表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第25章 子爵領巡視

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

199/411

198 海の母

 ・・・・(ひとの)・・・(こよ)

 

 ・・・・(きこえて)・・・(いるとも)・・・(あなたは)・・・(なにものだ)

 

 岩礁の一つに立ってマートは答えた。波の間から、半ば透けた白い肌、青い髪の女性が姿を見せた。瞳は深い海を思わせる青黒い色だ。精霊なのであろうが、かなりの力を感じる。シェリーとアレクシアには姿は見えていないようだった。人魚の女王 ミーナはその姿が見えているようで、胸の所に手を置き、お辞儀をしている。人魚のほとんども同じように見えていない様子だったが、女王の様子を真似て、深くお辞儀をしていた。

 

 ・・・・(わたしは)・・・(うみのせ)・・・(い うみの)・・・(ははとも)・・・(よばれる)

 

 ・・・・(うみの)・・・(ははよ )・・・(こんにちわ)

 

 マートも彼女に丁寧にお辞儀をした。それを見て彼女はにっこりと微笑んだ。シェリーとアレクシアの二人もかなり酔ってはいたが、何かが起こっているといるのだと察して、マートに倣ってお辞儀をした。

 

 ・・・・(にんぎょの)・・・(じょうおうと)・・・(のはなしは)・・・(きいていた)・・・( あなたは)・・・(わたしの)・・・(こえをきく)・・・(ことができる)・・・( やくそく)・・・(してほしい)・・・( にんぎょ)・・・(たちとなか)・・・(よくする)

 

 約束?海の母という精霊は人魚を保護したいのだろうか。もちろん彼自身は人魚と戦うなどとは全く考えていないのだが、海の母は何か心配事があるというのだろうか。

 

 ・・・・(にんぎょたち)・・・(はよわい )・・・(まもるもの)・・・(ひつよう)・・・( ひゅどら)・・・(たおした)・・・(あなた )・・・(まもって)・・・(ほしい)

 

 ヒュドラを倒した俺に人魚たちを守ってほしいというのか。それはまるで、海の母が人魚たちを守るためにヒュドラを遣わしていたような言い方ではないか。いや、実際そうなのかもしれなかった。


 ・・・・(わかった)・・・(にんぎょ)・・・(まもる )・・・(やくそく)

 

 マートがそう言うと、海の母はにっこりと微笑んだ。

 

 ・・・・(ありがとう )・・・(わたしからの)・・・(おれいに)・・・(そなたに)・・・(しもべを)・・・(つかわそう)

 

 海の母はそう言うと、左手を振った。すると、海中から馬の上半身に、下半身は魚という生物が現れた。それも馬の前足には水掻きがついている。馬より二回りは大きいだろう。たしか、ヒッポカムポスと呼ばれる珍しい魔獣である。

 

 ・・・・(そのしもべ)・・・(はみずの)・・・(うえを)・・・(いなずまの)・・・(ように)・・・(はしり )・・・(うまと)・・・(メダルに)・・・(へんか)・・・(できる つ)・・・(かうがよい)

 

 この魔獣を乗り物として使えということか。マートはそのヒッポカムポスに手を伸ばした。ヒッポカムポスはおずおずとマートに近寄り、そしてその頭をマートの掌の下におしつけるようにしてくる。マートはゆっくりとヒッポカムポスを撫でた。

 

 ・・・・(なまえを)・・・(つけてや)・・・(るがよい)

 

 マートは頷き、そのヒッポカムポスの顔をじっと見、その額に、まるで稲妻のような白い印が有るのに気が付いた。

 

「お前の名は稲妻を意味するライトニングだ。良いか?」


 ヒッポカムポスはそう言われて、大きく嘶き、そして頷いた。

 

「まるで言葉が判っているみてぇだ」


 マートの言葉に、海の母は大きく頷いた。

 

 ・・・・(わがしもべ)・・・(は ひとぞく)・・・(のことばも)・・・( もちろん)・・・(りかいする )・・・(では、にんぎょ)・・・(たちのこと)・・・(は たのんだぞ)

 

 マートが頷くと、海の母は、再び海の中にその姿を消していった。

 

「皆、うやうやしくお辞儀をしていたが、何者が居たのだ?」


 シェリーとアレクシアが慌ててマートに駆け寄り尋ねた。


「海の母とよばれる精霊だ。普通の精霊よりもっと力を持った存在だと思う。人魚族と仲良くしてほしいと頼まれた」


 マートは彼女とのやり取りを二人に説明した。

 

「だから、その魔獣が現れたのか。海の中から急に現れた時にはどうしようかと思ったぞ」


「そうだろうな。ライトニングと名前を付けた。ライトニング、俺を乗せてみてくれ」


 マートがそう言うと、その魔獣はマート達の立つ岩に近づき、乗り移りやすいように身体を寄せた。マートが乗ったが、ライトニングはまだ岩に身体を寄せたままだ。

 

「二人に乗れと言ってるみたいだぜ?」


 マートがそう言うと、ライトニングは肯定するかのように嘶いた。シェリーとアレクシアは顔を見合わせたが、おぼつかない足取りでマートの前と後ろにそれぞれ身を寄せるようにして乗った。

 

「じゃぁ、人魚の女王 ミーナよ、俺は帰るよ。また改めて」


 ライトニングの上でマートは人魚たちに手を振った。


「くちに、みにみみきんらつらのなみら……(はい。人魚族の保護者よ。近いうちに是非また)」

 

 ライトニングが海を走る速度は非常に速く、あっという間にマートたちは元の浜辺に着いた。マートはライトニングに言って馬の姿に変ってもらう。ライトニングの姿は馬になっても、普通の馬より一回り大きかった。


「マート殿、これで普通に馬に乗れるな」


「ああ、この馬は普通じゃないけどな」

 

 人魚族たちとの宴会もあり、そろそろ日が傾きはじめていた。酒が入ってるマート達は一旦海辺の家に行って一晩を過ごしてから、改めてメイスンの町に向かうことにしたのだった。



読んで頂いてありがとうございます。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヒッポカムポス有能。陸水、携帯性に良し。 飲酒運転?ですな。まー飲酒乗馬(正確には馬ですらない)なら大丈夫か。 問題あっても領主様ですから、俺が法律だ!
[良い点] 水陸両用馬!便利ですねえ!
[良い点] 魔獣をゲットとは予想外!水陸両用で更にメダルにして持ち運べるとか便利だなぁ。魔獣だから戦闘力も有りそうだし(色は何色何でしょう?) [一言] まぁ、ヒュドラが人魚を殺すつもなら全滅してるで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