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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第14章 新天地?

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112 自宅購入

2020.9.26 ちょっとわかりにくい(おかしい?)ところを、訂正しました。

「ああ、他の職人のところに引き取ってもらったらしいわ」

  →

「ああ、何人か居たらしいけど、他の職人のところに引き取ってもらったらしいわ」

 

 調査遠征のサポートも終え、一旦おちついたマートは、リリーの街に戻り、久しぶりに落ち着いた生活を送っていた。

 

 そして今日は、前から探していた売り家が見つかったというので、紹介してくれたクランリーダー、ショウの奥さんのレティシアと一緒に売り家を訪れていた。

 

「丁度、鍛冶屋で廃業したところがあってね。職人通りだから、私達のクランの詰め所からそれほど遠いわけじゃないし、どうかなって思ったのよ」

 

「へぇ、廃業って?」

 

「親父さんがそろそろ年でね。息子さんが田舎の村で農業をやってるから、そっちに引っ越すんだって」

 

「弟子は居なかったのか?」

 

「ああ、何人か居たらしいけど、他の職人のところに引き取ってもらったらしいわ」

 

 マートが見たところ、その家は築30年程度だろうか。ほどよく使い込まれ、手入れもされて状態は悪くなかった。1階は小さな店舗と、そこそこの大きさの鍛冶場、小さな台所、大きな倉庫、広い中庭と井戸、畜舎となっていた。2階は、居間や寝室に使えそうな部屋が6つ、3階にはおそらく倉庫や徒弟、使用人の寝室に使っていたのであろう小さな部屋や屋根裏部屋で14に区切られていた。

 

「1人で住むには、広いな」

 

 思わずマートはそう呟いた。

 

「でも、何か作業場は欲しいんでしょ?職人の家となると、弟子用の部屋とか倉庫とかってなるから、どうしてもこれぐらいの広さにはなっちゃうのよね」

 

 レティシアはそう答えた。マートは今後、武器の本格的な手入れや、市販の道具では彼には使いにくいものもあって、職人的な事に手を出したいと思っていたので、彼女にはそういう希望を伝えていたのだった。

 

「エバさんとかアンジェちゃんを引きとればいいじゃないの?たしか、2人が働いている家を処分するって話があるらしいわよ。あと、部屋が余るのなら、うちのクランの宿屋に泊まってる連中で稼ぎが苦しいのが居るから、そういうのに貸してやってくれたら嬉しいんだけどね」

 

「え、処分?たしか、アレクシアもあの家の部屋を10年貸してもらえるって話になってたんじゃなかったか?」

 

 マートは首をかしげた。ジュディは2人を簡単に雇ってくれていたし、アレクシアの件も、ランス卿から言い出したことだったので、しばらく大丈夫と思い込んでいたのだ。

 

「ジュディお嬢様の杖が完成する目処が立ったので、あの家は必要なくなったということらしいわ。もちろん、エバさんの新しい仕事は伯爵家が探してくれてる途中らしいの。あと、アレクシアさんの賃貸については、代わりに金を出すってことで調整中だってきいたけど?」

 

「そうなんだ。それなら、いいか。あいつ、また出かけてて、全然話が出来てないんだよな」

 

「たしか、2、3日したら帰ってくる予定だったと思うから、直接聞いてみて…。うちのクランで斥候となると、クインシー、あなた、アレクシアさんの3人がメインで、他はまだまだ修行中だからさ、どうしてもアレクシアさんは忙しいことになっちゃうのよね。あと、エバさんにも連絡をとってあげなさいね」

 

「俺も最近、クランの仕事は手伝えてないものな。わかった、エバにも連絡するよ」

 

「他の仕事してるんだから、クランの仕事は仕方ないけどね。じゃぁ、この家で問題ない?」

 

「値段は?」

 

「土地の権利も含めて211金貨」

 

「レティシアさんの意見としてはどう?」

 

