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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第27章 捕虜奪還

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212/411

211 告白


 信じるというのは、どういう事だ?俺が邪悪なる龍だとしても討伐しないって事か?

 

 マートはそう聞き返したくなった。そう尋ねたらジュディはどう答えるのだろう。邪悪なる龍の条件はまだ判っていない。自分がそういうレッテルを貼られないという保証がない以上、どこまでを明かしてよいのか。しかしある程度話をしないと、この後説明する作戦に支障がでるかもしれない。ジュディはかなり頭が良い。矛盾が出てくれば余計調べようとするだろう。


 マートは目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をした。そして、話してよい事を考えながら彼女に説明し始めた。


「そうか、お嬢は気づいちまったか。確かにお嬢の魔法の素質があれば解析は格段に進むかもしれねぇな。俺とここにいる連中だけで抱え込むには大きすぎる問題だとは前々から感じてた。ライラ姫がお嬢の前で前世記憶について喋ったときには俺もあっと思ったんだ。わかった。少し長くなるが話そう」


 マートは、ジュディに人間の中に蛮族や魔獣の記憶を前世記憶として保持して生まれてきているものが居ること。そして、それらの者のうち、蛮族や魔獣の特徴を外見に残しているものを魔人と呼ばれているという事を話した。前世記憶はスキルと密接に連携しており、その結果、前世記憶である蛮族や魔獣が持つ特徴、例えば飛行やカギ爪などが使えるのだと説明し、実際にそのスキルを使って見せた。

 

「ということは、外見の特徴を持っているものは、すごい力を秘めている可能性があるってこと?」


 驚くジュディにマートは頷いて見せた。

 

「そうだ。だが、大半の前世記憶持ちはそのことを知らねぇ。冒険者などになったごく一部だけがステータスカードを手に入れて初めてその力に気が付くんだ。それも使い方がわかりにくいのもあって、うまく使いこなすのは難しい」


 マートはモーゼルの話を説明した。彼女もステータスカードは持っていても、変形スキルのつかいかたが判らなかった一人だ。

 

「長い間、外見に特徴のあるものは、その力を主張出来ず、見た目で迫害を受けてた。力があることに気づいた連中も居たと思うんだが、少なくとも表には出てきてねぇ。余計迫害されると考えたのかもしれねぇな。だけどよ、今の時代になって、その力を使って勢力を強めた者たちが居る。それが魔龍同盟とハドリー王国だ」


 マートは魔龍同盟の蛮族語を使って行う食料の増産などのからくりの話をした。そして、ハドリー王国の第二王子が親衛隊として外見に特徴のある者たちを集めて使っているという話も説明した。

 

「そんなことが、戦争の裏で行われていたなんて。なぜ、侯爵たちが強制労働をと思っていたけど、そういうからくりがあったのね。ワイズ聖王国もその事を知らないのではないの?」


「いいや、これらについてはライラ姫と宰相は知ってる。だが、前世記憶を持つ者に対する偏見もあってな、公表は出来てねぇし、他の連中がどこまで知らされてるのかは俺も知らねぇ。そして王家には予言に関わって別の伝承もあるみてぇだ」


「予言?」


 ジュディはその言葉に強く反応した。自分こそは予言のいう騎士を助ける魔法使いであると考え、自らを律していた彼女だ。気にならない訳がない。さて、ここが肝心だ。

 

「ステータスカードには、実は大きな秘密がある。こっちはライラ姫にも報告はしていない事だ。お嬢はステータスカードは古代遺跡などで見つかる魔道具だというのは知っていたか?」


 ジュディは首を振った。

 

「実は俺もそれについては知らなかった。冒険者ギルドで聞いてみたよ。たまに見つかるんだとさ。買取価格は一枚30銀貨だそうだ。売り値は金貨一枚なのにな。実に便利なもんだ。自分の素養が判明して、どういうふうに成長すればいいのかがわかる。だが、こいつには裏があった。このステータスカードというのは、その判定した結果、すなわちそれぞれのステータスを、まるで長距離通信用の魔道具のように、ある一つの魔道装置に情報として送っていたんだ。つまりどこの誰がどういうステータスを持っているというのは、その魔道装置は知っていたのさ」


