

 

 その時、クローディアの詠唱の声が響き、傷ついた二体の蛮族を残したまま、彼女の姿が消えたのだった。

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読んで頂いてありがとうございます。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 犬夜叉みたい。
[一言] ニーナを出して後から来た二体の相手は任せて、マートはクローディアに集中した方が良かった気がするのですがどうなんでしょう?
[良い点] トマスとパーシー、ゴードンやジェイムズもいそうですね。
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