196 ヒュドラ戦 決着
「よし、このまま、やっつけるぞ」
マートの声がそう響いた直後、ヒュドラの残った6本の首がそろって身構えた。
【毒の息】
<虚剣> 直剣闘技 --- 行動キャンセル技
シェリーの剣が毒の息を吐こうとしたヒュドラの額に飾りのついた真ん中の首に突き刺さった。ヒュドラのスキルの発動が途中で止まる。
「良いぞ、シェリー」
『炎の矢』
9本の炎の矢がマートの掌からヒュドラに向かって飛んだ。次々と残るヒュドラの首に突き刺さった。再びぎゃおおおおとヒュドラは唸り声を上げた。4本の首がだらりと力を失って垂れる。
『魔法の矢』
ほぼ同時に、アレクシアの持つマジックワンドからも、青白い魔法の矢が飛び出し、残る2本の首に突き刺ささり、一本の首が力を失う。しかし、ヒュドラの額に飾りのついた真ん中の首だけは動き続ける。
『生命力吸収』
マートには影響がなかったが、シェリー、アレクシアの胸のあたりから、光が現れ、ヒュドラの身体に吸い込まれた。ヒュドラの傷がみるみるふさがる。
二人は膝をついた。
「大丈夫か?」
「ああ、なんとか」「はい、いけます」
「せっかく回復されないように炎や魔法で攻撃してんのに、それでも魔法で回復かよ。きりがねぇな、一気にいくぞ。シェリー、アレクシア、武器を構えろ」
マートの言葉に、二人やよろめきながらも立ち上がり、シェリーは剣を、アレクシアは弓を構える。マートも右手には強欲の剣、左手には魔剣を持った。右手の手首を左手の文様に添える。
『炎属性付与』
シェリーの剣、アレクシアの弓、マートの剣が炎に包まれた。
<破剣> 直剣闘技 --- 装甲無効技
<破剣> 直剣闘技 --- 装甲無効技
<強射>射撃闘技 --- 高ダメージ射撃
マートの二刀流と、シェリーの剣、アレクシアの矢が、ほぼ同時にヒュドラの真ん中の首を凄まじい速度で切り裂き、貫いた。ヒュドラの首が宙を舞う。首を失ったヒュドラの胴体が、岩場にズズンと音を立てて崩れ落ちる。首を失った胴体から血が噴出した。海水と混じって周囲に黒い煙が立ち込めはじめた。
「よし、やったな!シェリー、アレクシア大丈夫か?」
ふたりは片手を上げたり、お辞儀をしたりしてマートの許に駆け寄った。
“毒の蒸気がきつい。僕を岩陰に顕現して。汚染が広がらないようにヒュドラの死体は処理しておく。シェリー、アレクシアを連れて浜辺に”
マートの心にニーナの念話が届く。
「シェリー、アレクシア、一旦海岸にもどるぞ」
マートは口を袖口で覆いながら、浜辺に向かって走り始めた。途中シェリーとアレクシアの肩を叩く。
「マート殿。わかった」「はい、マート様」
マートはニーナの要望通り、彼女をシェリーやアレクシアの見えぬところで顕現させると、三人そろって再び水上を元の砂浜に向かって走ったのだった。
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しばらくして、ヒュドラの死体のあった岩場から上がっていた黒い煙は収まった。砂浜に立って、マートとシェリー、アレクシアが荒い息を整えていると、ウェイヴィが人魚を連れてやってきた。
「くにからみらのらかちかにんら……(人の子たちよ。ありがとうございました)」
彼女が話すのも、エルフやドワーフたちと同じ言葉のようだ。ウェイヴィがその場で通訳してくれる。
「無事のようだな。よかった」
「つなかから、てちかちとにかちかにくち……(ずっと、私たちはあのヒュドラに脅かされて生きてきたのです。あなたたちは私たちの命の恩人です。礼をさせていただきたい)」
「ああ、あんな怪物がこんなところに居るとは思わなかった。もちろん良いぜ」
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