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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第15章 聖王家に忍び寄る影

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125 ライラ姫 弓を撃つ

2020.11.16 遠距離通信用 → 長距離通信用

 

「衛兵隊、何をしているの?しっかりしなさい」

 

耐熱(レジストファイヤ)

 

 変身の魔道具でマートはライラ姫に変身し、衛兵たちに援護の呪文を唱えた。

 

「ライラ姫様! ライラ姫様だ!」

 

 衛兵隊の連中が歓声を上げた。

 

「ライラ姫だと?なぜこんなところに王族が?」

 

 のっぽのトカゲがそう叫び、炎の矢を放つが、耐熱呪文のせいでたいしたダメージを与えられない。

 

「それも、精霊魔法で俺の炎を無効化した?精霊魔法が使える王族が居るというのか」

 

 のっぽのトカゲは驚愕の表情を浮かべている。衛兵隊は彼を取り囲むようにして武器を構えた。

 

「ちっ、仕方ない、ここは逃げるか」

 

 のっぽのトカゲはマートたちにしか見えない翼を出して、宙に浮かぼうとした。

 

<影縫> 弓闘技 --- 行動キャンセル技 

 

 ライラ姫(マート)は弓を取り出し、ドレス姿のまま、のっぽのトカゲの飛行スキルを弓闘技で封じた。のっぽのトカゲはバランスを崩し浮かび損ねる。飛行スキルなどは発動直前のタイミングにだけキャンセルすることができる。普通、見える翼であれば、普通の人間でもこれは狙えるのだが、前世記憶によるスキルのキャンセルは、おそらく前世記憶を持つ者しか狙うことは難しいだろう。キャンセルと言っても、飛行スキルなどであれば、10秒程度遅らせられるだけでしかないが、周りで武器を構えているこの状況なら有効だ。

 

「今よ、相手は1人。囲んで打ち取りなさい」

 

 衛兵隊の連中は目配せをしあい、ライラ姫(マート)の言葉に励まされて四方から同時に斬りかかる。

 

「!!!!」

 

 滅多突きされ、のっぽのトカゲは大きく口を開け、手を天に突き出すようにして倒れた。

 

「よし、やったぞ。ライラ姫様のおかげだ。衛兵隊万歳っ!ライラ姫万歳っ!」

 

 衛兵隊は大きく歓声を上げる。

 

 そうやって戦っている間に、ニーナは、裏口から入って、(スネーク)と、もう一人の緑の肌の男に声をかけ、魔龍同盟の連中の荷物も回収して、農家から離れた場所に移動していた。マートも、浮かれている衛兵たちの前からすっと姿を消して変身を解き、彼らに合流した。闇に紛れ、すばやくニーナの顕現も解く。

 

(キャット)、助かったぜ、あんなところで衛兵隊に捕まったりしたら、リンチされるに決まってたからな」

 

 (スネーク)は、興奮気味にそう言った。緑の肌の男も頷いている。マートは、いつもの顕現を解いたときのめまいに耐えながらもにっこりと笑った。

 

「とりあえず無事でよかった。家に来いよと言いたいところだが、下手したら俺の所にも衛兵隊はくるかもしれねぇ。しばらくどこかでほとぼりを冷ました方が良いだろうな。魔龍同盟って連中も、かなり悪名高い奴等なんだ。気をつけなよ」

 

「そうか……残念だが、お前さんの言う通りだ。あれ、美人がどこか行った?あれは誰だよ。お前の女か?」


「ふっ、どうだかな」

 

 (スネーク)はやっぱりライラ姫の顔を知らないようだ。衛兵などは別だが、一般の民衆レベルだと王族の顔など間近に見たことはない。マートは用意していた金の入った袋を、(スネーク)に握らせた。

 

「落ち着いたら、連絡をくれ。俺だと監視されてるかもしれねぇから、リリーの街の黒い鷲ってクランのリーダー、ショウさん宛が良いな」

 

「助かるぜ。わかった。命の恩人だ。(キャット)

 

 (スネーク)は、マートの掌を掴み、固く握手をした。

 

「そうだ、(スネーク)、良かったら、前世記憶が何か教えてくれないか?」

 

「ああ、お前さんなら良いぜ」

 

 (スネーク)は、マートの耳に口を寄せ、他の誰にも聞こえないように囁いた。

 

「俺は蛮族のリザードマンの生まれ変わりらしい。魔獣スキルって分類で、使えるのが、【水中呼吸】☆☆と【水中行動】☆☆ 【肉体強化】☆ そして、【蛮族語】☆☆の4つだ」


「そうか、わかった。(スネーク)。無事を祈ってる」

 

----- 

 

 2人が暗闇の中去っていくのを見送った後、マートは背負っていたマジックバッグから長距離通信用の魔道具を取り出した。

 

 続けざまにピコン、ピコンとメッセージの着信を示す音が鳴りはじめる。それを見ると、王城でリリパットが捕まったことや、衛兵隊がトカゲを捕まえに向かったことが何通にも渡り、事細かにメッセージとして着信していた。それを見るかぎり、ライラ姫もリリパットの捕獲に協力していた様だった。

 

 マートは、面倒だなと思いつつ、衛兵隊から来ていた斥候が、リリパットを捕まえた際の様子として、キャサリン姫のはしたない様子を笑い話にしていた事、おそらくリリパット自身は簡単に逃げ出せると思っているであろう事、そして、炎を操ったトカゲに衛兵隊が苦労していたので、魔道具を使ってライラ姫の姿になり、それを手助けしたことを書き送信した。

 

 送信が終わったのを見届けると、返信を待つことなくマートは魔道具をふたたびマジックバッグに入れる。

 

「あとは宰相が頑張るだろ。しばらく俺は王都はこりごりだ」

 

 

読んで頂いてありがとうございます。


新展開かと思っていたのですが、書いてみるとそうはなりませんでした。マートは王都が嫌いみたいです。

折角家も買いましたので、一度リリーの街に戻り、新章となります。


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[良い点] 衛兵が糞すぎたので懲罰が必要です [気になる点] 衛兵が最後の守りなのに糞すぎたので懲罰が必要です
[良い点] ランキングで見かけて最新話まで一気読みしてしまう程面白いです。 世界観は指輪物語の様な古風ファンタジーの様で、戦いや冒険譚はドラゴンクエストみたいなシンプルな技法や魔法を巧みに操る。この2…
[気になる点] 緑肌の男はどうなったんでしょう
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