「すごく安いと思うわ。あなたから話を聞いてなかったら、自分で買いたいと思ったぐらい。少し難を言えば、台所が小さいってところだけど、建物としてはすごくしっかりしてるし、掘出し物だと思うわ」

 

「おっけ、じゃぁ、話を進めてくれ。金を預けようか?」

 

「隣の家の人が代理人になっててね。さっき、鍵を借りたところよ。金を払ったら書類と交換で、あとは役所に届けたら終わり。もう心が決まったのなら、すぐに済ませちゃう?」

 

「ああ、そうしよう」

 

----- 

 

 レティシアに礼をいい、手続きも済ませたマートは、1人になって、新しい家に帰ってきた。鍵は交換したほうが良いのだろうが、今日はもう夕刻なので、それは明日にすることにした。

 

 魔法のドアノブを使い、海辺の家に行けば、ベッドもあるのだが、今日はなんとなく新しい家で夜を過ごそうかと考え、きれいにした中庭で、木箱の上に買ってきたワインとカップ、自分で作った燻製肉を並べて晩御飯にする。

 

 自分の力で手に入れた、自分の家だと思うと、いつの間にかニヤニヤとしてしまった。

 

 月が昇ってきていた。その月を見ながら、マートはのんびりと夜を過ごしたのだった。

 

-----  

 

 翌日になって、マートは自分の部屋にしようと考えた南向きの部屋で、魔法のドアノブのメモリを1番にあわせて、奥の壁に差し込んだ。

 

 自宅は出来、家具は揃えたが、流石に見つけた金貨や銀貨のつまった木箱を、この部屋に置いておくのは無用心すぎた。かといって、海辺の家においておくのも(今はそうなっているのだが)考えもので、以前ニーナが使い込んだこともあり、別の場所に置きたいと考えたのだ。

 

 以前、魔法の剣は本当なら10個の場所が魔法のドアノブには登録できるようだが、海辺の家以外は、全部岩や土の壁だといっていた。マートは、マジックバッグを使えば、岩や土を収納して土木工事的な事ができるのじゃないかと考えたのだった。

 

 そのため、テントや馬の飼料、樽や飼い葉桶といったかさばるものを倉庫に突っ込んでマジックバッグに空きを作った上で、扉の先の岩や土の壁の様子を確認したのだった。

 

 マートは、その扉の先の土や岩をじっと見た。

 

“なぁ、魔剣、この岩って、加工されてるような形のものも混ざってるよな?”

 

“たしかに、そうみえるのう”

 

“ということは、これは、廃墟かなにかの崩れた一部ってことじゃないのか”

 

“うむ、たしかにその可能性はある”

 

 マートはじっと耳を澄ませた。遠くで何かの足音が聞こえる。

 

“近くには何も居なさそうだが……。試してみるか”

 

 慎重にマートは扉の先に詰った土や岩のうち、まずは岩に触れて、マジックバッグに収納していく。いくつか隙間が出来るのを待って、土をすくい上げて収納していく。急に土等を無くして、上に土砂が大量に蓄積していたら、崩れてきて潰されてしまうので、慎重に少しずつだ。

 

 1時間ほど作業をして、ようやく上半身が入れそうなぐらいの穴が空いた。

 

 頭を突っ込んで、中を確かめる。鋭敏感覚のスキルのおかげで、彼は少しぐらいの壁なら透視することもできるし、体温がある生物が居れば、少々壁が厚くてもその存在も感知することは可能だった。

 

 そして、ようやく彼には、そこは地下にある通路の一部であり、天井が崩れて通れなくなっている場所なのだということがわかったのだった。

 


読んで頂いてありがとうございます。


この章は、一つの章にするには短いけれど…という感じの閑話?ばかりを集めている感じになる予定です。マートたちの日常をお楽しみください。


評価ポイント、感想などいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そろそろパン屋さんの話が出てきても…遅すぎかな。
[気になる点] あの家の部屋どころかその家そのもの10年報酬で借りてたんじゃあマートて
[良い点] 扉の先の新しい場所にわくわくしますね。
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