「え?という事は、ステータスカードの内容っていうのは誰かが知ってるって事?」


「いや、誰かではない。魔道装置だ。お嬢の事だから、もう想像がつくんじゃないか?それが予言に関わっているというのを俺が知ったのは最近だ。バーナードとローラが調べているのは、その魔道装置だよ。本来はそれを使って邪悪なる龍はもちろん、騎士やそれを支える魔法使い、戦士たちの名前が聖剣を通じて予言されるはずだったらしい。そのように古代のピール王国の魔法使いがその仕組みをつくったのさ。だが、その仕組みは魔力切れを起こして動かなかった。かろうじて邪悪なる龍の誕生が予言出来たに過ぎなかった。今、俺たちはその魔力切れを起こしていた魔道装置を回収して、中身を解析している。邪悪なる龍とされる条件は何か。騎士とは、魔法使いとはどういう条件で選ばれるのかってな」


「どうして、単純に魔道装置に魔力を補充して動かさなかったの?」


「もし、魔道装置がおかしくなってて、全然関係ない人間を邪悪なる龍だと聖剣に伝えたらどうする?邪悪な人間を騎士だと伝えたら?誤りがあったとしたら影響がでかすぎる。確認してからじゃなきゃ、怖すぎて俺はあの装置を動かす気にはならねぇ。王家には、おそらくこの仕組みを作ったピール王国の魔法使いから伝えられた、聖剣の予言に関して何か伝承があるようだが、それについては条件を確認してからライラ姫に伝えて教えてもらおうと思ってる」


「なるほどね。話はわかったわ。そうなんだ。聖剣の予言って神様からの神託か何かだと思ってたのに。大がかりな魔道装置だったなんて。ショックだわ。つまり、テストの結果を集計して剣の一位は誰、魔法の一位は誰とかを公表するみたいなことをしてるってことね」


「ああ、たぶんな。古代のピール王国の魔法使いは、この魔道装置を預けたエルフの長老に安全装置だと言ってたらしい。ステータスカードを作る魔道装置も別の所で見つけたぜ。その他にもいろんな資料があるんだが、正直調査には手をつけれてねぇ。手が足りなさ過ぎてエリオットを引き込むかどうかを悩んでたところだった」


「魔術庁に持ち帰るのは……ダメね」


「ああ、悪いがそれは絶対にやめてほしい。あそこはギルドの力が強すぎる。これ以上の話は後でいいか?先に救出作業について打ち合わせをしたい」


 マートは続いて、判明した向こうの状況を説明した。その上で、マートとしては出来るだけ農民たちに被害が出ないようにしたいが、向こうの貴族の考え方はこうなのだと説明した。

 

「配下の貴族としては、自分が仕える貴族の安全を最優先に考えるというのは仕方ないかもしれないわ」


 ジュディはそう言うが、マートは首を振った。

 

「判らない話じゃねぇが、俺には納得できねぇな。準備をしてからになるが、アマンダや魔龍王国の連中と交渉できないかと思ってる。ここに居るバーナード、ローラも以前は魔龍同盟のメンバーだった。それと同じような奴らが居ると思うんだ」


 マートの言葉にバーナードが頷いた。

 

「魔龍同盟に居た時、自分たちのしている事にずっと罪悪感を感じていました。ですが、当時、それをするしかなかったのです。その状況からマート様に救っていただき、このように暮らせています。同じような者は絶対に居ます。是非話をしてやってください。もし全員であってもこの島であれば暮らすことができるでしょう」


 その言葉を聞いてジュディはじっと考え込んでいる。その様子を見て、マートが口を開いた。


「お嬢。俺はもし魔龍同盟のメンバー、それがアマンダだとしても、罪を償って、この島に来たいというのであれば、受け入れたいと思う。それは農民たちに犠牲を出さない方法であるというのもあるし、彼らが魔龍同盟に入る前の状況というのも想像できるからだ。その状況を覆し、生きていくための方策として、魔龍同盟は間違ったやり方を彼らに示し、彼らはそれを選んだが、生き残るためにそういう手段しかなかったんだろう。もちろん、彼らは今までした事について、何かしらの方法で償う必要があるかもしれない。でも、俺としては彼らを最終的には受け入れてえんだ。そして、お嬢には彼らを無条件に許してやってくれとは言わねぇけどよ、俺の所に受け入れることには目をつぶってくれねぇか?」


 ジュディはマートの顔をじっと見た。そして、ゆっくりと頷いた。


(キャット)なら、たぶんそう言うと思ってた。心配しなくても大丈夫。私はあなたを邪悪なる龍を倒すための戦士だと思ってる。あはっ、もしかしたら騎士かもしれないわね」


読んで頂いてありがとうございます。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] この主人公は話さなくていい事まで話し過ぎやな
[一言] 〉もしかしたら騎士かもしれないわね 言っちゃった!(≧▽≦)
[一言] >あはっ、もしかしたら騎士かもしれないわね 大穴で魔法使いの可能性も!?
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