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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第27章 捕虜奪還

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213 事後処理


 後始末を終えて翌日、再びジュディに送迎してもらったマートは魔術庁にライラ姫を訪れた。嬉しそうに彼女はマートを歓迎した。


「お疲れ様でした、マート様。城塞都市ヘイクスでの蛮族の大軍勢の発見、五千人の救出と、予想をはるかに超える功績です。いつもながら凄すぎますわ。それも、もう少しかかると思っておりましたが、軍勢の発見から救出完了までわずか三日とは、感嘆の言葉しかありません」


「まぁ、運が良かったとしか言いようがないな。ワーモンド侯爵家の連中がすぐ見つかったのでよかった。監視もすくなくて、みんなバラバラになってくれてたから助かった。だが、あの城塞都市に来ていたファイヤージャイアントの軍勢はちょっときついな」


「はい、報告を頂き、現在、魔龍王国の大攻勢を想定して、ラシュピー帝国にも連絡すると共に、第3騎士団に動員をかけております。また、碧都ライマン付近に居た避難民についても一部ワイズ聖王国での受け入れを進めようと動き始めている途中です。幸い、ライナス伯爵から、ハドリー王国の調査内容が届いており、そちらに動きは無いようで、まだ助かっています」


「両方同時に相手となるときついからな。ブロンソン州はハドリー王国としても占領して2年ほどだ。まだ安定してねぇのかもしれねえな」


「はい。その通りであることを期待しています。とはいえ、油断はできません。ところで、魔龍王国のメンバーをマート様のところで引き取られたと聞きました。どうされるおつもりですか?」


 もう、耳に入っているのか。ジュディから聞いたのか、それともメナードたちから聞いたのか。どちらから聞いたのかによって対応が変わってくるかもしれないな。マートはそう考え、言葉を選びながら答える。


「姫は、降伏した将軍が改心して別の国に仕え、活躍して重用されたという話は聞いたことあるか?」


「多くは存じ上げませんが、戦記物語などでよくある話ですね。それが何か?」


「アマンダを捕らえた。もちろん、少しほとぼりを冷ましてからになるが、彼女には、罪を償うという名目で蛮族討伐で活躍してもらおうと思う」


 ライラ姫は驚いた顔をしてマートを見つめた。

 

「彼女が?テシウスに次ぐナンバー2だったのではないのですか?」


 マートはアマンダから聞いた話をライラ姫に伝えた。


「なんと、魔龍王国は蛮族に乗っ取られたと仰るのですか」


「ああ、そうだ。魔龍王国はもう魔龍王国じゃなくなった。蛮族の国だ。以前の魔龍王国のメンバーのうち、今残っているのは蛮族の支配を受け入れた連中だけだ。とはいえ、一番面倒なブライアンとクローディアは残っているがな。そして、反主流派となったアマンダの一派は魔人としての汚名を返上するのに協力してくれるそうだ。ただ、すぐに自由に活動させるわけにもいかないので、しばらくは様子を見るのも兼ねて、こちらで施設に収容して反省の度合いを確認することにした」


「なるほど、そうだったのですね。メナードというワーモンド侯爵家に仕える男爵の方が捕虜を引き渡していただくことはできないかと申し出てきたのです」


「あいつには、こちらで尋問した後、奴隷として罪を償わせると言ったんだがな。どうせ、士気向上とかの理由をつけて処刑したいというのだろう」


「その通りです」


「捕まえた魔龍王国のメンバーは国としての捕虜じゃない。こっちは冒険者として請け負ったのだから、奴隷という戦利品をどうしようが自由だ。交渉したければ、ウィード子爵に直接行ってもらいたいとでも伝えておいてくれ」


「承りました」


「そういえば、サルバドルとか既に魔龍王国で何人か捕虜になっていたのがいただろう。あっちはどうなっている?」


「たしか、牢に繋がれたままのはずです」


「そっちも引き取らせてもらうわけにはいかないか?同じように外見に特徴のある者として、かれらの更生には手を貸したいんだ」


「わかりました。マート様が今回の報酬としてそのような事を求めていると宰相には伝えてよろしいですか?」


「報酬?何の報酬だ?」


「情報に対する報酬です。魔術庁は、情報を集める機関でもあるのですよ」


「ああ、そういうことか。全然かまわねぇよ」


「そういえば、ワーモンド侯爵夫人から頂いた金銀につきましては、別室に用意してありますので、お持ち帰りください。あとこちらを」


 そう言って、ライラ姫は手を叩いた。侍女に連れられて男が一人、およそ1メートルほどの長さの弓を持ってきた。いままで使っていた一般的な弓の2/3ほどの小ささだ。弓の両端は曲がる方向とは逆に大きく反っている。

 

「これが、もしや伝説に謳われる魔弓、ワイバーン殺し?」


「その通りです。手入れ方法についても特別で、普通の弓とは違うので、その男に聞いてほしいということでした」


 マートは弓を手に取った。軽く引いてみても弦はびくともしない。

 

「ワーモンド侯爵家に伝わっておりますが、代々だれも引けたものはいません。弦を張るのも6人がかりで行っております」


 マートは無言で肉体強化スキルをつかった。キリキリと弦を引く。十分に引くと、矢が急に現れた。

 

「おお、なんと。それほど簡単にこの弓が引けるとは」


「ああ、大丈夫みたいだな。さすが魔弓だ。ライラ姫、下の訓練場を借りれるか?是非試してみたい」


読んで頂いてありがとうございます。


弓の性能は次に撃つ機会があるまで楽しみにお待ちください。

ここで章を改めることにします。


申し訳ありませんが身内に不幸があり、数日更新ができません。一週間ほどになると思いますが、しばらくお待ちください。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 1行目から文字間違えてるしん 魔術庁いライラ姫のところだしん
[一言] いつも更新楽しみにして読んでいます。 お身内のご不幸との事、大変でしょうが無理はなさらずに。。
[良い点] おお!流石魔弓。短弓で取り回ししやすそうですし、矢が自動生成される無限弓ですね。威力はまだ分かりませんが、期待出来そう。 (普通の人には使えそうにないし、英雄も前世記憶持ちの可能性高そう)…
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