妖精の連絡
話がまとまった頃、王城とビルケム侯爵邸から返事が来た。
オーレンの知らせはエルフらしく妖精に協力してもらうものであるため、人の目には見えないので秘密裏の知らせに向いている。
「あ、明日にでも会ってくれるって~。え~。向こうがお忍びで出てくるって、別にそんなことしなくていいのに。着替えは用意してくれるみたいだけど。」
「その着替え、ちゃんと人数分あるんだろうね?」
「うん。それは大丈夫。ちゃんと4人分だって。あ。侯爵邸に行ってた子も帰ってきた。」
虚空を見ながらひとりで話を進めるオーレン。
ジェーンの目には窓の隙間からキラキラ光るものが入って来るのが映っていたが、ビルケム侯爵とアルタイトには見えていないらしく、視線をさ迷わせている。
「ちゃんと侯爵の到着と無事は知らせたよ。執事さんにだけね。事情もわかってくれて、何も知らないフリしてくれるって。どうも、数日前から屋敷を伺う怪しいやつがいたみたいだよ。何もしてこないから、知らないフリをしてるみたいだけど。」
ビルケム侯爵の顔が強張る。
相手の動きの方が早いようだ。
「では、今の所何もない、ということですね?」
「そうみたい。いつも通りの日常を送ってるって。」
「懸命だね。下手に追い払おうと手を出してたら、無事じゃすまなかったろう。」
「まあ、普通の偵察じゃないだろうしねえ。あ、ジェーンには片がついたら、是非寄って欲しいってさ。」
「あたしかい?」
「領地でのことはもう知らせが行ってるみたいだよ。当家の旦那様と坊ちゃまがお世話になったから、おもてなししたいってさ。」
どうやら側近のエルミンが早馬で知らせていたらしい。
侯爵と同じく悪たれだったころを知ってるだけに、時の流れと弟子の成長を感じる。
「そうさね。まあ、片がついたら、一度お邪魔するよ。」
「是非いらしてください!」
こうして、王や宰相との密会に、侯爵邸の訪問もジェーンの予定に加わった。
お貴族様のテリトリーなど苦手以外の何物でもないジェーンだが、事情が事情だけに今回はおれた。
さらには、今後苦労をかけられるであろう侯爵子息のしつけのことを考えると、少しくらいは良い目を見てもいいだろうと思っている。
ここ最近の旅暮らしは老体には結構こたえているのだ。
ふかふかのベッドに美味しい食事のご褒美があるなら、これからの仕事にやる気も出るというものだった。




