108 討伐行 2
※剣技という表記を闘技という表記に変更しています。これは、感想で御指摘があったのですが、“弓の剣技”というのがなにか矛盾しているようで、闘技のほうがよりしっくり来ると考えたためです。ご了解ください。
2020.9.20 射撃闘技 → 弓闘技に修正しました。
2020.9.21 マジックバック → マジックバッグ
ゆるやかな丘がいくつもあるような地形、道なき道に、4騎の騎馬と2台の馬車が止まっていた。
「この丘を越えたところに集落があります。おそらくオーガ種が11体とゴブリン種が10体。見張り台のようなものはありません」
マートはするすると木から下りてくると、下で待っていた連中にそう告げた。
「それぐらいなら、3騎で蹴散らせるだろうが、逃げ出すのが居たらマートとアニスで潰してくれるか? 他の集落に警告されると面倒だ」
少し考えた後、ビルが、マートたちにそう言った。ビル、ハンニバル、マイクの3人は騎士団の所属は異なるが、王国の武闘大会などで何度も戦ったりして、お互いの腕も認め、尊敬しあう間柄で、それぞれの得意、不得意もよくわかっていた。こういうときに、考えて主導権をとるのはビルの役割だ。
「じゃぁ、俺たちは向こう側に回ったほうが良いか?」
マートは頷いて、自分のマジックバッグから弓を取り出すと、そう尋ねた。
「いや、僕たち3人が突っ込んでその勢いで一旦通り過ぎ、向こう側に回るから、マートとアニスの二人はこっち側でいい」
「わかった」
「突撃はいつも通りマイクを先頭だな、僕とハンニバルが続くという感じでいいかな?」
「ああ、それが良いだろう」
ハンニバルはそう応えた。マイクも頷いている。
「もし、上位種が居たら、基本的には3人のうち一番近い奴が相手をしよう。その時、他のメンバーは臨機応変に。伯爵、それでよろしいですか?」
「ああ、好きにやって来い」
ビルの問いにエミリア伯爵は笑みを浮かべてそう言った。
「よし、じゃぁ、行くか」
ビル、ハンニバル、マイクの3人の騎士は馬に跨った。
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「うりゃーーーー 突撃っ」
マイクが先頭、左右にビルとハンニバルという三角形の隊形で3騎はオーガの集落にむけて一気に駆け下りていく。練習試合のときもそうだったが、突撃はマイクが一番得意らしい。彼らの馬に乗った突撃は、マートたちとした練習試合のときよりもさらに迫力があった。
『防護』
神官のマシューが彼らに防護呪文を唱える。
その後ろをマートは弓を構え、アニスは剣を構えて身をかがめながら移動して行った。
わらわらと集落のテントのような建物からオーガやゴブリンたちが姿を見せる。武器を持っているものも居れば持っていないものも居た。中央の広場のようなところに居たオーガの身長3mを超える巨体が、完全武装の3騎の突撃を受けて次々と吹っ飛ばされていく。
そのまま、オーガやゴブリンたちを突っ切り、集落の反対側まで抜けた3騎は、そこで振り返り、今度は散開してオーガたちと戦い始めた。マートは立ち上がり、逃げ出そうとしているゴブリンを弓で射ていく。
一体のすこし身なりのいいゴブリンが、他のゴブリンを盾にしながら、身振り手振りをした後なにやら叫んだ。急にマイクの体の動きがすこしぎこちなくなる。今まで盾で防げていた目の前のオーガの棍棒の一撃が彼の肩を直撃した。よろめいたが何とか踏みとどまっている。
「ゴブリンメイジだ、何か呪文を使ったよ。猫、あいつを倒して」
アニスがそいつを指差す。マートはそちらの方向を見ると同時に矢をつがえた。
<強射> 弓闘技 --- 射撃大ダメージ
マートの矢がゴブリンメイジの口蓋に突き刺さった。相手は衝撃で仰向けに倒れる。動きが戻ったマイクが大きく肩で息をしながらも、周りのオーガを蹴飛ばす。
『治癒』
アニスは治療呪文を唱え、マイクの肩のあたりがぼわっと金色のひかりに包まれる。
マイクは、ちらと二人を見ながら、オーガに剣を振るった。肩口からざっくりと大きく傷を受け、そのオーガは倒れた。
「ありがとよ。助かった」
その後も騎士3人とマート、アニスたちは連携を調整しつつ、オーガやゴブリンを無事殲滅したのだった。
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