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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第13章 討伐訓練

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107 討伐行 1

2020.9.21 マジックバック → マジックバッグ


2020.9.26 マートの喋りでおかしいところを少し訂正しました。

 

 エミリア伯爵が指揮する蛮族の討伐隊はアレクサンダー伯爵領南西部の街であるウィードに到達した。ここから先は、開拓村がいくつか点在する他は、蛮族であるゴブリンやオーク、オーガなどが多数暮らしている荒野となる。

 

 ここに至る途中も、何度か蛮族には遭遇したが、いずれもマートが事前に察知していたので、奇襲を受けることもなく、各騎士団から選抜された3人の騎士はその実力を遺憾なく発揮して容易にそれらを撃破していた。

 

「ここまでは順調だな」

 

 エミリア伯爵は風景を眺めながら、そう呟いた。

 

 大きな街はしばらくないというので、隊は1時間程休憩してから出発することになった。マートとアニス、そしてメーブの馬車の御者の3人は買い出しに出かけたようで、彼女と一緒に街のレストランに居るのは、補佐官のメーブ、神官のマシュー、騎士のビル、ハンニバル、マイクの5人だ。

 

「そうですね。マートさんとアニスさんの索敵能力は群を抜いています。ライナス卿が報告書でべた褒めだったのも判りますね。天気次第ですが、彼らの話では平地で3キロぐらい離れていても見つけることができるようです。おそらく彼が部隊に居れば、奇襲を受ける心配はなさそうですね」

 

 メーブが伯爵のつぶやきにそう答えた。

 

「そうか。資材の運用面ではどうだ?」

 

「100金貨と聞いて、そんな少額で本当に大丈夫かと心配していましたが、今のところ問題なさそうです。こちらについてはマジックバッグの容量が大きいのと、精霊魔法で水が使い放題というのが大きいですね。花都ジョンソンをでてから1週間ですが、何一つ不自由だったことはありません。洗濯と身体を拭うのにお湯までつけてくれて感激しました」

 

「マジックバッグは部隊ではほとんど使ってこなかったが、入手は可能なものなのか?」

 

「大きな商人が持っているというのを聞いたことはあります。値段についてはよくわかりませんが、交易に使えば莫大な儲けをもたらすものでしょうから、かなり高価なものと予想されます」

 

「あと、精霊魔法使いというのは、どれぐらいいるのだ?」

 

「おとぎ話などで聞いたことがありましたが、実際に見たのはマートさんが初めてです。ただ、水の出る魔道具というのは聞いたことがあり、それほど高いという訳ではないと思われます」

 

「ビル卿、ハンニバル卿、マイク卿、ここまでで何か気になったことはあるか?」

 

 エミリア伯爵が3人に尋ねた。

 

「そうだな、オーガやオークは戦ってみたが全然たいしたことが無かった。早く上位種と闘ってみたいぐらいの感想しかないな。あと僕が気になるのは、マートとアニスは付き合っているのかぐらいだな」

 

「さぁ、知らんな。アニスが気になるのなら、自分で聞いてみたらどうだ?」

 

 ビルが冗談めかしてそういうと、エミリア伯爵が少し笑いながら答えた。

 

 そういう話をしていると、マートが1人先に帰ってきた。

 

「おかえり、マート。準備は終わったかね」

 

「ああ、そちらはあと少し待って欲しい。その前に一応軽くこの周りを調べてきた。その説明をしたい」

 

「ああ、頼む。このあたりは初めてだからな」

 

 エミリア伯爵に促され、マートは話し始めた。

 

「蛮族の集落で一番大きいのは15キロほど南西に離れた谷のところだな。オーガだ。100体ぐらい居そうだ。ナイトクラスの上位種が居る可能性が高いだろう。一番近いとなると、南に5キロほどの川のほとりでゴブリンが15~20体といったところだろう。こっちは上位種が居ない可能性が高いな。もし居たとしても、ホブゴブリン程度だろ。魔獣については見当たらなかったが、連中は偽装が得意だからな、もっと近づかないとわからない」

 

 話の途中から、メーブがきょとんとした顔になった。

 

「えっと……この周りってどれぐらいの範囲を?」

 

「今は天気がいいからな。まぁ30キロというところだろう。ん?どうした?」

 

「…どうやって?」

 

「ああ、それは教えられないな」

 

 マートの言葉にメーブは首を振り、伯爵のほうをじっと見た。

 

「どうしましょうか?」

 

「その規模の集落を見つけるのに1週間はかかると思っていたのだが、こうもあっさりとはな。確かめるしかないだろう?100体規模の大きい集落付近の地形はわかるか?」

 

「そうですね、ちょっと場所を変えてもよろしいですか?山がこうあって……」

 

 レストランを出て、荷物の置いてあるあたりまで行くと、マートはまるで上から見たかのように地面に棒で地形を描きながら説明した。

 

「そこからいちばん近い小さい集落は?」

 

「ここと、ここに10人ほどの集落が……」

 

 マートが地面に描いた地図に丸を描き足す

 

「ふふふ、まるで演習だな。ビル、ハンニバル、マイク、よりどりみどりだぞ。どうする?」

 

「戦力は我々3人だけですか?」

 

「できれば3人だが、場合によっては、私とマート、アニスは計算に入れてよい。街で他の冒険者を雇うなどはナシだ。メーブとマシューの2人は後衛で極力戦闘には参加しない」

 

「了解です。オーガたちの蛮族にしても、マートやアニスの戦い方もよくわからない。小手調べに小さい集落で試してみよう。オーガの大集落の方向で、いくつか案内をしてくれるか?」

 

「わかりました。ああ、アニスたちも帰ってきた。そろそろ出発しましょうか」

  

読んで頂いてありがとうございます。出発しましたが、マート本人は問題ない範囲でしか言ってないつもりですが、それでもいろいろ規格外なようです。


評価ポイント、感想などいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

(日別 部門別 14位!?...信じられません。もう舞い上がってしまいます。つい4,5日前まではランキング外だったんですよ?本当にありがとうございます。ツイッターアカウント試しに作ってみました。でも、どこまで活用できるのか不安です...。)

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[良い点] >あと僕が気になるのは、マートとアニスは付き合っているのかぐらいだな ミーハーメイドか ☆\(゜ロ゜ ) まあ冗談みたいだけど しっかしマートは周りに女性が沢山いるのに、 浮いた話が全く…
[良い点] 久しぶりの大当たり作品で一気読みしてしまいました 主人公の性格が変に悪ぶっていたり、斜に構えていないので、人助けをするという流れになっても違和感がなくスムーズに話が流れるのでストレスがな…
[気になる点] マートやアニスの戦い方は対人だが見たのでは?
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